内臓を抉られる衝撃!!  二度とみたくない傑作!!

 

公式ホームページに踊る、刺激的な文言。

 

R18+指定のスプラッターホラー映画『哭悲(こくひ)/THE SADNESS』。賛否両論の激しい本作を先日、ようやく観ることが出来ました。

 

徹頭徹尾、血まみれの100分間。久方ぶりに「ガツンとした」衝撃を受けた本作について書いてみたいと思います。

 

 

 

(2020年制作 上映時間/1時間40分 監督/ロブ・ジャバズ)

 

 

  ストーリー

 

謎の感染症が蔓延する台湾。「アルヴィン」と名付けられたそのウイルスは、風邪のような軽い症状のため、不自由な生活に不満を持つ人々の警戒はいつしか薄れてしまっていた。

 

ある日、ウィルスは突然変異し、人間の脳に作用して凶暴性を助長する疫病が発生。感染者たちは衝動を抑えきれず、罪悪感に涙を流しながら、思いつく限りの残虐な行為を行うようになる。

 

そんな狂った世界の中、離れ離れになったジュンジョーとカイティンは再会を果たそうとするのだが...

 

  感想

 

不謹慎かもしれませんが、本作は圧倒的に面白かったです!

 

ジャンルで括れば「感染者モノ」。過去作で言えば『28日後』や『28週間後』に近いと思います。

 

本作が秀逸なのは、ウイルスが人間を凶暴化させるという使い古したアイディアに、非常に恐ろしい新要素を加えたことです。


感染者たちは衝動を抑えられず、思いつく限りの残虐な行為を行うようになる。

 

既存の映画と違い、本作の感染者は知性があります。記憶も思考能力も残っています。

 

感染者はそれらを総動員し、思いついた限りの残虐行為を他人に行おうとする。つまり、感染者の個性によって残虐行為の種類も質も違ってくるということです。

 

短時間で殺してもらえるのなら、まだ運が良い方でしょう。それが思いつく限りの残虐行為で長時間なぶり殺しにされるとしたら...

 

心底ゾッとする設定です。よくこんな恐ろしいことを考えついたものだと思います。

 

結果として、とんでもない残虐行為が、ほぼ全編にわたり繰り広げられるということになります。

 

批判は出るのは当然でしょう。アンモラルで暴力的な場面が矢継ぎ早に、しかも直接的な表現で描かれてるワケですから。

 

しかし、こうした映像表現になるのは必然だと考えます。でなければ、この斬新なアイディア、世界観を生みだした意味がない。

 

感染者たちが追いかけてくる見慣れた場面も、その全員が満面の笑みを浮かべているのだから、恐ろしいことこの上ありません!

 

しかも、本作は絵空事とは思えないリアリティがあります。

 

これまでの映画も、未だに猛威を振るう「コロナウイルス」を連想させるものはありましたが、本作ほど直接的に模写したものはないでしょう。

 

「アルヴィンウイルス」と不自由な生活に不満を持つ人々という設定は、いまの自分たち、そして現実世界そのものです。

 

また台湾の街並みや風景も、どこか昭和の日本を思わせ、既視感(特にジュンジョーのルート)が映画への没入感を倍増させます。

 

ストーリー自体は非常にシンプル。驚くような展開もありません。

 

ただ「世間から忌み嫌われても上等!!」と言わんばかりのゴア表現。感染者が笑みを浮かべて襲い掛かるビジュアルの新鮮さ。そして作品の持つ膨大な熱量は、近年のホラー映画では決して得られなかったもの。

 

かつてホラーやスプラッター映画が好きと言えば、白眼視された時代がありました。

 

今では世間に認知されたジャンルになりましたが、レーティングの問題もあるのか、近年はお行儀のいいホラー映画が増えた気がします。

 

たまには、道徳観やモラルを吹っ飛ばした映像体験をさせてもらいたい。悪夢のような絶対的恐怖を味合わせてもらいたい。

 

 

『哭悲(こくひ)/THE SADNESS』は、そんなイケナイ渇きを満たしてくれる作品でした。

 

 

満足度 80点