ロッキーシリーズのスピンオフであるクリードシリーズ。

 

本作『クリード 炎の宿敵』は『クリード チャンプを継ぐ男』の続編というだけでなく、『ロッキー4/炎の友情』とも大きく関わりある作品です。

 

あのアポロ・クリードを亡き者にしたイワン・ドラゴの息子ヴィクター・ドラゴと、アポロの息子アドニス・クリードが対決するという、少年ジャンプも真っ青の因縁対決ストーリーなのです !

 

しかも、ロッキー、ドラゴはもちろん、ドラゴの元妻としてルドミラもオリジナルキャストで出演。まさに完璧な布陣。

 

正直、この作品については今年(2022年)まで知りませんでしたが、今となってはそれがよかった。

 

何といっても、『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』を観た後にこの作品が観れるのですから。正に黄金コンボです。

 

あの闘いから長い時を経て、ロッキーとドラゴは一体、何を語り合うのでしょうか!?




 

(2018年公開 上映時間/2時間10分 監督/スティーヴン・ケイプル・ジュニア)

 

  ストーリー

 

アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)はついに世界チャンピオンとなるが、父アポロの命を奪ったイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の息子ヴィクターが挑戦を表明する。

 

ロッキー(シルヴェスター・スタローン)の反対を押し切り、試合に臨んだアドニスだったが、ヴィクターのパワーに圧倒され、一方的な試合展開となってしまう。

 

 

  ロッキーとドラゴ

 

本作最大のメインエベントは、ロッキーとドラゴの再会に他なりません。

 

あの死闘を経て、何十年ぶりに再会する二人は何を語るのか。興味津々のこの場面。

 

しかし、こちらの期待とは裏腹に、これがあっさり終わってしまいます。特にロッキーの塩対応ぶりにはビックリ!

 

とはいえ、ロッキーにしてみれば大昔の話。当然といえば当然ですが、ドラゴは敗北で全てを奪われたのですから、過去の話では済みません。

 

懐かしむどころか、彼はロッキーに対し憎しみしかないのです。

 

この温度差があるやり取りは、二人の立場から考えて、けっこうリアルじゃないのかなと思ったりしました。

 

しかし、二人の再会以上にインパクトを残したのが、ルドミラ・ドラゴ (ブリジット・ニールセン)の帰還!!

 

何なんでしょうか、あのルック!?とにかく度肝を抜かれることは必至です。

 

「あんな女と別れてよかったよ」とドラゴの肩をポンっと叩いてあげたくなりました。

 

 

  感想

 

アポロの息子アドニスとドラゴの息子ヴィクターが対決する!!

 

こんな最高に燃えるストーリー。大興奮は間違いなしと思い、気分アゲアゲで観たのですが...

 

何か物足りない。

 

必要なものは全て揃っている。『ロッキー4』のオリジナルキャストを揃え、試合も迫力満点。ラストもキレイにまとめている。

 

しかし、なんかなぁ。感情が動かないというか、「ロッキーシリーズ」であれば感じられる熱いものがなかったんですよね。

 

自分なりの見解ですが、やはりアドニス・クリードの魅力の無さが一番の原因ではないかと。

 

本作は前作と比べ、ロッキーの出番が大幅に減っています。当然、主人公であるアドニスにストーリーの比重が重くなるわけですが...

 

空気みたいなんですよ、アドニスは。存在感がホントに薄い。

 

元は孤児とはいえ、裕福な家庭で何不自由なく育った、いいとこのお坊ちゃん。それ自体が悪いことではないですが、とにかくフツー過ぎる若者で、キャラクターに特筆するべきところがありません。

 

ボクサーとしての能力値は高いでしょうが、それが弱いキャラクター性を補完しているワケでもない(パンチ力が際立っている。テクニックが芸術的等)。

 

ガンダムシリーズで言えば、『機動戦士ガンダムUC』のバナージ・リンクスなんですよね(あくまで私見です)。

 

 

 

 

個人的には、井上敏樹大先生(平成ライダー、戦隊シリーズの脚本家。大天才)のおっしゃられるところの「チャーミングなところ(弱点)」が無いからではないかと思います。

 

彼には出来ないことがありません。頭はいいし常識人。運動能力も高く、しかも裕福。美人の彼女はアーティスト。

 

この欠点がないところが(というか、あまりにも恵まれ過ぎている)アドニス最大の欠点。これでは、彼に感情移入できにくいのも仕方ありません。

 

持てる者と持たざる者。

 

正直、持たざる者であるドラゴの息子、ヴィクター・ドラゴの方がよっぽど応援したくなります。

 

彼を取り巻く生活環境のハングリーさ。父親ドラゴの汚名を挽回させたい、その強い想いとハート。そして、母親に捨てられた深い心の傷も持ち合わせています。

 

「お前に闘う理由があるのか?」とロッキーはアドニスに問いかけますが、まさに正論。本質をついた言葉だと思います(本作脚本にはスタローンも参加。さすがです)。

 

とはいえ、本作はドラゴ親子のパートもしっかり描いており(終盤のドラゴの行動にはグッときました)、全体的にバランスの取れた映画です。完成度は高いと思います。

 

自分が感じてる物足りなさも、ロッキーシリーズを知らない、真っ新な状態で観る若い人たちは感じていないかもしれません。

 

しかし、ロッキーたちオリジナルキャストが全く出ない本作続編が出来たとして、その作品を観たいと思うのでしょうか?

 

 

満足度 60点