やたらと評判が高い、本作『ミッドサマー』。
ホラー映画のカテゴリーだとは思いますが、予告編を観てもイマイチどんな映画なのか想像がつきません。
とはいえ、バイオハザード4(ゲーム)のように、得体の知らない村人がワケわからん言葉を発しながら、カマ持って襲い掛かる感じではないようです。
上映時間の長さに尻込みし、なかなか観賞できませんでしたが、先日2連休の休みが取れたこともあり、ようやく観終えることが出来ました。
この難敵『ミッドサマー』の感想を書いてみたいと思います。
(2019年公開 上映時間/2時間27分 監督/アリ・アスター)
ストーリー
深い心的外傷を抱えている大学生のダニー(フローレンス・ピュー)、恋人のクリス、その仲間たち5人は、交換留学生であるペレの故郷スウェーデンの人里離れた村を訪れる。
90年ごとに9日間の浄化の儀式が行われる、夏至(ミッドサマー)の祝祭に参加するために。
彼らは、美しい花々が咲き乱れる「ホルガ村」で、優しく穏やかな村人たちから歓待を受けるのだが...
ビョルン・アンドレセン
ご存じの方も多いと思いますが、本作にはあの『ベニスに死す』(1971)のビョルン・アンドレセンが出演しています。
世界一有名な美少年タジオの彼です。本作は村の老人役で出演されています。
何の説明もありませんが「こんなおじいちゃんだけど、昔は美少年だったんだよね」と思わせる気品さが画面を通して感じさせられます。
ポルガ村という狭いコミュニティで育った彼の人生。美しかった少年が朽ちていく、若さと老いのコントラスト。
そんな想像をすると『ベニスに死す』と相通じるテーマにも思えてきます。
素晴らしいキャスティングです!!
感想
映画として楽しめたかは分かりません。
正直、もっとスッキリ楽しめるホラー映画はいくらでもあると思います。
ただ、この映画全体に漂う、独特の不安感といったらありません。
美しい自然に囲まれた小さなコミュニティの薄気味悪さを存分に味わえます。
白い服装に身を包んだ村人たちはとても親切そうにみえますが、どうみてもカルト教団のそれです(学生の一人も言ってましたが)。
彼らの踊りや歌、風習がこってり行われるので、本作は話がなかなか進みません。
とはいえ、施設内に描かれた絵の数々を含め、その描写があまりに緻密で実際に存在しているかのような現実感があり、登場人物と共にカルト教団の体験取材しているような気持ちになってきます。
そして、中盤に突然訪れる大ショッキングシーン!!
長い前フリ、リアリティの積み重ねが、ここで最大限の効果を発揮します。スプラッター慣れしているはずですが、本当に衝撃でした。
このショックを体験するためだけに、本作は観る価値アリです。
後半はじわじわと救いが無くなっていきます。
ただ、映画自体はあくまで静かに事が進みます。ショットガン持って反撃するようなことはありません。
村人たちも特殊メイクやギミック無しに、カルト特有の気持ち悪さ全開となっていきます。
面白かったかと聞かれれば、「そういう映画じゃないんだわ、コレ」という感じ。
娯楽だけ求めるのなら、やはり本作の長さ、静けさはお呼びじゃない気がします。
既存のホラーやゾンビ、サメに飽き飽きしている方は、久方ぶりのショックを味わうことが出来るかと思います。
ただ、個人的にもう一度観たいとは思いませんが
満足度55点