2021年12月、再び会社の健康診断で心雑音があると指摘された。
今度は私と同世代のベテラン医師からハッキリとした口調で言われた。
「心臓の雑音がハッキリ聞こえます。血液が逆流しているような音です。」
「・・・・・!」
驚きのあまり何も言葉を発することができない私。
「弁膜症かな? 私は専門ではないため断言できません。至急専門医に診てもらってください。」
「心電図には異状ないですし、心臓も肥大していないので深刻ではありません。」
テキパキとコメントする医師に私はただ黙って「ハイ」というのが精一杯だった。
「何で?」「去年、若僧の医者が言ってたことは間違えじゃなかったのか!?」
晴天の霹靂とはまさにこのことだと思った。
翌日、家の近所にある循環器内科に診察してもらった。
心電図、レントゲン、心エコー検査をして出た診断は"僧帽弁閉鎖不全症"なる病名。
「ソーボー弁?」「閉鎖不全?」聞きなれない言葉に戸惑う私。
循環器の医師は丁寧に病気の内容を説明してくれた。
僧帽弁とは心臓の左心房と左心室の間にある弁(バルブ)で、血液が左心房から左心室へ移動する際に弁(バルブ)が閉じるのだが、私の心臓はその弁(バルブ)がキチンと閉まらない状態にある。
このため100%血液を心臓から送り出すことができず、長期化すると心不全を起こす重篤な病という説明だった。
私の僧帽弁なる弁(バルブ)の開閉に欠かせない腱がブチ切れていて、このため弁の閉まりが悪いのだという。
だが健康診断の医師は深刻でないと言っていたので、そのうち薬か何かで気長に治療すればよいのだとタカを括っていた私に衝撃のコメントが下された。
「この病気は薬では治せません。手術をしてください。」
「エコーで見る限り、結構な勢いで多くの血液が逆流しています。なるべく早く手術することをオススメします。」
「しゅ、手術!?」「なるべく早く手術って・・・」「えっ! 心臓の手術だよね? 人間の急所にメス入れるの?」
「エッ、エッ、え?・・・・・何、何?」
大混乱して狼狽する私を医師は見て、諭すように言った。
「驚かれるのも無理はありません。いきなり、心臓の手術といわれてもね。」
「でも、この病は手術以外でしか治りません。気持ちに整理がついたら、心臓外科で手術してください。」
「紹介状を書きます。」
私は頭の中が真っ白で大混乱でした。