職場復帰された古参の学童指導員のSさんに命じられたのはASD系の発達障害で特別支援級に通うAくんの見守りでした。
Aくん特有のクセに古参指導員のSさん、ちょっと苦戦中。
「アタシさぁ、特性のある子の見守りって得意じゃないんだよね。」
と威勢の良い江戸っ子気質はどこへやら。
Aくんは自分の興味のある話題を無視するSさんにちょっと反抗。イヤイヤをして困らせます。
おやつの時間、特性のあるAくんの隣に指導員が張り付きます。
何種類かの乾きもの系の駄菓子をトレイに乗せて食べるだけですが、Aくん
「いらない! 食べない!」
と言い張ります。
Sさん、通りがかった私をつかまえて
「アタシちょっとお腹の具合がよくないの。ちょっとだけAくん見てもらえる?」
「施設長、いいですよね?」
と突然、ちょっとの代行を要請。
あっという間にいなくなりました。
やむなくAくんの隣に座って、おやつを勧める私。
私が来るとAくん早速、大好きなアニメ『鬼滅の刃』のとりとめもない話をはじめます。
Aくんの話を適当に受けながら、おやつを勧めると何と食べ始めました。
おやつを食べ始めたのはよかったのですが、「喉が渇いた!」とAくんお水を所望。
本当に喉が渇いているらしく、コップ3杯も水をゴクゴクと飲みました。
これを見落としていた私。あとで騒動になりました。
ASDなどの発達障害がある児童の中には好きなことに集中するとトイレなどの生理的現象も度外視してしまう傾向があることがあります。
「本当、助かったよ!」
SさんがAくんのところに戻って来ましたが、鬼滅の会話ができる私がいいと強くリクエストするAくん。
Sさん、またも施設長の許諾を取り付けて、少しの間だけAくんの見守りを私が代行することになりました。
鬼滅の刃に登場する剣士が使う刀をつくれというAくん。
私が段ボールを使って日本刀のようなものを作るとそれを持って、私を鬼に見立ててチャンバラです。
楽しそうな顔でアニメの鬼殺隊剣士に成りきるAくん。
突然、私に驚きのセリフを発しました。
「先生、トイレ行きたいけど、ちょっとおしっこ出ちゃった!」
小1の特性ある児童が水をコップ3杯もがぶ飲みしたのですからトイレに行くよう促すのは学童指導員なら当然なのですが、すっかり失念していた私。
施設長やSさんが慌てて、やってきました。
「先生、着替えさせてください!」
Aくんを慌ててトイレに連れて行き、ズボンとパンツを脱がせました。
ちょっと出ちゃったというより、かなり出ちゃったと言う感じ。
パンツは結構びしょびしょです。
施設長から渡された着替えには何故かパンツだけ入っていません。
とにかく、濡れたパンツを脱がせてAくんに「ちょっと待ってて!」と言い置いて、パンツを取りに行くと、解放感からなのかフルチンで学童教室を飛び回るAくん。
他の児童たちは目を丸くしながらも、フルチンで飛び回るAくんを追いかける指導員を見て笑い転げ、抱腹絶倒です。
結局、パンツは見つからず、ノーパンでズボンだけ履かせて対応することに。
小1や小2は時にこうしたお漏らし騒動があるそうなのですが、ノーパンで学童ルームを飛び回る事態は滅多にないことのこと。
ちょっとの間の見守りとはいえ私、相当に凹みました。
ベテラン指導員のSさんも責任の一旦を感じたのか、柄にもなく少し凹んでいる様子。
そのうちAくん、お父さんがお迎えにやってきました。
施設長はトイレが間に合わず、少しお漏らしをしてしまったことを説明して後手に回った対応を謝罪。
教養人の雰囲気を持つお父さん
「小さな子にはよくあることですから、気にしないで下さい。 」
「こちらこそ、ご迷惑をおかけしました。」
と頭を下げられました。良識ある保護者でホッとします。
お父さんと手を繋いで帰るAくん。
「お父さん! 今日もキッズ(学童のこと)は最高に楽しかったよ!」
と語った言葉に私もSさんも、施設長も少し感動してしまいました。
Aくんにとってはとても楽しい1日だったんだなぁと。
お漏らし騒動もAくんにとっては楽しい思い出になったのなら何よりです。