『007/カジノ・ロワイヤル』はシリーズ第21作目。6代目ボンド/ダニエル・クレイグの初主演作品です。
ご存じの方は多いと思いますが、本作は公開前かなりの物議を醸した作品。
これまでのボンドのイメージと大きく逸脱するダニエル・クレイグのキャスティングに、従来のファンから大・大バッシングが浴びせられてしまったのです(近年のアニメ実写化問題どころじゃなかったでしょうね)。
ところが結果はご存じの通り、映画は大ヒット。ダニエル・ボンドの評価も一転し、まさに映画史上最大の手のひら返しとなったワケです。
個人的にも、従来のボンドが継承していた軽やかさを一切排した、殺し屋ボンドの凄みと新鮮さに、もろ手を挙げて大歓迎していたのを覚えています。
ボンド行脚の一貫で、久方ぶりに観た大傑作『007/カジノ・ロワイヤル』。本作映画感想について書いてみたいと思います
(2006年公開 上映時間 2時間22分 監督 マーティン・キャンベル)
ストーリー
暗殺の仕事を成功させ「00」の地位に昇格したジェームズ・ボンドは、最初のミッションで、世界中のテロリストの資金運用をしているル・シッフルの存在を突き止める。
高額掛け金のポーカーで資金を稼ごうとするル・シッフル。ボンドはモンテネグロのカジノでル・シッフルにポーカー対決を挑む。
6代目ジェームス・ボンド/ダニエル・クレイグについて
モノクロ画面のなか、荒々しい肉弾戦を経て、相手の頭を水に沈めて殺そうとする
冷酷な瞳の男。
「ダイハード」に出てくるテロリストのような、プロの殺し屋にしかみえないブロンド男。新生ジェームス・ポンドの初登場には本当にオドロキました‼
個人的にはロジャー・ムーアのボンド世代です。あの時代はまだ社会には緩さ、大らかさがありました。軽妙なユーモア、軽やかさ。ピンチにも動じないダンディなムーア・ボンドは大好きでしたし、あの時代だからこそのジェームス・ボンドだったと思います。
翻って、あらゆるところに余裕がなくなり、ささいなミス、失言も許されなくなった現代。軽さ甘さが一切ないシビアなダニエル・ボンドは、まさに窮屈な現実社会を踏まえた最新式ジェームス・ポンドだったのだと思います。
とはいえ、いま観直すと本作のダニエル・ボンドは、かなり印象が変わったところもありまして...
コレが思っていた以上に「無鉄砲極まりない暴走ボンド」だったのです!!
大使館に逃げ込んだ爆弾男を追って平然と侵入。大銃撃戦の上、爆弾男射殺+大爆発。
上司であるMの自宅を勝手に調べて上がり込み、なおかつPCを無断使用。
本部からプロギャンブラーというカバーを与えられたのにも関わらず、ホテルで「ジェームス・ボンド」と書いてしまう大胆不敵さ(ヴェスパーがブチ切れてましたが)。
「コイツ涼しい顔してなにやってんたよ!?」と思わずにはいられない暴走ぶり。まだ「00」に昇格したばかりなのにやりたい放題です。
とはいえ、こんな自信過剰が故に、歴代ボンド史上最悪のトンデモナイ責め苦に七転八倒することになるのですが...
本作公開は2006年。自分が16年間分歳を取ったせいか、いま観るとボンドの「若さゆえの過ち」が満ち満ちていることに気付く本作品。もちろんこれは製作者側が狙ったことだと思います。
ボンドガール/ヴェスパーに対してのメロメロっぷりなんて、もうカワイイとしかいいようがありませんしね♪
感想
本作は新生ジェームス・ボンドの魅力はもちろんですが、映画本編自体の厚みもハンパありません。
内容テンコ盛りの上、出てくるアクション場面はどれも一級品。
特に冒頭、工事現場の目もくらむ高層パルクールアクションつるべ打ちからの、大使館での大銃撃戦。これだけで映画の元を取ったようなクオリティです。
ストーリー自体もかなりオドロキの展開。
敵ボス/ル・シッフル(マッツ・ミケルセンの冷酷な表情ってマジ最高♪)の途中退場、裏切り者の意外性、そして終盤の悲劇的な物語。最初観た時はストーリーの着地点がみえないほど。
そしてボンドの非情さに喝采し、次作がみたくてタマラなくなるあの痺れるラスト。これ以上のない「to be continued」です。
いま観直すと、ボンドとヴェスパーのツンデレ同士のラブストーリーだけでもかなり面白く、本作はバランスの取れた大傑作だと改めて思えた次第。
面白いだけでなく、本当にいい映画。
本作はそんな作品だと思います。
主題歌
主題歌「You Know My Name」はサウンドガーデンのヴォーカリスト、クリス・コーネルが起用されています。
なんとこの曲、主題歌にも関わらずサウンドトラック盤に収められていないという不遇の曲。一体なにがあったんでしょうか!?
曲自体はかなりの熱血ソング。「おれの名を知ることになるぅ!!」とリフレインするのだからタマリマセン♪
こじゃれた感じ、007ぽさは感じられませんが、どこか歌謡曲ぽくもあり、個人的には大好きな曲です。
満足度 80点
主題歌 75点