「文豪にして剣豪!!」のキャッチコピーでスタートした、令和ライダー第二弾「仮面ライダーセイバー」(2020年9月~2021年8月)。
個人的には、ダメダメライダーシリーズの筆頭格。次作「リバイス」と並び、まさに令和の黒歴史!!
ノレないストーリー、終始喚き散らす登場人物、共感できない主人公、安売り大量ライダー、死ぬ死ぬ詐欺etc...
マスターロゴスの登場まで、ホント観るのが苦行だったこの番組。ライダーファン卒業を考えた方も相当数いたのではないでしょうか。
2023年を迎え、すっかり忘却の彼方だったそんなセイバーですが、先日、アパホテル滞在中にみつけたのが本作『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』。
いわゆるシリーズ終了後のOVA(オリジナルビデオ作品)。「東映特撮ファンクラブ」で未だ有料ということもあり、ヒマ潰しに観賞したワケですが...
これがなんと驚きの大傑作!!
まさか自分がセイバーを褒める日がやってこようとは。
(2022年公開 上映時間 1時間12分 監督 上堀内 佳寿也)
ストーリー
神山飛羽真/仮面ライダーセイバーらソードオブロゴスの剣士たちが世界を救ってから8年。
飛羽真は、かつて剣士たちの戦いに巻き込まれ、親を亡くした少年・陸とともに暮らしていた。
そんな中、聖剣の持ち主が次々と行方不明になる事件が発生。謎を究明しようとした新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズの前に、仮面ライダーファルシオンアメイジングセイレーンが出現する。
感想
特撮ファンであれば、本作の「当たり前すぎる劇映画ぽさ」に面食らったのではないでしょうか。
TVシリーズでのセット然とした造りものではなく、どこぞの書店をお借りしたであろう実存感のある飛羽真の本屋から始まり、彼らの生活環境はあくまでリアル。その映像感は「特撮」をまったく感じさせないほど。
さらにオドロキなのが極端に少ない変身、そして戦闘パート。
ライダーの活躍がほとんどなく、しかも主人公の飛羽真に限ってはラストバトルまで一度も変身しないという、仮面ライダー映画としてはまったくあり得ない構成。
また剣で切られれば血は出る、ダメージが残る。絶命する際は血を吐くなど、痛みが伴うリアリティがある演出。
そうです。本作は本来のメインターゲットである子供のことをまったく考えておりません!!
対象はあくまで硬派なライダーファン。TVの視聴率や銭ゲバ=バンダイの制約から自由になった制作陣の「新しいモノつくったる!!」心意気が、ビンビン伝わる超意欲作なのです!!
※敵ライダー/仮面ライダーファルシオンアメイジングセイレーン。改めてみるとカッコいいな、コイツ。
ライダーたちが何の見せ場も与えられず、次々と消滅していく不穏な空気。次第に明らかになる事件の真相。地に足がついた人間ドラマからの、タメに溜めまくった変身。そしてラストに明かされる真実と胸に迫る情感。
飛羽真・賢人の相変わらずのオーバー演技。感動させるつもりがクド過ぎる後半。敵ライダーの戦闘力の低さ。よくよく考えるとおかしな設定etc。気になった点もチラホラありますが...
ただそれも些末なこと。まったく新しいアプローチで創り上げてくれた「仮面ライダー」に酔いしれた満足感。ハンパなかったです。
8年間というかけがえのない時間。共に暮らした者への郷愁が感じられるラストに泣けてしまいましたよ、オジサンは。
満足度 70点