近未来における人類対AIの戦争。主人公はAI型少女と屈強な特殊部隊兵士。
これだけ聞くと、かつてレンタルビデオの棚にタンマリ並んでいた「ターミネーター」風B~C級作品ぽいですが、なんとこれが2023年度公開の劇場用新作『ザ・クリエイター/創造者』。
もともと好きなジャンルとストーリー(AI少女と兵士の組み合わせだけで沁みる)に加え、監督はあの『モンスターズ/地球外生命体』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のギャレス・エドワーズ。
ライト層は見向きもしなそうな、この硬派なSF映画を応援したい想いもあり(昔はこーいう大作が百花繚乱だったのに)劇場に足を運んだ次第。
(2023年公開 上映時間 2時間13分 監督 ギャレス・エドワーズ)
ストーリー
近未来、人間を守るはずのAIがロサンゼルスで核を爆発させた。
アメリカをはじめとする西欧諸国はAIを完全禁止したが、アジア圏ではAI開発を継続。西洋と東洋、人類とAIとの戦争が始まり、10年が経過しようとしていた。
元特殊部隊隊員ジョシュアは人類を滅ぼす兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だが、そこにいた兵器はAIの少女アルフィーであった…
感想
人類が進化したAIに逆襲する、イケイケ突貫映画を逆サイドから描いた本作。
確かに高度なAIは完璧な存在ではなく、不完全な人間に近くなるのは的を射てる気がします。
そんなAIを十ぱ一絡げに殲滅しようとするイケイケ西欧諸国。異質なものを悪と決めつける、西欧的思考がなんともまあ現実的。
そして、主人公たちはもちろんですが、他のモブキャラたちの行動がもうエモすぎ♩
ヒューマノイド型だけでなく、機械然としたルックのシミュラント(いわゆるアンドロイド)たちが、アジアの農村に溶け込み、現地の人たちと共同生活。何ら差別を受けることなく、普通に仲良く生活している彼らの日常をみるだけで、なんかもうグッときちゃいます!
そこに一方的な無差別攻撃をしかける、西洋諸国の正義ずらした面々。どちらが悪なんだコノヤローとマジに感じる憤怒は、いま世界で実際の戦争被害に遭われている方々の感情そのもの。
しかし、その激しい戦闘の最中、それでも人間たちを守るAIモブキャラたち。怯える子供たちを目の当たりにし、自らを犠牲にし破壊されていく彼らの尊さにもう...
2時間超の間、ただただこの世界に没頭させてくれる映像のクオリティ。ダルさが全くないストーリー展開。そして、AI少女アルフィーのなんともいえぬ愛らしさ。正直、100点満点といいたいところですが...
あのラストに至るまでの後半戦。何とかならんかったのか、エドワーズ!!
とにかく強引も強引。ここまで丁寧にストーリーを積み上げてきたのに、もうツッコミどころ100億点。ホントに勿体ないったらありゃしない!!
とはいえ…作り手たちの心意気・熱量がヒシヒシと感じられる本作品を好きにならずにはいられません。
大ヒットとはいわないまでも、この真摯な気骨あるSF作品が報われて欲しい(興行収益)。オリジナルSF超大作ってなかなか作られませんから。
パンフレットに詳細な世界観を解説してくれないのが残念
満足度 75点