『ロッキー4/炎の友情』は最高であり最低です。

 

「ロッキー」シリーズ最大のヒット作でありながら、「最低」の映画を選ぶ第6回ゴールデンラズベリー賞で8部門にノミネート、5部門受賞と1985年度ぶっちぎりの最低映画。

 

以前のブログでも書きましたが、ロッキー/スタローンファンの自分としても「いいところもあるが、許せないところがそれ以上にある作品」です。観れば十分楽しめちゃいますが、納得出来ない作品ではあるんですよね。

 

そんな『ロッキー4/炎の友情』をスタローン自身が36年ぶりに再編集した、本作『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』。

 

片道50km愛車を走らせ、ようやく観ることが出来ました!!(地元の映画館では公開されず。TOHOシネマズのケチ( ゚Д゚)㌦ァ!!)。

 

スタローン渾身のリボーン・ロッキー4。『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』について、感想を書きたいと思います。

 

 

 

 

(2021年公開 上映時間/1時間34分 監督/シルヴェスター・スタローン)

 

 

  『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』制作について思うこと

 

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』公開のニュースを聞いた時、「スタローンって根っからのクリエイターなんだな」と思い、いちファンとして非常にしびれました。

 

コロナ禍で出来てしまった大量の時間。

 

様々な行動制限がかかるなか、セレブであり、未だに映画業界最前線で活躍中のスタローンなら、様々な時間の使いようがあったかと思います。

 

映画の新作。サブスクのオリジナルドラマの企画や脚本。過去作の版権問題。更なる肉体改造に資産運用。お金に任せてネットショッピング!?

 

幾らでもやれることはあったでしょう。しかし、スタローンが選んだのは、なんと36年も前の自らの作品『ロッキー4』の再編集。

 

再編集にあたり、スタローンは「すべての映像に目を通し、未使用シーン、音声トラック、劇伴にいたるまで何百時間もかけ徹底的に見直した」(引用:カルチャヴィル合同会社/HP記事)とのこと。

 

古い作品を使って金儲けみたいな、揶揄する記事も目にしましたが、それは完全に的外れ。

 

この作品は本国アメリカでさえ、2021年11月11日に一夜限りの上映がされただけ。未だに配信予定すらありません。

 

金銭的なことを考えれば、まったく儲からない孤独な作業をスタローンは延々と続けていたことになります。

 

自分の過去の作品を手直ししたいプロのクリエーターは星の数ほどいるでしょう。しかし、それを実際に実行する人間はどれほどいますか?

 

費やした膨大な時間と労力を考えれば、金銭的な見返りはほとんどありません。

 

どれだけ、スタローン自身が『ロッキー4』の出来に後悔の念があったのか。

 

そして、世間からバッシング(自分もですがあせる)されたこの作品を、どれほど愛していたのか。

 

作品に対するその真摯なオトシマエ。最高のプライベートフィルム。

 

我らが映画界のレジェンド、シルヴェスター・スタローンは、ホンモノのクリエイター魂を持ち続ける男だったのです。

 

 

  感想

 

本作は主軸のキャラクターであるロッキー、アポロ、ドラゴの三人のドラマが大幅にブラッシュアップされています。

 

特にかなりヒドイ扱いだったアポロは、かなり違ったものになってました。

 

前作『ロッキー3』においてのロッキーとの関係性。アポロを再び闘いに向かわせる過程。ドラゴとの死闘(尺が長くなり、1ラウンドはアポロはかなり善戦)。そして葬儀の描き方(ロッキーの言葉が泣かせます)。

 

彼の死の重さをはるかに実感出来る編集となっており、無駄死としか思えなかったアポロの死が、本作ではかなり納得できるものに変わっています。

 

ちょいちょい理解し難かった事柄も、見事にリカバーできているのにも感心しました。

 

ロッキーがロシアまで行く云々の突然さ、スパーリングパートナーがいない不自然さについても、追加シーンを入れることにより、見事に解消されています。

 

ロッキー対ドラゴの対決もかなり印象が変わっており、特にドラゴの人間味が増してます。

 

『ロッキー4』では、無数の殺人パンチを食らわせても、立ち上がり反撃してくるロッキーに「鉄でできている」ぐらいしか言わなかったあのドラゴが「いったい何なんだよ、アイツは!?」(確かこんなセリフ)とオロオロしちゃうんですから。

 

また個人的に一番観たかった、闘う当人同士しか感じえない互いへのリスペクトについても、本作ではしっかり描かれています。

 

ストーリー自体に変更はありませんが、ラストシーンはかなり変わっていました。

 

『ロッキー4』ではリング上でのインタビューで、亡き親友アポロに一言も触れないロッキーにガッカリしたものですが、本作ではちゃんとアポロについても語っています。

 

それ以外にも、かなり大幅な場面の差し替え。別テイクでこれだけ撮っていたのかと驚くばかりです。

 

こういう『ロッキー4』が観たかった。この内容なら納得できた。

 

まさにこれこそが正真正銘の『ロッキー4』。

 

公開当時、劇場に足を運んだ少年たち。そして「ロッキー」を愛する全ての人たちに観てもらいたい傑作でした!!

 

 

 

ただ個人的に全然ダメダメだった、過去作フラッシュバックの「No Easy Way Out」のパートがそっくりそのまま流用されたことにはけっこうショック。

 

 

 

「アレ、マジでダサいと思ってるんだけど。

オレ間違ってたのかな、スライ」

 

 

 

満足度 85点。