10月30日の 「読売 俳壇」 に 掲載された 俳句の ご紹介です。

 

やっぱり 秋刀魚 (さんま) 細身でも 高値でも

 

春日井市 福代 法子

 

選者である 小澤 實さんの講評は

 

「秋刀魚が 不漁で、店頭に並ぶものは、細身で 高価なようだ。

 

それでも、秋刀魚を 買わざるをえない。

秋という季節を 味わいたいからだろう。

 

『やっぱり』 に 本音を感じる」。

 

 

いよいよ サンマの季節に なりました。

 

今年のものは 昨年と同様 不漁で、身体も 痩せているようですが、それでも筆者は 10回 近くは 食べています。

 

出始めた時期は 家で 生さんまを 焼いていましたが、このところ、スーパーの総菜売り場で、焼いたものを買っています。

 

一匹 300円くらいの価格です。

 

こちらの方が、手間が かからないので重宝しています。

 

焼いたものが 一匹ずつ、発泡スチロールのトレーに パック詰め されていますが、少しでも 大きいのをと、この時ほど真剣に選ぶ場面は ありません(笑)

 

 

ところで、東海林 さだおさん の エッセイ集 「サクランボの丸かじり」 に 「 え ? サンマを いっぺんに 二匹 ?」 と いう 一編が載っていました。

 

 

今回は それを ご紹介します。

 

―― 以下は 一部引用 ――

 

「 『サンマ塩焼き』 と 聞いて、あなたは どういう想像をしますか ?

 

『こう、横に長い皿の上に、サンマが一匹、こう、横たわっていて、焼きたて だったら、こう、お腹のあたりに 脂がプチプチ はねていて、皿の隅のところに、こう、大根おろしが ちょこっと 添えてあって』

と、『こう』 の たびに 両手の親指と 人差し指を、こう、横に長い皿の形にしながら 説明すると思う」。

 

「皿の上に サンマが一匹。

 

皿の上に サンマが二匹、という発想をする人は まずいない。

 

サンマは やっぱり 一匹なんだなぁ

二匹だと 多いんだなぁ

 

と、相田みつを さん なら あの筆致でそう書いて、左の下のところに 『みつを』 と いうハンコを押すと思う。

 

それを読んだ多くの人は、

『そのとおりなんだなァ』

と 大きく うなずく、というのが 日本の目下の サンマ塩焼き状況、ということになる。

 

ところが ある朝、いつものように朝刊を広げると、一枚の 折り込みのチラシが ハラリと落ちた。

 

そのチラシは かなり大きく 新聞一頁の半分の大きさ。

 

そこに サンマが二匹、並んで大きく 写っている。

 

週刊誌だと、二人並んで 大きく写っていたりすると 大変な騒ぎになるが、サンマが二匹の場合は 大丈夫なはずなのだが、そこに書かれた文言を読んだ ぼくは、

『これは大変なことになったぞ』

と思った。

 

その文言は、大綱を要約すると、

『 ちゃんとごはんの 大戸屋です。

このたび “生さんま定食” というのを 期間限定で 発売することになりました 』

といった内容で、ここまでは 特に 問題はない。

 

問題は 次の一項です。

 

『 根室・花咲港 水揚げの 生さんまを 丁寧に焼き上げました。

 

一尾の定食と、ボリュームたっぷりの 二尾の定食が ございます。

どうぞ ご賞味ください 』。

 

さりげなく 『二尾の』 と 書いてある。

 

これまで 日本人の誰もが、みつをさんで さえ 想像だに しなかった 『二尾』 が、さり気なく 表記されている。

 

本来なら

『本邦初の いっぺんに 二尾 !!』 とか

『サンマ史上、驚天動地の 二尾 !!』

とか、そのぐらい騒いでも 当然のことなのに、さすが 定食屋の王者 大戸屋、そのとき 少しも騒がず チラシの片隅に ひっそり。

 

人々の意表を突く 二匹 」。

 

「 チラシが ハラリと落ちたのが 8月31日。

 

( 筆者注記。 このエッセイが書かれたのは 2017年です )

 

大戸屋の 『 二尾定食 開始 』 が  9月1日。

 

大戸屋は 僕の仕事場から 歩いて5分のところにある。

 

スケジュール表と 照らし合わせて 決行は 9月7日 (大安) と 決める。

 

それからは 寝ても覚めても 『サンマを いっぺんに 二匹 』 が 頭から離れない。

 

『 いっぺんに 二匹 』 は ぼくにとって 衝撃の新事態なのだ 」。

 

「日本の 殿様史上、いっぺんに 二匹食べた人は いないのではないか。

 

落語の 『目黒のさんま 』 の 殿様だって、あのとき 多分 一匹 だったと思う。

 

贅沢が過ぎる、というのとも ちょっと違うし、多過ぎる、というのとも 違うし、じゃあ 嬉しくないのか、と言われれば 嬉しいし、たとえば ハンバーグ定食を頼んだら 一皿に ハンバーグが 二個並んで出てきたのと同じ心境か、と 問われれば、あ、それと同じです、と 答えたあと、やっぱり それとも違うな、と思うし 」。

 

「 あ、大事なことがあった。

 

一皿に 二匹 のせて出てくるのか、それとも 一皿に 一匹ずつ 二皿で 出てくるのか、その場合 大根おろしの量は どうなるのか。

 

一皿に 二匹の場合でも 大根おろしの量が 一匹分だと 損を することになる。

 

確かめに 行きました。

 

店の 入り口のところにある 実物写真を 腰をかがめて 見る。

 

一匹の場合と 二匹の場合の写真が 並べてある。

 

 

 

二匹の場合も 別皿ではなく 一皿に 二匹。

 

大根おろしも、二匹の皿の分量は一匹の分の 2倍。

 

二匹に 大小はあるか。

 

二匹とも 同じ大きさ。

 

討ち入りを前にした 赤穂の浪士のように、毎日 偵察を くり返して いよいよ討ち入りの 9月7日。

 

本懐を遂げようと 勇んで 駆けつけると、『 サンマ不漁につき 入荷がありません 』 の 張り紙が 入り口のところに。

 

そういえば テレビで、大戸屋では 当初の予定の大きさが獲れず、小ぶりのサンマなので 値下げする、などと 不吉なことを言っていたので、もしかしたら とは 思っていたのだが。

 

乞う、ご期待、捲土重来篇を 」。

 

―― 引用は以上 ――

 

この後、東海林さんは 2018年の 9月に、無事、「大戸屋の 生さんま 二尾定食 」 に トライして、その体験談を 「さんま 2匹 定食 」 と いうエッセイに まとめられています。

 

それにしても 「生さんま 2尾定食 」 を 発案された 大戸屋のスタッフの方。

 

スゴイ ですね !

 

とにかく 「焼き魚定食」 でも 「煮魚定食」 でも、「切り身を 2つ 付ける」 という発想は、まず 浮かびません。

 

ましてや 尾頭付きのサンマを 2尾、ですからね。

 

筆者は 大いに 感心したのです(笑)

 

それで 東海林さんの 「サンマ2匹」 エッセイが 書かれたのは 2017年と 2018年なのですが、「では 今年の大戸屋に、このメニューが あるのかな」 と 気になり、早速 ホームページを開いてみました。

 

すると、そこに 「生さんま定食」 に ついて、このような記事が 載っていたのです――

 

「 販売に関しまして ( 10月10日時点 )

 

現在 漁獲域の時化により、さんまの収穫が 遅れております。


販売を楽しみに お待ちいただいている中、大変恐縮ですが もう しばらく お待ちいただけますと幸いです。

 

販売日が 確定しましたら、こちらにて 公開させていただきます。
 

『生さんまの炭火焼き』 は 2023年10月中旬頃より 販売予定です」。

 

続けて 10月12日には このような記事が ――

 

「 販売のお知らせ  ( 10月12日 )

 

10/14 (土) 大戸屋ごはん処 全店にて 「 生さんま 炭火焼き定食 」 の 販売が決定いたしました。

1尾 : 定食 1,100円(税込み)/ 単品 1,010円(税込み)


2尾 : 定食 1,500円(税込み)/ 単品 1,410円(税込み)
 

※ 一部店舗では直火となります。
 

また、14日(土)限定で ご利用いただけます 「生さんま 炭火焼き定食」 30円引の アプリクーポンを配信させていただきます。

漁獲域の時化により 仕入れが不安定なため、各店 数量限定となること ご了承のほど 宜しくお願い申し上げます」。

 

 

ところで、大戸屋の最新のホームページにはこうありました――

 

「入荷状況のお知らせ ( 10月30日 )

 

販売は 10月31日までを 予定しておりましたが、30日 (月) が 最終販売日となります。


天候不漁により 入荷が不安定な状況が続き、販売数が限られてしまい、楽しみに お待ちくださったにも関わらず、召し上がれなかったお客様には 心から お詫び申し上げます」。

 

 

ーー どうやら このメニュー、今年は もう、食べることができないようです。

 

でも まあ、筆者の家の近所には 大戸屋は ないし……。

 

こうなったら、スーパーの総菜売り場で、焼いたサンマを 2匹 買ってきて、「 2尾食い 」 の 贅沢感を味わってみることに しましょうか(笑)

 

〔 了 〕