『007/カジノ・ロワイヤル』最高のラストシーン直後から始まる、シリーズ第22作目『007/慰めの報酬』。
実は『007/カジノ・ロワイヤル』より先に本作を観直していたのですが、やはりこれは前編後編としてみるべき作品。
単独でもしっかり面白かったのですが、ブログを書くにあたり前作から続けて観直したところ、登場人物の関係性、物語の世界観、そしてボンドを突き動かす情念がそっくりそのまま前作からトレースされるため、没入感がケタ違い(当たり前か)。
邦題はさすがにダサ過ぎますが(原題は『Quantum Of Solace』)、一級品スパイアクションであった本作について映画感想を書いてみたいと思います。
(2008年公開 上映時間 1時間56分 監督 マーク・フォースター)
ストーリー
愛する女性を殺した者への復讐を誓ったジェームズ・ボンドは、彼女を操っていたミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)を追及するうち、国際組織「クオンタム」の陰謀を知る。
ハイチへ向かったボンドは組織の幹部、ドミニク・グリーン(マチュー・アマルリック)に接近。グリーンと共謀するメドラーノ将軍への復讐を目指す女性カミーユ(オルガ・キュリレンコ)と共に組織を追うが...。
クオンタム
謎の国際組織というネタは、007映画以外でもお馴染みですが、本作における「クオンタム」の不気味さ、リアリティは秀逸です。
冒頭、ボンドが前作の仇敵ミスター・ホワイトをMのもとに連行したにもかかわらず、なんとMI6のなかに裏切り者がいたという場面はかなりのインパクト。
「まさかそんな身近のところに!?」という恐怖。MI6という強固な諜報組織にそんな異分子が紛れ込んでいたとは、さすがのMも内心震え上がったことでしょう。
本作悪玉ドミニク・グリーンが、環境保護団体の代表者というのも、いかにもありそうでイイ感じ。見た目のソフトさ、偽善者ぶりもなんとも腹立たしく、ヒールとして最高です♪
またオペラ会場で秘密会合を開く「クオンタム」著名人メンバーの描写は、どこか「メタルギア」の賢人会議を思い出させ、世界の闇を覗くようでゾクゾクします(ボンドが通信に割り込み、次々メンバーをあぶり出すシーンはまさに名場面)。
セカンドボンドガール/フィールズ(ジェマ・アータートン)のオイルまみれ死体の陰惨さも相まって心底コワい国際秘密組織「クオンタム」。
強大な悪の組織って、こうでなくちゃと思います。
感想
本作のボンドはまさに復讐の鬼ですが、アクション展開としては前作より従来の007ぽいといえます。
車、バイク、モーターボートそして飛行機と乗り物系アクションがオールインワン。特に冒頭のカーアクションは度肝を抜くこと間違いなしです。
とはいっても、気楽なポップコーン・アクションムービーなどではありません。
スパイの孤独と非情さが作品全体を色濃く覆ってるのが本作。マティスとのエピソードなんて、裏社会に生きるスパイ同士だから分かる、あのやり取りにはかなりジーンとなりましたしね...。
ストーリー展開はかなりスピーディー。上映時間2時間未満とサクサク観られるのもウレシイところ。
ただ終盤、武装していた敵が多数集まっていた砂漠のホテルに(というより秘密結社の建物っぽい)あんな軽装備で乗り込み、壊滅させるのはさすがにイージー過ぎだろとは思いましたが。
とはいえ、ドミニクへの非情な始末のつけ方、余韻を残すラストで締めくくられる本作は、まさに終わり良ければすべて良し。満足できる一本でした。
自分がマティスならボンドに協力しないけどね。
主題歌
主題歌「Another Way To Die」はアリシア・キーズとザ・ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが起用されています。
007シリーズ史上初のデュエットということですが、個人的には可もなく不可もなく。特にグッとくる感じはなし。
ただ映画を通して聴くと、けっこうイイ曲のような気もします。不思議なものです。
満足度 70点
主題歌 50点