筆者はお酒が好きだ。

 

夕食を済ませ、風呂に入り、「さあ、あとは寝るだけだ!」という

態勢(?)を整えてから飲み始める。

 

撮り溜めしたテレビの録画を見ながら、ウイスキーなんかを飲む。

 

酔っぱらったら すぐに寝たいので、家飲みが多い。

居酒屋に出向くことは、ほとんど ない。

 

 

ところで4月16日の読売新聞に 『豆腐を前に安堵(あんど)する』

という記事が載った。

 

書いたのは太田和彦さん。

 

本業はグラフィック・デザイナーだが、「居酒屋を求めて日本中を

歩いている居酒屋探訪家」 でもあるそうだ(笑)

 

そこでは居酒屋のメニューについて語られていた。

 

(以下 引用)

 

「古い居酒屋によくある定番は 『豆腐』 だ。

冷奴 (ひややっこ) ではなく、昆布出汁 (だし) の大鍋に

温まっている温奴 (おんやっこ) 」。

 

「温かい一丁そのままに 辛子をぺたりと塗って、削り節と刻みねぎを

山盛りにしたのに、醤油をまわして いただく。

 

誰もが注文する品こそ、安くてうまくて食べ飽きなくて、すぐ出て

くる。それを前にいつもの安堵感に浸るのが居酒屋だ」。

 

(引用終わり)

 

 

『私の大好物』 (文春文庫ビジュアル版) という本がある。

1992年の刊行なので、相当古いものだ(笑)

 

内容は、「食べても食べても飽きないご飯もの」 とか、「手ごろで

気取らないから愛着が増す麺類やパン」 などに分類され、

有名人が それぞれの好物を披露している。

 

この本の 「素材そのままの味を生かした食べ物」 のジャンル(?)に

「豆腐」が載っている。

 

そして各界の著名人が、豆腐のおいしい店を紹介している。

 

その中の いくつかを抜粋すると……。

 

 

川本三郎(評論家):東京・荻窪 『東城豆腐店のもめんどうふ』

 

「豆腐というのは しょっちゅう食べるものでしょう。

身近なところに おいしい店があるのが、一番ですよ。

 

私は生活が朝型なので、天気のいい日には自転車に乗って

豆腐を一丁、買いに行きます。

 

女房は夜 仕事するので寝ているから、帰ってきたら、

自分ひとりのために朝食を作るんです。

 

半分は湯豆腐に、半分は味噌汁に。

夏でも湯豆腐はおいしいですよ。

昆布でダシを取って、ねぎとしょうがとカツオ節。

夏はミョウガですね。

 

それと納豆とお新香で、スポーツ新聞を読みながら食べる朝食。

私の最も幸せな時間です」。

 

 

磯村尚徳(元NHKキャスター) : 東京・赤坂 『伊勢幸食品の豆腐』

 

「豆腐は冷奴にかぎります。冷えた豆腐を口に含みますと、

あの豆腐の香りがほんのり漂ってまいります。

 

手作りのやんわりとした豆腐の上に、浅葱(あさつき)、

しょうが、鰹節をたっぷりのせていただく。

まこと、至高の酒の肴であります」。

 

 

立松和平(作家):福島県舘岩村 『泉屋豆腐店の田舎豆腐』

 

「泉屋さんの豆腐は、ものすごく固い豆腐なんですね。

頭ぶつけると怪我しそうな豆腐なんです。

 

店は、雪の中に閉ざされた山里にあるんですが、そういう

厳しい冬の豆腐ってのは、とてもおいしい。

 

やっぱり寒い時期は湯豆腐がいいですね」。

 

 

――どうも「豆腐好き」というと男性を、それも中高年のオジさんを、

想像してしまうのだが、案外、女性のファンも いるようだ。

 

 

池上季実子(女優):新潟県湯之谷村 『ゆのたにの銀山豆腐』

 

「家の近くのスーパーで、普通の3倍くらいの大きさの

1200円もする木綿豆腐を見つけた時は びっくり!

 

いただいてみると、このお豆腐には甘味とコクがあって、

豆腐特有のおから臭さが全然ないの。

 

お豆腐を味わうのは、断然、湯豆腐か冷奴です。

 

どちらかというと絹ごしより、木綿の方が好きですね。

舌ざわりに存在感があるような気がするからです」。

 

(引用終わり)

 

 

それから、「豆腐」 と言えば、筆者は 『美味しんぼ』 というマンガを

思い浮かべるのだが、ご存じだろうか?

 

1983年に 「ビッグコミック スピリッツ」 で連載を開始し、

まだ、最終回を迎えていない。

 

山岡士郎という新聞記者が主人公。

 

彼は、書家であり 「美食倶楽部」 という料亭の主宰である

海原雄山 (かいばらゆうざん) を父に持つ。

 

この親子は、山岡の母の死をもとに、互いに反目しあっている。

 

1996年に映画化されたが、山岡役を佐藤浩市、海原役を

その実父の三國連太郎が演じた。

 

この二人は実生活でも確執があったと言われ、制作当時、

話題になったそうだ。

 

 

物語は 「食」 をテーマに、それぞれが 「究極のメニュー」

「至高のメニュー」 を掲げての料理対決がメインだ。

 

その第1話が 『豆腐と水』。

 

こんな話だ――。

 

「究極のメニュー」 を作り上げる担当者を選任するため、

東西新聞文化部の社員全員が、昼食会の名目で料亭に招集される。

 

文化部部長 谷村秀夫 :

 

「そろったようだな。

  知ってのとおり今年、わが社は創立100周年を迎える。

  そこで これを記念する斬新な企画に関し、我が文化部に対して

  社主の 大原大蔵 翁 の特別命令が下った」

                                                         

文化部社員全員 : 「大原社主の!?」

 

谷村部長 :

「この記念企画にたずさわるものは、鋭敏な味覚の持ち主で

  なければならん!」

 

「今日、諸君に集まってもらったのは、それを試すためだ。

  もし私の眼鏡にかなう味覚の持ち主がいない場合は……

  この企画はやめにする。残念だがお流れだ」

 

文化部社員 : 「な、何ですか、社主じきじきの企画って」

 

谷村部長 : 「何をねらっておられるかは あとで話す」

                 「では 始める!」

 

文化部社員それぞれの前に、お膳が運ばれてくる。

 

その上には 「 イ ・ ロ ・ ハ 」 のラベルが付いた小鉢が 3つと、

「 A ・ B ・ C 」 のコップが 3つ乗っている。

 

文化部社員 : 「豆腐と水~~っ!?」

                    「これが試験…!?」

                    「驚いたわね」

 

谷村部長 : 「まず水から説明する」

 

「 3つのコップに入っているのは 水道の水、この店の井戸水、

  そして丹沢の山奥から汲んできた鉱泉水の3種類」

 

「次に豆腐だが、スーパーの豆腐、上野の有名な豆腐屋の豆腐、

  そして京都の有名な豆腐屋の豆腐の 3種類だ」

 

文化部社員 : 「ど…どれが どれかを当てろっていうんじゃ……!?」

 

谷村部長 :

「水と豆腐の味をしっかり見分けられたら、その味覚は大したものだ」

 

副部長 : 「さあ、始めて!」

             「この紙に ちゃんと判断の理由も添えて書いてくれ!」

 

社員が皆、困っている中、山岡は、小鉢に入った豆腐を一気に口に

放りこみ、さっさと食べ終えてしまう。

 

やがて採点となり……。

 

谷村部長 :

「うーむ。これも だめ、これも……」

「だめだ……だめだねえ。みんな外れだよ」

「ちょっと難しかったかな……」

 

この時点で答案を出していないのは、山岡と 新入女子社員の

栗田ゆう子。

 

副部長 : (栗田さんに向かって) 「早くしたまえ。君が最後だよ!」

 

山岡 : (栗田さんに) 「ああ、すまない。俺のも出してきてくれ」

 

そして、解答を読んだ部長は、

 

谷村部長 : 「おう! 正解だ!」

 

文化部社員 : 「本当ですか!?」

 

谷村部長 : 「栗田君! そして山岡君だ!」

 

文化部社員 : 「すっごい 栗田さん!」

                    「どんな味覚してんのよ!?」

 

谷村部長 :

「 B の水はカルキ臭いから水道水とわかったようだが、

  残りの二つをどう見分けたか、説明してやってくれたまえ」

 

栗田 :

「あの…… C のコップの水にほんの少し、塩分がまじっている

  ような風味を感じたんです。

 

  この辺りは昔、海の底だったし、今でも海に近いし……

  それでこの C の水が、この料亭の井戸水だと思ったんです」

 

文化部社員 : 「やる~~!」

                    「言われてみれば、しょっぱい気もするわねえ」

 

谷村部長 :

「そのとおりだ。

  山岡君の方はそのほかに、鉱泉水の中のカルシウムの味に

  ついても  言及している」

 

谷村部長 :

「豆腐の方は、栗田君は漠然とながら風味の違いを感じただけの

  ようだが……」

 

「山岡!  理由をみんなに説明してくれんか」

 

山岡: (面倒くさそうに、渋々と)

「……ワインと豆腐には旅させちゃいけない。

  そこに書いたとおりですよ」

 

谷村部長 : (厳しい表情で)  「山岡ッ !! 」

 

山岡 : (ふてくされたように)

「スーパーの豆腐は論外。

 

  ほかの二つは国産の大豆で いい水を使い、味も甲乙つけがたい。

  しかし豆腐は 作ってすぐに食べなければ 風味が落ちる。

 

  上野と京都の距離の差が出たんでしょう。

  京都の イ の豆腐は ほんのわずか、風味が落ちてる」

 

文化部社員 : 「驚いたぜ、こりゃあ……」

                    「あの山岡がねえ!」

 

谷村部長 : 「ピタリ正解とは……。やはり大したものだ」

 

――ここで大原社主が登場し、創立100周年を記念する特別企画

とは、「後世に残す文化遺産」 としての 「究極のメニュー」作りで

あることを明かす。

 

 

さて、最後に、豆腐について筆者が思うことは……。

 

男子高校生は、いつも おなかを空かせている。

一日中、 「腹減らし」 の状態にいると言ってもよい(笑)

 

そして、彼らのほとんどが 「肉好き」 である(笑)

「食べたいものは?」と聞くと、まず間違いなく 「肉!」 と答える。

 

アメブロでは、毎日のお弁当の記事を あげておられる方も多い。

 

どれも彩り豊かな野菜が配されているが、メインは やはり

肉料理のようだ。

 

「豆腐好きの青少年」 というのは少ないと思う(笑)

 

何しろ筆者は、今まで、こんな男子高生には出会ったことが

ないからだ……(笑)

 

「お母さん!  明日のお弁当は豆腐にしてね!

  なんなら一丁、丸ごと、入れてくれてもいいよ!

  水がもれないように、いつものタッパーで、ね!」

 

――まあ、とにかく、 「豆腐はオジさんの食べ物」 といっても、

あながち 間違いではないと思いますね(笑)