筆者は ごはんが好きだ。
そばやパンもおいしいが、やはり白い米の飯が一番である。
女性の中にも筆者同様 ごはんが好きで、「たとえダイエット中でも
白米は外したくない」とか、「ファミレスで定食を食べるときは、
ライスはいつも大盛りにする」 という人もいるそうだ。
そこで今回は、ごはんをよりおいしく食べるための 「おかず」 に
ついて書いてみる。
以下は東海林さだお著、『キャベツの丸かじり』 の中の一編、
「おかずは鮭か納豆か」 からの抜粋。
「熱々ホカホカ、粒立ってツヤツヤのゴハンに一番合うおかずは何か。
人はそれぞれに ”自分ならこれ“ というゴハンのおかずを持っている。
あなたなら何を第1位に推すか。
このテーマは、だれにとっても好ましい質問であるらしく、だれもが
嬉々として、たちまち 3つ 4つのおかずを挙げてくれる。
『なんてったってイクラ』 と言う人もいれば、『かんてったって辛子
明太子』 と言う人もいる。
『めじマグロに醤油をたっぷりかけて本わさびで』 と凝る人もいる。
しかし、どれか一つだけあなたにとってベストワンを、ということに
なると だれもが迷い始める。
急に苦悩の色を見せはじめる。
『納豆も食べたいし、海苔の佃煮も間にちょっと はさみたい。
あ、イカの塩からもはずしたくないな』 ということになって
表情は かなり深刻になる。
こうなるとキリがないので、条件を過酷にすることにしよう。
あなたは急に冒険旅行に出かける。
時代は急にシンドバッドの時代だ。
あなたがどこかの国で王様の不興を買い、急に死刑を宣告される。
死刑執行を前にして、何か食べたいものはないか、と王様は
たずねる。
日本人のあなたは、『白くて熱い炊きたてのゴハン』 と答える。
すると王様は、『おかずを1品だけ許す』 と言ってくれる。
さあ、あなたならどうする。なにしろ 1品だけである。
ぼくについていうならば、その 1品はすでに決めてある。
そうした場合にそなえて早々と決めてあるのだ」。
――以上、長々と引用しましたが、さて、東海林さんの 1品は何だと
思いますか?
「そうした場合」 にそなえて ( 「どういう場合」 だ? 笑)、
「早々と決めてある」 ものだそうです(笑)
では、引用を続けます。
「それは生卵である。これが とにもかくにも第1位。
『特別に もう 1品 許可』 ということになれば、うんと塩からい塩鮭の
おなかのところ (皮つき)。
『エーイ、もう 1品おまけじゃ』 と言われれば、納豆を挙げる。
『もう1品、言うだけ言うてみい』 ということになると、このあたり
から迷いが生じる。
イカの塩からを挙げるか、メザシにするのか、明太子だって決して
わるいわけではないし、イクラがいけないという理由もない」。
(中略)
「ここで一応整理すると、1位 生卵、2位 塩鮭、3位 納豆、
4位 メザシ ということになる」。
「 1位の生卵を意外に思う人は多いと思う。
このことを人に言うと馬鹿にされるので、これまでひた隠しにして
きたのだが、この際思いきって言ってしまうと、ぼくは “世の中で
一番おいしいものを1つだけ挙げろ” と言われたら迷わず 『生卵』 と
答える人間なのである」。
「生卵はあまりに身近で、あまりに安価なために、人々は生卵の
おいしさに気づかないだけなのだ」。
「卵は早めに冷蔵庫から出しておき、室温にしておくと熱々のゴハンによくなじむ。
ゴハンに黄身と白身と醤油がまとわりつき、少し熱がまわったかな、
というところをハフハフとかきこむ」。
(引用 終わり)
――ここまで読んだだけでも、著者の 「卵かけゴハン」 への愛情が、
ひしひしと伝わってくる(笑)
それから東海林さんは、「生卵かけゴハンの恍惚」 ( 『ブタの丸かじり』
所載) というエッセイも書いている。
そこでは 「卵を黄身と白身に分けて、 “黄身だけ かけゴハン” と、
“白身だけ かけゴハン” を食べてみる」 という試みがなされている。
では、その感想は―― (以下は引用)
「とりあえず、黄身のほうから行ってみましょうか。
“黄身だけ かけゴハン” は、びっくりするほど粘りが出る。
ゴハンが熱いので、口の中がネットリ、ほっこり」。
「ここで、ふと思いついた。 ここにバターを加えたらどうか。
急いでバターを溶かして残りのゴハンに加えてみる。
相当しつこいが、相当おいしい」。
「黄身のコクと、ゴハンの甘味と、バターの香りと、醤油の味と
心地よい粘りとで陶然となり、やめられませんな、の心境になる。
これはもう、ほとんど洋食の世界だ」。
「 “白身だけ かけゴハン” のほうはどうか」。
「これが意外によかった。
ゆるゆるとして淡淡。
悠悠として飄然。
かすかな卵の香りの中から、醤油の味が画然と浮き出てくる」。
「ラーメンでたとえると、塩ラーメンの味わい。
ゴハンでたとえると、お茶漬けの感触」。
「醤油かけゴハンというものを久しく食べていないが、あの醤油かけ
ゴハンを薄い卵の味で割った、というような味わい。
こっちは完全な和食の世界だ」。
(引用 終わり)
筆者も卵かけご飯が好きだ。
でも、白身の中にある 「トロトロしたところ」 が少々苦手なのだ。
それに、ご飯にかけると米粒とまざらずに、ともすれば表面を伝って
茶碗から流れ出てしまう。
「よそったご飯のまん中に、箸で窪みをつくればいいんだよ」 とか、
「小鉢で混ぜる時に、そのトロトロのところを箸でつまんで持ち上げ、
切るようにすると、ほぐれるよ」 と聞いたが、なんだか面倒だ (笑)
ところで、丸元淑生 (まるもとよしお) さんの書いた 『新家庭料理』
という本に、「ポーチド・エッグは卵料理の王者」 という一文がある。
そこでは、まず、卵の持つ栄養素について説明している。
「蛋白(たんぱく) 源としては、全食品のなかで最も優れている」。
食べ方については、
「熱を加えずに、生で食べるのが消化には一番いい」 のだが、
「白身にふくまれているアビジンという物質が、ビタミンB の一部を
損失」 するそうだ。
また、「アビジンは 80度でこわれるが、それは白身が固まる温度」
だそうだ。
そこで黄身は生に近い状態で、また白身は 「液体ではなくなる」 状態
にする調理法が最善だが、それが 「ポーチド・エッグ」 である。
――この本に載っていた作り方を紹介する。
1.鍋に深さ 3センチまで水を入れ、沸騰させる。
深さ 3センチがポイント。これ以上深いと自分の重みでくずれる。
2.泡が静かに立つ状態にまで火を弱めて、器に割っておいた卵を
入れる。
直接卵を割り入れないこと。
3.卵を入れたら火を止めてふたをする。
4.そのまま 2分間ほど待って、そっと取り出す。
筆者はこれを温かいご飯にのせて黄身を突き崩し、醤油をたらして
食べるのが好きだ。
黄身は温められることで そのコクを増し、白身は柔らかく固まる
ことで、ご飯をお粥のように ゆるくすることはない。
生卵をかけるよりも、こちらの方がおいしいと思う。