ロッキーシリーズ第4作目『ロッキー4/炎の友情』
興行的にはシリーズ最高のヒットを記録した本作。しかし、公開当時の評判は散々でした。
「最低」の映画を選ぶ第6回ゴールデンラズベリー賞で何と8部門にノミネートした上、ワースト主演男優賞・ワースト助演女優賞・ワースト監督賞・ワースト脚本賞・ワースト音楽賞受賞と、まさに1985年のぶっちぎり最低映画だったのです。
ロッキ-シリーズのある意味、問題作となってしまった『ロッキー4/炎の友情』について激辛に書かせていただきたいと思います(好きな方は本当にスイマセン!!)
(1985年公開 上映時間/1時間31分 監督/シルヴェスター・スタローン)
ストーリー
アマチュアボクシングヘビー級王者イワン・ドラゴが訪米。世界ヘビー級王者であるロッキーとの対戦希望を表明した。
アポロは「引退して時間が経っても、戦士としての自分は変えられない」とロッキーに語り、代わってドラゴとの対戦を引き受ける。
しかし、近代科学の粋を駆使した「戦闘マシーン」と化しているドラゴの実力にアポロは完敗。リング上で死亡する。
親友を失ったロッキーは、ファイトマネーはゼロ、未認可の非公式戦、敵地・ソ連での開催という悪条件をすべて飲み、ドラゴとの対戦に挑む。
イワン・ドラゴ
言いたいことが山のようにある本作品ですが、イワン・ドラゴについては褒めることしかありません。
ソ連の近代科学が生んだ究極の戦闘マシーン、冷酷無慈悲な最凶ボクサー。
佇まいだけで、このコミックチックな設定を観客に信じさせてしまうドラゴの凄みは、普通の役者ではとても出来ません。
演じるのは、ご存じドルフ・ラングレン。彼はもともと極真空手の強豪選手だった人物です。本作でブレイクしますが、これはもう当然でしょう。
2メートル近い巨体ですが、バランスもいいしルックスも最高。リング上の動きも滑らかで、ロッキーやアポロ同様、圧巻な存在感です。
冷酷な表情もいいですが、ロッキーのパンチに悶絶する表情がまた絶品。やられっぷりも最高です。
闘いに挑む彼の真摯さも、実は好感を持てたりします。ホント、魅力的なキャラクターです。
感想
いいところもあるが、許せないところがそれ以上にある。それが本作だと思います。
娯楽映画として観るだけなら、十分面白い映画です。ポップコーンムービーとして割り切れば、全然アリだと思います。
ただこれはあの大傑作『ロッキー』シリーズの正当な続編。みんな大好きなロッキー・バルボアの物語なわけです。シリーズを追いかけてる人ほど「なんでこーなっちゃうの」と憤慨することは間違いなしの作品なのです。
まず許せないのは、あのアポロがドラゴに殺されるという件。
アポロは前三作を通しシリーズを引っ張ってきた大事なキャラクター。なぜ死ななければいけないんだってコトですよ!
かつては無敵のチャンプだった彼が試合で大怪我をし、生死をさまよう設定だけで、十分にロッキーが闘う動機になったと思います。なぜ殺す必要があったのか。
しかも、彼の死が全く後半に生かされていない。マジでアポロの「ア」の字も出ない始末。
最強の相手であるドラゴに勝つという奇跡に、アポロの死が何の貢献もしていない。「スライさあ、自分で殺しといてなに考えてんだよっ」と文句の一つも言いたくなります。
あと音楽の異様な軽さ。
ロッキーシリーズに多大な貢献をしたのは間違いない、ビル・コンティを外すなんて信じられません。
本作はなんと「ロッキーのテーマ」が一度もかからず。彼のスコアがあればこそ、あれほどエモーショナルな気分になれるというのに!
しかも、随所に流れてくる曲が、ずいぶんと安っぽい80年代ロック。(サバイバーの「Eye of the Tiger」「Burning Heart」、JBの「Living in America」など素晴らしい名曲もありますが)。
これが次の不満点、映像のミュージック・ビデオ化に続くワケです。
アポロの死の後、ロッキーが車を飛ばしながらの回想シーン。
ロッキー前3作の名場面が矢継ぎ早にフラッシュバックされます。本来ムチャクチャ乗れる場面に二束三文のC級ソング「No Easy Way Out」がフルソングでかかるという暴挙。
短ければ印象も変わるかもしれませんが、こんな薄っぺらい曲でクドクドやられると、正直ゲンナリした気持ちになってしまいます。
シリーズおなじみのトレーニングシーンは2回もあり、ここはけっこう盛り上がれますが、試合直前の大事な2回目にこれまた安っぽい「Heart's On Fire」(キライではないですけど)が流れるのもガッカリポイント。
とはいえ、ロッキーとドラゴの試合はかなりの名勝負です。なんだかんだ言って、ここはちゃんと盛り上がれます。
しかし、問題は後半の観客の反応です。
なんと、最初はブーイングを浴びせていたソ連の観客たちが、ロッキーを応援するのです。しかも、熱狂的に。
あり得ないんです、こんな展開。自国の英雄ドラゴ相手に敵国のロッキーが一方的に応援されるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ない。
もうお花畑としか思えない、
ク○妄想です。
試合後のインタビューも何言ってんだか。「みんな変われるんだ!!」じゃないだろう、ロッキー。
アポロのこと、マジで忘れてんじゃん...。
「スタローン、万死に値する」と嘆きたくなるほど、本作はコミックみたいな作品になってしまったと思います。
とはいえ、スタローン本人も本作の出来に納得していなかったことは間違いありません。だからこそ、36年の時を経て本作を再編集したのでしょう。
もとより、ドラゴという最高のキャラクターと、いくらでもアツく出来るストーリーです。42分の未公開映像を加えた『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』には期待しかありません!
ぜひ本作のリベンジを
果たしてもらいたいと思います。
満足度 55点