小中学校から長男の特質として指摘されていたのは
①クラスメイトと殆ど喋らず(緘黙)、常にひとりでいる
②大切なことを失念することが多く、関心があること以外は集中力がない
ということでした。
それこそが長男の個性である、と考えていた私は指摘されていたことを何も気にすることはありませんでした。
しかし、長男が高校に進学するようになると、その考えは間違いであることを気づかされることになります。
そう、不登校になったのです。
頑張って勉強して何とか、中の上レベルの公立高校に合格した長男。
玉石混交の中学とは違い、ある程度生徒のレベルも揃っていたので『いじめ』のような心配はなくなったという安堵感がありました。
『いじめ』というのは家庭環境等が複雑で学校の勉強に全くついていけなくなった生徒が鬱憤晴らしに大人しそうな子を生贄にすることで起きると考えていたからです。
高校一年の秋ごろ、突如長男が「学校に行きたくない」と言いはじめました。
何があったのか、丁寧にゆっくり長男に尋ねるとボソっとクラスメイトにいじめられているということを告白しました。
「悪いようにはしないから、安心しなさい。」
そう言って長男に約束すると、私は長男の高校の校長・教頭に連絡。
長男のいじめの実態調査と対策を学校に求めました。
高校サイドで丁寧に調査してもらった結果、長男のいじめの実態がわかりました。
いじめのきっかけはグループ学習でした。
現代国語の時間にクラスを6~7人のグループに分けて、グループ内で各人が役割分担を決めてグループ単位で発表するという授業を長期間実施していました。
長男もグループ内で何かしらの役割分担を担い、グループ内で討議しながら結果をまとめなければならないのですが、緘黙傾向がある長男は他人とのコミュニケーションが円滑にできません。
当然、長男だけがグループ内で浮いた存在となり、そこへグループ発表成果を教師から求められたところ
「コイツしゃべらないし、ちゃんと調べないし、先生の指示も聞いていない。」
「ふざけるにも程がある! 何なんだ、コイツは?」
というような雰囲気になり、それ以降、数人が執拗に長男に嫌味や皮肉を口にするようになったということでした。
暴力等のいじめは全くなかったものの、長男がしゃべらないことを揶揄する言葉によるいじめと判明したのです。
教頭、担任により長男に対して暴言を吐き続けた生徒への指導、グループ学習の即時停止、席替え等の措置などでいじめは解消しました。
実際、長男に学校での様子を尋ねると、以前のように暴言を吐かれることはなくなったし、暴言を吐き続けていた生徒からは
「俺も少し言い過ぎた。悪かった。」
という謝罪の言葉もあったという話を聞き安堵しました。
しかし、長男のいじめ問題が解決して2カ月ほどしたある日、またも長男は
「学校に行きたくない」
と言いはじめました。
いじめ問題が再発したのかと懸念する中、長男が私に語ったのは予想外のものでした
「いつも誰かがジッと自分を睨みつけている気がする。」
「時折、誰かが自分に悪口雑言を言っている声が聞こえる。」
学校(高校)に行くと、幻聴と幻覚のようなものが現れて平常心でいられなくなるので登校したくないという訴えでした。
統合失調症のはじまりかも知れないと感じた私は急ぎ長男を精神科に連れて行き、そこでの諸検査で初めて発達障害かも知れないと言われることになったのです。