先日NHKにて放送された「松田優作“ブラック・レイン”に刻んだ命」。
当時でさえ、マイ・ヒーローの早死にショックを受けたものですが、こういう番組を観ると、そのあまりに短すぎる生涯に改めて愕然とします。
だって享年40歳ですよ。「自分はとっくに優作サンの年齢を超えてんだよな...」などと思いしみじみ。
そんな唯一無二の俳優、松田優作を追悼する意味で、久方ぶりに『ブラックレイン』を観賞することに。
とはいえ、劇場と地上波で本作は何回も観てますが、この作品って正直あまり面白くなかったんですよね。
当時は、優作サンの出番が(期待していたわりに)少なかったことに起因していたと思ってましたが、いまの自分が観るとどう感じるのか。リドリー・スコットも健サンも大好きですが、ここは忖度なく、書き綴っていきたいと思います。
※本作好きな方、申し訳ございません!!
(1989年公開 上映時間 2時間5分 監督 リドリー・スコット)
ストーリー
ニューヨークで起きた殺人事件の犯人・佐藤(松田優作)を逮捕したNY市警のニック(マイケル・ダグラス)とチャーリー(アンディ・ガルシア)だったが、日本へ護送する途中で佐藤は逃亡する。
大阪府警の協力を得て捜査を行う二人だったが、佐藤配下のヤクザたちの標的にされてしまう。
感想
やはり...娯楽映画としてイマイチな『ブラック・レイン』。
まず全編を通して感じたのが、主人公ニックの魅力の無さ。
ステロタイプのはみ出し刑事ですが、あまりの周囲への配慮の無さ加減に「オマエが悪いんじゃねーか!!」ってフツーに思えてしまう。しかも、無実を主張しているが、実はマジで犯罪者のお金をかすめ取っていた、リアル・ダーティ刑事(デカ)。
可愛げもないし、ただただ不快なオッサンガイジン。内に秘めた正義感みたいなモノも感じられないし、うーん、何故にこいつが主人公なんだろう。
あと本作はアクション映画のカテゴリーだと思うのですが、テンポが遅く、肝心のアクション少なめ。これはダメ。単純にダメ。
もっとニックVS佐藤にフューチャーし、ガンガン盛り上げていけばいいのに後半までほとんど無風。ストーリーも遅々として進まず、異国でウザがられるニックたちの話だけがテンコ盛り。
相棒チャーリーも要らなかった。序盤で早々に退場するべきだったと思います。
彼は共感できるキャラだし、アンディも好きな俳優ですが、これで割を食ったのが、健サンこと高倉健演じる松本刑事。
チャーリー、松本のバディパートを丸々2回見せられるんで、松本刑事のターンの時はもうお腹いっぱい。そこはいいからさっさと話を進めてくれとさえ思えてしまう。健サンも好きな俳優なので、ここは本当に残念!!
では、本作の魅力はどこにあるのか。
これは間違いなく、松田優作演じる佐藤のキャラクターにほぼ尽きると思います。
長身でスタイリシュな見た目、ホンモノの狂気を滲ませる佇まい。これだけでも合格点な悪役キャラですが、それだけじゃない。
とにかく佐藤はチャーミング。ニックに対する、何気ないリアクションが何から何まで魅力的!!
その上、アクションはビシッと決め、強敵としての身体的リアリティも兼ね備えた、まさに理想的な悪玉(ヒール)。いまみても、ただただ単純にカッコいい。
ひいき目抜きにして、松田優作を知らなくても、佐藤の暴れっぷりは現在の観客にも完全に届くと思います。
ニックと松本の空港での感動的な別れより、ラストバトルの「さあ、どーする?」的な凄みある佐藤の笑顔の方が、観終わった後に強烈な印象を残した本作。まさに真の主役。
あと佐藤配下のヤクザのリアリティ無さ加減にも一言(世紀末のヒャッハー暴走族。國村隼がいたことにビックリ)。サイバーパンク的世界観をリドリーは考えていたんでしょうが、これは完全にミスマッチ。
とはいえ、バカバカしい日本表現はないため、違和感なくスルッと観れるのは、日本を舞台にした映画としては稀有な作品。メインテーマ、主題歌も素晴らしい。
傑作ではありませんが、記憶には残る映画。それが自分のなかの『ブラック・レイン』です。
本人が語ったように、松田優作最高の予告編だったと思います。
満足度 55点
佐藤 100点

