誰でも一度は聞いたことがある動脈硬化。

動脈硬化はその名のとおり、動脈が分厚くなってカチカチに硬くなる病変です。

 

誰でも年を重ねると血管の老化により動脈が硬くなる傾向にありますが、喫煙や高血圧、糖尿病など血管を痛める要素があると猛スピードで動脈硬化が進行すると言われています。

 

動脈硬化が進むと必ず起きるのが血管の石灰化。

 

特に高血圧で長期間さらされた血管は屋外に放置されていた水道ホースのようにガチガチになって、血圧が上がると脳や大動脈でバシッと裂けて噴き出すか、深刻な出血を引き起こします。

 

私の亡くなった母は高血圧症が持病でした。

上の血圧が常に150前後ありましたが、糖尿病と同じく痛くもかゆくもないので血圧降下剤を46歳になるまで飲まないでいました。

 

母が83歳になった時、石灰化の勢いは心臓の大動脈弁にも到達して大動脈弁が完全に開かない大動脈弁狭窄症になりました。

 

「もう年だから、それで命を落としても仕方ない。」

 

そんな呑気なことを言っていましたが、想像を絶する苦痛が襲い掛かってきました。

心臓のポンプ機能が落ちることにより生じる肺水腫です。

※肺水腫=肺に水が溜まる病気

 

「苦しい。息が出来ない! 苦しい!」

 

陸上にいるのに、まるで溺れているかのような苦しさ、呼吸困難。

息を吸っても吸っても酸欠のような状態は生き地獄でしかありません。

 

私は気管支喘息の持病があるので呼吸困難の辛さ、パニックはよくわかるのですが、母の肺水腫の苦しみは目を覆うほどでした。

 

救急搬送され、利尿剤なとを点滴して肺に溜まった水を排出すると改善するのですが、大動脈弁狭窄症で心臓のポンプ機能が落ちているためすぐに肺水腫が再発します。

 

「溺れ死ぬ体験をするのは嫌だ。」

 

と80代の高齢者でも施術可能なTAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)をすることになったものの、ここでも立ちはだかったのは血管の石灰化でした。

 

動脈がガチガチに硬くなっているため大腿部から心臓までカテーテルを通せない(どこかで引っかかった時動脈が破ける恐れあり) というのです。

 

幸い、母はTAVIの世界的権威の医師によって何とかギリギリ成功させることができましたが、多くの医師は

 

「こんなに血管の石灰化に進んだら、お手上げだよ。」

 

と腰が引けていました。

 

ちなみに血管の石灰化はМRIなどで簡単にわかるようです。

 

МRI検査を受けた際、糖尿病の私は年齢の割には血管の石灰化が進んでいると診断されました。

 

高血圧、糖尿病、高脂血症そして喫煙と飲酒歴が長い方は一度、血管の石灰化は調べておくと良いかも知れません。