「逃げたら一つ、進めば二つ手に入る」

 

数ある歴代ガンダム作品と比べても、突出すべき名セリフ。現実に打ちのめされている、迷える人たち(オジサン含む)全ての胸に響く、まさにマジカル&キラーワード。

 

しかし、作中で必ずしも報われるばかりではないところが、なかなかにシビア。そんな本作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。

 

シリーズ感想後編「ススススス...スタートしまぁす!!」(スレッタ風)。

 

 

 

 

  感想

 

「水星の魔女」の異名を持つ、ガンダムパイロット/主人公スレッタ・マーキュリー。さぞかしクールで男勝りなキャラクターと思いきや...

 

これがまさかのドジっ子キャラ。これは意表をつかれました。

 

 

 

歴代主人公でも、何気にこの設定はなかったのでは? これが少年キャラだとイラっとさせられたかもしれませんが、女の子だと何かとキュートにみえ、まさに絶妙の塩梅(あくまで個人的感想)。

 

本作はそんなスレッタの成長物語として、驚くほど素直に観ることができたんですよね♪

 

 

心からガンバレと思うことができる、そんなキャラクターが主人公。これは物語の推進力として、非常に強力だったかと思います。

 

 

また彼女の親友(&婚約者)ミオリネ、敗北が似合う男グエル、エラン・Theトリオ、裏主人公プロスペラなど、他のキャラクターもどれもこれも魅力的。愛すべきキャラたちがわちゃわちゃするお話だけでもけっこう楽しめるポテンシャル。

 

ところが、本作はたったの全24話。学園メインのサブエピソード(お笑い・息抜き回)ができるスペースがあるはずもなし。これはちょっともったいなかった。

 

しかし、逆にいえば、それだけ濃密なストーリーが、ハイスピードで展開されたということ。あっという間に終わってしまったのは、ガチで面白かったことの裏返しですからね。

 

ただ「ガンダム」ということで括ると、残念な点もチラホラ...

 

 

※ここからはネタバレが含まれます。ご注意!!

 

 

 

 

①ライバルキャラの不在。

 

グエル、エラン、シャディク...。学園内であればそれなりに善戦するでしょうが、本気を出したスレッタ&エアリアルには足元にも及ばない。そもそも生死を賭けるほどの相手ですらないんですよね(ポジション的にも)。

 

アムロとシャアのような、スレッタと同程度のドラマ性・実力を持ったライバルという大事なファクターが欠けているのは「ガンダム」でなくてもマイナスポイント。強敵不在が故の物足りなさは否めなかったと思います(最終的に〇リクトがそーいう存在だったのかもしれませんが)。

 

 

②空気のような量産型MS

 

「ガンダム」という作品は、ワンオフ・ハイスペック機体ガンダムのカッコ良さを堪能するのと同じくらい、泥臭い量産型MS、職業軍人のプロフェッショナルな活躍に胸躍らせるもの。

 

しかし、本作はまったくもって描写不足。量産型MSの種類はかなりあるのですが、正直印象に残っているのは「デミトレーナー」ぐらいじゃないでしょうか。

 

 

ただコイツはあくまで学生たちの練習用機。実戦に耐えうるスペックではないんですよねあせる

 

 

デミギャリソン。ディランザ・ソル。ハインドリー・シュトルム。ザウォート・ヘビィ...この辺りは戦闘用の量産型。いいルックをしてるのに、ほとんど目立った活躍ナシ(ハインドリー・シュトルムなんて、ガンプラつくったのにマジ数十秒の出番)。

 

 

こんなにイケメンなのに不憫すぎ。

 

 

この辺りのMSが活躍してこその「ガンダム」だと思うのですが、ここは本当に残念。第15話みたいな、量産型MS同士のバトルがもっと観たかった(内容的にも、ベテランパイロット/オルコットの活躍。グエルと少女の関係性も泣ける、グッドエピソード!!)

 

 

③MS同士の大規模戦闘(実戦)がほとんどナシ

 

学園内はいわば模擬戦、「ガンダム」はやはり実戦でナンボ。

 

しかし、ストーリー後半は大艦隊戦や多数のMS同士の戦いが行われると期待していたのに、これがほとんどナッシング。

 

あっても、誰も死なずに降伏や、一方的に蹂躙されての皆殺し(〇リクト、ヤバすぎ)。こちらが観たい、MS同士のつばぜり合い、戦術を使った大攻防戦とは程遠い展開。

 

多数の名立たるパイロットがMS同士で死闘を繰り広げ、命を散らし、話は終焉を迎えるガンダム特有のクライマックス。うーん、それが無いのはやっばり物足りない(「PROLOGUE」だけがそれらを満たしていたのは何とも皮肉)。

 

とはいえ、本作の終盤戦自体はキッチリ見応えあり。そこは間違いないんですけどね。

 

 

  結論

 

本ストーリーの元凶である「ヴァナディース事変」。それがなぜ引き起こされたのかという、その理由すら明確には語られない、本作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。

 

でも、面白かった。

 

物語の背景が不明瞭でも、キャラクターの心情は手に取るように分かり、そして彼らに共感できる。当たり前のことができているので、ストーリーに無理なく乗って行ける(「Gレコ」はマジでそこが✖)。

 

またテロまがいの凶行を行うキャラも、見方を変えれば彼らが主人公サイドでもおかしくない、歪んだリアルな世界の描き方は、大人の観賞が耐えうるもの。


ガンオタ的には残念な点はありましたが、作り手たちの作品に対する愛情はヒシヒシと伝わり、最後のエピローグまでキッチリ楽しみつくした本作。本当にいい作品だったと思います。

 

 

 

スレッタ・マーキュリーは大好きなガンダムパイロットになりました(スパロボ出たら、オジサンウレシイ)。

 

 

 

満足度 75点