プロボクサー村田諒太引退。このニュースを聞いて、驚いた人は少なかったのではないでしょうか

 

昨年4月9日、ゴロフキン戦の敗北から約1年。その間、現役復帰のニュースはなく、37歳という年齢から考えても必然の決断だったかと思います。

 

プロレスは幼少期からガッツリ観ていましたが、ことボクシングに関してはかなりビミョー。ビックマッチをTVで観る程度のまさしくライト層。

 

そんな自分も、村田選手への思い入れは格別。街で偶然見かけたら、いまの現役プロレスラーより興奮すること間違いなし。

 

 

武士のような風貌、世界チャンプとしての実力はもちろん、ニックのような紳士的な立ち振る舞い、言葉の節々から感じ取れるブロディを思わせるインテリジェンス、そして、昭和プロレスファンにも似たボクシングに対する愛情の深さ...もうリスペクトせざるを得ない御仁!!

 

そんな村田選手の引退記念。個人的に思い入れのある三試合を取り上げてみました。お付き合いいただければ幸いです(記憶が曖昧なところはご勘弁下さいあせる)

 

 

  三番勝負感想

 

①柴田 明雄戦(2013.8.15)

 

記念すべきデビュー戦。この試合が始まる前は柴田選手を応援していたんですよね。

 

柴田はこの時点で東洋太平洋ミドル級王者。叩き上げの現役王者が、超エリートの五輪金メダリストの噛ませ犬に選ばれる、まさに屈辱的なマッチメイク。

 

「おれを選んだことを後悔させてやる...プロの厳しさ、教えてやるよ!!」

 

脳内ストーリー的にはこんな感じ。 柴田サイドでの試合観戦となったワケですが、これが信じられないぐらいのワンサイドゲーム。

 

どっしり構え、圧倒的なプレッシャーをかける村田に対し、序盤から劣勢の柴田。力量差は、まさに黄金聖闘士VS青銅聖闘士。1Rでダウンを奪うと、続く2Rであっという間のTKO勝利。

 

あまりの圧倒的強さに、試合後は「村田スゲーじゃん!!」とアッサリ手のひら返し。自分が村田諒太のファンになった瞬間でした。

 

 

②ロブ・ブラント戦(2018.10.20)

 

これは逆の意味で印象的な試合。村田の敗戦はもちろんですが、ショックなのはその試合内容。

 

ブラントの手数と動きに圧倒され、村田は被弾しまくり。いいところ全くなしのまさに完敗!!

 

この試合はラスベガスでの世界王座防衛戦。米国でもスーパースターの道を歩むはずが、まさかの大惨敗。観ている方はもちろんですが、本人も相当なショックだったことでしょう。

 

正直、村田が勝てる気がしなかったこの試合。ブランドとは相性が悪すぎ、この手の選手には歯が立たないと思ったワケですが...

 

 

③ロブ・ブラント戦(2019.7.12)

 

 

そんな難敵ブランドとの再戦。もちろん村田にはリベンジして欲しかったですが、前回の試合内容から、さすがに難しいと思っていました。

 

例えるなら、戦車対軍用ヘリ。いかに村田の火力があっても、制空圏をブランドに取られている以上、前回同様、蜂の巣にされるのがオチだと。

 

しかし、前回のあまりの屈辱的敗戦。あれが最後の試合だとしたら、村田は自分を許せなかったに違いありません。

 

「やってやる...やってやるぞ!!」

 

そんな村田とまさにシンクロ率100%で臨んだこの試合。前回とは打って変わり、1Rからフルパワーで連打しまくる村田。

 

ブランドも足を使いますが、村田はその動きにピタリと追従。まさに「聖闘士には同じ攻撃は通用しない」。壮絶な打ち合いのなか1R終了。

 

戦前予想を覆す試合展開に会場は大興奮。そして第2R、村田の強打がブランドに炸裂。重いパンチを次々と被弾させると、たまらずレフェリーがストップ、村田会心のTKO勝利!!

 

 

両手を高々と突き上げる村田。脳内にビル・コンティの「The Final Bell」が流れ、会場は歓喜の渦。最高のラスト、まさに映画!!

 

 

これは前回敗戦があったからこそのカタルシス。他の格闘技と比べても、自分の中でこれを超えるリベンジマッチは未だにありません。まさに記憶に残る名勝負でした。

 

 

  最後に

 

五輪メダリストで世界チャンピオン。村田選手をよく知らない方は、頭の回転がいいスポーツ・エリート、順風満帆のボクシング人生を送った選手だと思うかもしれません。

 

ですが、前述のロブ・ブラント、アッサン・エンダムにタイトルマッチでの敗北。最終目標ゲンナジー・ゴロフキン戦がコロナ禍で2年もの延期(年齢・モチベーション的に相当キツかったと思います)等、大きな挫折を幾度も経験した選手なのです。

 

しかし、リターンマッチではどちらも劇的勝利、絶対王者ゴロフキンとのタイトルマッチも実現。完全なハッピーエンドではなかったかもしれませんが、充実したボクシング人生だったと思います。

 

先日の現役引退会見で「ボクサー生活で証明できたこと」という質問に、村田選手はこう答えました。

 

 

「自分が思ったよりも強く、弱く、美しい部分もあり、みにくい部分もある。その自分自身をボクシングと向き合うことで見せてもらった。その旅だった」

 

「求めていた強さにはたどりつけなかったけど、思ってもいなかったことが見えた。それは意外と悪いものではなかった」

 

「弱さやみにくさを克服したいという向上心が見えたし、それが人生なのかなと思っています」

 

 

この10年間、その旅にほんの少しだけですが、自分も同行させてもらった気がします。

 

 

真の意味で強い漢、村田諒太選手。本当にお疲れ様でした。

 

 

ボクサー人生満足度 100点