平成ライダーでも、屈指の人気作品「仮面ライダーオーズ (以下「オーズ)」。その10年ぶり完全新作『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』。
オリジナルキャスト&スタッフ再集結。感動の最終回から10年後が描かれる、いつかの明日「オーズ完結編」。このニュースが流れた時、リアタイで観ていたライダーファンの端くれ、当然嬉しく思いました。
しかし、アンク復活、映司再会の件は、映画「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー」でこれ以上ないエモい描き方をしていたため、早急に観ようという気は起きず(新作レンタル高いし)しばし時間が経ったワケですが...
なんと本作公開後に聞こえてくるのは、カテゴリーF5並の低評価の嵐!!
特にオーズファンの阿鼻叫喚、怨嗟にも似た声は凄まじく、いったい何が起こったのか!?
まさに恐怖の問題作である「仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル」。戦々恐々の観賞結果を報告したいと思います。
※ネタバレ満載です。未見の方はご注意下さい!!
(2022年 上映時間 59分 監督 田﨑 竜太)
ストーリー
西暦2021年、突如として現代に蘇った古代オーズは人類を次々と粛清。自らが復活させたグリードによって世界は崩壊しようとしていた。
レジスタンスとして、後藤慎太郎や伊達明、泉比奈たちが戦っている最中、割れたタカメダルに異変が起こり、アンクが再び復活するのだが...
感想
復活したアンク目線で話が進んでいく本作。久しぶりに再会した映司の薄気味悪さ、サイコっぷりに序盤から目が離せない展開に。
ちなみに、この火野映司というキャラクター。数あるライダー作品のなかでも、かなり異色な主人公。
一見、楽観主義のお人よしにみえますが、自分が原因の一助となってしまった過去の悲劇(多額の寄付が内戦の資金に利用され、心通わせた少女も死亡する。血なまぐさいリアリズムが秀逸!!)に囚われ続けている。重い過去を背負った青年。世界の紛争地域に身を投じていたこともあり、拳銃も扱えるし駆け引き上手。簡単に記号化できない、多重的な要素を孕んだキャラクター。
こんな映司なので、精神的に壊れた結果がコレなのかと思いきや、実は人造グリードであるゴーダに身体を乗っ取られていたことが判明。
どーみてもサイコな悪玉のゴーダ。しかし、人類を粛清する古代オーズたちに立ち向かうには彼の力が必要というジレンマ。この「悪対悪」の図式って、個人的には燃える要素。
「性悪オーズ」がタトバ コンボ、(金食い虫)ガタキリバ コンボでウヴァを圧倒・決着の序盤戦はカタルシス半端なかったですし、ラスボス級の古代オーズを倒すのが、映画用コンボではなく、TV本編の最強コンボ「プトティラ コンボ」というのも、かなりアツい展開!!
グリードが世界制圧しているのに描写がショボい。復活したアンクを喜ぶくせに憑依された信吾を心配しない登場人物一同。(ウヴァ以外)見せ場もなくあっさり吸収されるグリード4人衆。何の活躍もできない新フォーム「仮面ライダーバースX」etc。言いたいことは色々ありますが、まあそこは許容範囲内。
しかし、大問題なのはあのラスト。あれだけはマジでいただけない....
ラストについて
予想だにしませんでした。まさか、主人公である火野映司の死をもって、本作が完結するとは。
しかも、一抹の望みもない完全なる死。オーズファンが激怒し、阿鼻叫喚の声があがるのは当然でしょう。
ファンが観たかったのは、アンクの復活であり、映司との再会。比奈ちゃん、伊達さんたちのその後の活躍。ただそれだけだったはず。
とはいえ、映司という個人単体でみれば、納得できないこともありません。
かつて救えなかった少女を救い、彼の盟友「アンク」のメダルも復活できた。真に望むものを手に入れた映司は、自らの死に悲観はしなかったでしょう。行動原理に矛盾は感じません。
これがメインライターであった小林靖子氏であれば、多少は納得したかもしれません。彼らを産み出した創造主の結末とあれば。
しかし、この最期に導いたのは、サブライターにすぎない毛利亘宏氏。そんな彼があれほど皆が愛した「オーズ」という作品の主人公、火野映司を1時間足らずのOVAで殺すというその行為は...
「さあ、オマエの罪を数えろ!!」
まさに罪。このラストに「オーズ」という作品に対する愛情、思い入れがまったく感じられない。
あるのはクリエイターとしてのエゴ、爪痕残したいのが丸出しのスケベ根性です。想像以上の負の反響に、驚愕されているようですが。
やれやれ。なんと想像力の欠片もない御仁か。
仮面ライダー作品のシナリオ書いてるクセに、大事なコトがまったくもって分かっちゃいません。
1年という長い時。その中で彼らの人生を見届けていたリアルタイムのファンにとって、彼らの存在は架空のものではありません!!
ヒット曲を聴くと、その時の自分の生活、感情がありありと思い浮かべるように、仮面ライダーという作品が、自分の人生に大きく関与している時期があります。
なかでも大傑作「オーズ」を多感な幼少期に観たファンは、どれだけ純粋に作品を、そしてキャラクターたちを愛していたことか。
その日、その時、自分のかけがえのない時間の中で共に過ごした主人公、仮面ライダーオーズ/火野映司は本当に大事な存在だったはず。
それをこんな軽々しく、主人公の死で終わらせる、その浅はかな思考回路。もちろんこれをヨシとした、東映製作陣の責任でもありますが。
物語として考えても、映司のいなくなった世界でアンクが生きていくのが、どれだけ辛いものなのか...
彼のとてつもない孤独の深さを考えれば、絶対に選択しないであろうこのラスト。仮面ライダー史上最悪のバッドエンディング。
放送当時「オーズ」を観ていたファン、そのすべてを裏切るラストであると断言します。
満足度 55点
ラスト 0点