『ロッキー3』は、自分が初めて観たロッキーシリーズになります。
公開当時、この映画にポンクラ少年の自分は熱狂しました。ロッキーの激闘、トレーニングシーン、音楽、その全てに酔いしれたのです。
ロッキー・バルボアそしてシルヴェスター・スタローンは、アントニオ猪木と並び、当時の自分のヒーローになりました。映画雑誌を買い込み、付録のスタローンのポスターを壁に張り、『ロッキー3』のサントラを聞きまくりながら腕立て伏せをしたものです。
この当時のスタローンはまさに全盛期だったと思います。本作公開の1982年にはもう一つのメガヒットシリーズ『ランボー』が公開されています。
そんなノリノリのスタローン/ロッキーが楽しめる本作。待望の新作「ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV」鑑賞前の復習も兼ねて、感想を書いてみたいと思います。
(1982年公開 上映時間/1時間33分 監督/シルヴェスター・スタローン)
ストーリー
世界チャンプとなり、国民的スーパーヒーローになったロッキー。
幸せの絶頂の中、ロッキーは現役引退を発表するも、世界ランキング1位、ハードパンチャーのクラバー・ラングが挑戦状をたたきつけた。
クラバーの挑発に乗ったロッキーはタイトルマッチを行うも、野獣のようなクラバーの強打に、わずか2ラウンドでKOされる。
失意のどん底に沈んだロッキーだったが、かつての宿敵アポロがトレーナーとして名乗りをあげる。再起をかけたロッキーの挑戦が始まった。
サンダー・リップス
本作でロッキーはなんとプロレスラーと異種格闘技戦を行います。
相手は2メートルを超える大男、世界チャンピオンのサンダー・リップス。あくまでチャリティ目的であり、エキシビジョンマッチです。
通常は試合前に打ち合わせをするものですが、なんとぶっつけ本番。ロッキーは軽く考えていましたが(こういうアバウトさはロッキーらしい)、サンダーにそんな気はサラサラなく、ロッキーに猛烈なアタックをかけます。
ハンマーパンチでぶん殴り、コーナーに吹っ飛ばすと、カリフォルニアクラッシュ、ブレーンバスターの大技ラッシュ。ロッキーは青息吐息です。
最後はなんとかロッキーも反撃するのですか、試合の大半がサンダーが攻めまくる展開になります。
最初から本気モードであれば、ヘビー級チャンピオンのパンチを持つロッキーです。こんな大味の責めで仕掛けてくるサンダーを返り討ちにしてるでしょう。
しかし、この試合だけ観れば「なんてプロレスラーは強いんだ!!」と観客は思うに違いありません。
スタローンのこのようなプロレスに対する強いリスペクトに、深い共感を覚えます。
あくまでやられるのはロッキー。受けて受けて最後に反撃と、まさに猪木の言う「風車の理論」です。
技を受けまくるロッキーと、試合を盛り上げようとするサンダー(相手を壊すような技は仕掛けてません)。結果は観客大興奮のエキシビジョンマッチに終わったのですから、まさに大成功と言えるでしょう。
サンダー・リップスを演じたのは、リアルアメリカンこと元WWF世界チャンピオンのハルク・ホーガン。
彼はこの後、大ブレイク。プロレス界の大スターに上り詰めます。
感想
本作はかなりふっ切れた作品だと思います。
前作『ロッキー2』は大傑作『ロッキー』の呪縛に囚われ過ぎて、全体的なテンションは低めでしたが、本作は一転。ヒーロー物語のダイナミズムに満ち溢れています。
ロッキーの快進撃。アメリカンヒーローの日々。サンダー・リップスとの異種格闘技戦。クラバー・ラングとの二度にわたる激闘。そして、宿敵アポロとの共闘。
これがなんと上映時間96分という短時間に濃縮されているのです。あれよあれよという間に映画は終わってしまいます。
対戦相手の二人も強烈なキャラクターです。前述したサンダー・リップスと野獣のような獰猛さを持ったハングリーの塊、クラバー・ラング。
演じるのは『特攻野郎Aチーム』でお馴染みミスター・Tです。
彼はもともと役者ではなく、ニューヨークでボディガート稼業をしていた男。ボクシング世界チャンピオンのレオン・スピンクスのボディガートをしていたぐらいですから、本物の強者(ツワモノ)です。本作が彼の俳優デビューになります。
こんな強敵二人とロッキーは闘うのですから、盛り上がらないワケがありません!!
徹頭徹尾、
ロッキー祭りの映画です。
「そこに人間ドラマはあるんか?」(某CMみたいですが)ということになりますが、そこは恩師であるミッキーの死を挟み込んでくるので、エモーショナルな部分もしっかり用意しています。
とはいえ、『ロッキー』からかなり遠いところに来てしまった印象は否めません。
フィラデルフィアのゴロツキだった、貧乏暮らしのロッキー・バルボアが、庭付き家の金持ちセレブですからね...(特にエイドリアンの変貌がエグい)。
しかも、お国を代表するアメリカンヒーローとなると、あまりに夢物語過ぎて正直シラケる気持ちもわかります(公開当時、この設定に対する批判は多く、スタローン本人も激しいバッシングを受けていました)。
そうした設定の不満点はありますが、ロッキーの肉体の凄まじさは前作2作と明らかに違います。スタローンは徹底的な肉体改造を行って、本作の撮影に臨んでいます。
鍛えあげた肉体は演じる人間の努力の結晶そのもの。ロッキーのキャラクター自体も前2作をしっかり踏襲しており、「ちょっとやり過ぎだけど許してやっか」的な気分にはさせてくれます。
前2作と比べてライトな作風も、疾走感あるストーリーと最強の音楽(名曲「Eye of the Tiger」はもちろんフランク・スタローンの「Pushin」はマジサイコー♪)、ロッキーの試合が3試合もみられる超お得感で収支的に大幅プラスの満足感です。
批判もツッコミもいくらでも出来る作品ですが、本作のような圧倒的な面白さを「ボクシング映画」というジャンルで得られる映画はほとんど無いでしょう。
ラストシーン。ロッキーとアポロのやり取りも最高です。
満足度 80点