筆者は 卵料理の中では、目玉焼きが一番好きだ。

 

自分でもよく作る。

 

卵を1個、小鉢に割り入れ、油をひいて熱したフライパンに入れる。

 

白身が生なのは 好みではないので、 「両面焼き」 にする。

 

 

いきなり余談なのだが……(笑)

 

筆者は卵一つ分を作ればいいが、お子さんのいる家庭では、

そうも いくまい。

 

――今日の朝食は、トーストに目玉焼き。

 

お母さんが冷蔵庫から卵を取り出し、支度にかかる。

 

そこに長男―食べ盛りの男子高生(笑)―からのリクエストが入る。

 

「お母さん! ぼく、目玉焼き、2個ね!

本当は3個でも 4個でも食べられるけど、今日は 2個でいいや!」

 

それを聞いていた 負けず嫌いの次男が、

「お母さん! ぼくも2個にして!」(笑)

 

夫君と長女、それから自分の分は それぞれ卵一つとしても、

これだと都合、七つの目玉焼きを作らなければならない。

 

それも 「両面焼き」 にすると、結構な手間となる。

 

余計なお世話なのだけど、朝の慌ただしいときに、 7個分の

目玉焼きを作るのは 大変だと思うのですが……(笑)

 

 

話戻って……

 

目玉焼きの片面を焼き終えてから、プラスチックのフライ返しを

差し入れ、そっと持ち上げて、ひっくり返す。

 

このとき、何かの拍子で 黄身を突き破ることがある。

 

流れ出た黄身はフライパンの熱で固まってしまう。

 

……筆者は目玉焼きの黄身は、できるだけ柔らかく、生に近い方が

好きだ。

 

あの トロトロ具合が おいしいのだ(笑)

 

だから、この最終工程でのミスは、とても悔しい(笑)

 

 

――こうして出来上がった目玉焼きを、どの調味料で食べるか?

 

しょう油 ・ ウスターソース ・ マヨネーズ ・ 塩コショウ……

 

人それぞれの好みがあるが、筆者はマヨネーズを愛用している。

 

そして、いざ、食べようとするとき、筆者は少し戸惑う。

 

あれほどまでに 「黄身を崩さないよう」 細心の注意を払ってきたわけ

だが、食べる段階では、これを崩さないわけには いかないようだ。

 

 

――伊丹十三さんの書いた 『女たちよ!』 という本に、「目玉焼きの

正しい食べ方」 という一編が載っている。

 

以下はその引用――。

 

「目玉焼きと言うのは、どうも食べにくい料理である。

 

正式にはどうやって食べるものなのか。

 

こうだ、という自信のある方に かつてお目にかかったことがない」。

 

「どう考えても正式ではなさそうな食べ方の第一に、白身から食べる

やり方がある。

 

まわりの白身を、どんどん切り取って食べてしまう。

 

最後に黄身だけが丸く残る。

 

こいつを、右手に持ちかえたフォークで、そろりそろりと口へ運ぶ。

 

これは見ている方がハラハラしてしまうし、第一、フォークを右手に

持ったりするところが、どうにも怪しげである」。

 

「それに黄身だけを大事そうに最後まで残しておくと、子供が

おいしいものを一番最後に食べる、という、あの感じになってしまう」。

 

「かといって 『おいしいものは、一番おなかの空いている最初に

食べるべきだ』 と、 目玉焼きを見るなり、皿に口を近づけて、

真ん中の黄身をペロリと吸い取る食べ方も邪道だ」。

 

「こんなことが、人前で許されるべきものではありません」(笑)

 

「となると、残る方法はただ一つ。大事な黄身を、涙を呑んで壊して

しまうやり方である。

 

流れ出した黄身を、いわばソースにして白身を食べる、というやり方

である。

 

食べ終わった皿が黄身だらけで、まことに見苦しく、つい、パンか

何かで きれいにふき取りたくなる。

 

実際問題として もったいない食べ方であって、やはり完全な方法では

ありますまい」。

 

(引用 終わり)

 

 

――「食べるときに流れ出した黄身を なんとかしたい!」

 

これは、筆者も激しく共感するテーマである(笑)

 

 

これへの見事な解決策を示してくれたのが 池田満寿夫さんだ。

 

氏は1980年代、サンケイ新聞の土曜版に 『男の手料理』 という

記事を連載した。

 

それをまとめた本が、中央公論社から出ている。

 

その第1回で取り上げられたのが 「コロンブスの卵丼」。

 

 

以下、一部を引用する――。

 

「『男の手料理』 という特別な料理法があるわけではないが、

簡単に定義すると、女の代わりに男がした料理ということになる」。

 

「それではあまりに味気がないので若干つけたすと、一般家庭では

料理は女がするものと相場が定まっている。

 

特に一般家庭と強調するのは、レストランや料亭の料理は

ほとんどが男の料理人によってつくられているからである」。

 

(中略)

 

「家庭ということになると、妻なり母親なりが料理人になる」

 

「しかし、長い家族生活の中で、男も料理をせざるを得ない状況に

立ち入る場面が、しばしば生じてくる」。

 

「今流行の単身赴任とか、突然の妻の病気とか、妻に逃げられた

とか、何かの理由で一人 家に取り残されたとき、

男は外食をするか、自炊するかの選択にせまられるのである」。

 

(中略)

 

「一人だと昔はロールキャベツをつくり、二日間ぐらい食べたもの

だが、今はもう そんな面倒なことはしなくなった」。

 

「男の手料理、第1回目としては いささか簡単すぎて 開いた口が

ふさがらない料理を紹介する。

 

目玉焼き丼である。

 

オムレツはできなくても目玉焼きなら どんな男にもできる。

 

フライパンに卵を落とすだけでいいからだ。

 

最近は 油をひかなくてもすむフライパンさえできている。

 

ご飯は電気釜で炊く。

 

それを丼か皿に入れ、3個の目玉焼き (もちろん1個でも2個でも

いい。 何個冷蔵庫に残っているかによって決まる) をそのまま

上にのせ、しょう油かウスターソースか 好みによってぶっかける

だけでいいのである。

 

(私は特にウスターソースを推薦する。 しょう油ではあまりに芸が

なさすぎる)

 

最高に簡単な丼物ができあがる。

 

これを  “コロンブスの目玉焼き丼”  と称する」。

 

(引用終わり)

 

 

筆者の食べ方はこうだ――。

 

茶碗にご飯を7分目ほど盛り、両面を焼いた目玉焼き1個をのせる。

 

しょう油を少し回しかけ、黄身を突き崩して食べる。

 

――卵かけご飯の要領だ。

 

これだと何より、黄身が流れ出ても 気にすることはないので

安心していられる(笑)

 

筆者は、この丼を食べたいがために 目玉焼きをつくるのである(笑)