まずは、3月19日の 「 読売歌壇 」に 掲載された 短歌のご紹介です。

 

あっぱれや 「 穿いています 」の 決めポーズ

裸になれぬ 社会が 嗤( わら )う

加茂市 志田とみ子

 

【 黒瀬 珂瀾 選・評 】

 

今や 国際的な人気を誇る、とにかく明るい 安村さん の パンツ芸だろう。

最初は僕も やや 苦笑したが、一本通して やり続けることの力を教えられた。

先入観の愚かさを思う。

 

すでに ご存知の方には 蛇足に なりますが、「 評 」 に ある 「 とにかく明るい 安村 」 さんは、お笑い芸人です。

 

パンツ 一丁 で舞台に立ち、「 ハーイ 」 という 掛け声と ともに、全裸に見えるポーズを とります。

 

その後で 語りかける 「 決めゼリフ」 が これ――

 

「 安心してください。

穿 ( は ) いて ますよ 」(笑)

 

この ネタは 2015年に 初披露されましたが、この言葉もその年の 「 新語・流行語 大賞 」 を 受賞したそうです。

 

それで このところ、安村さん を テレビでは お見かけしなかったのですが、それが 何と、2023年4月、イギリスの オーディション番組 『  ブリテンズ・ゴット・タレント  』 に 出演し、英語で この 裸ネタを 披露したそうです。

 

その時の 動画がこれ――

 

 

ここでは あの決めゼリフを、英語で こう述べています――

 

「 Don‘t worry,

I’m wearing ! 」

( ドント  ウワーリィ、アイム ウエアリング )

 

何でも この 英語版、安村さんが 作ったそうです。

 

ただし、「 自分は 英語は まったく ダメです 」 と 謙遜されているようですが…… 

 

まあ、いわゆる 「 直訳 」 なのですが、それが 英語を母国語とする イギリス人たちに 大ウケしたのは こんな理由が あるからだそうです。

 

以下、読売 KODOMO新聞 5月4日号に 掲載された 記事の 引用です。

 

ところで 以前、小生のブログで、古語の 「 係り結び 」 を 取り上げて、読者の皆さんを 「 引かせて 」 しまったことがあります(笑)

 

今回も それに懲りず、英文法 なんかを 持ち出してきますので、心して お読みください(笑)

 

 

動きを表す 単語のことを 動詞 と 言います。

 

英語の場合、「 走る 」 ( run ) など、動詞 1つだけで成立する 「 自動詞 」 と、「 飲む 」 ( drink ) の ように、動詞の 直後に 「  ~を  」 に あたる 名詞などの 目的語がないと 成立しない 「 他動詞 」 が あります。

 

例えば  自動詞の場合は  “ I run ”  ( 私は 走る ) の ように その語だけで 完結しますが、他動詞の場合  “ I drink a Coffee”  ( 私は コーヒーを飲む ) の ように  「 何を 」 に あたる語 ( 目的語 ) が ないと 文章として 成立しません。

 

英語を話す人にとって、他動詞の 後に 目的語が ないと  「 え ? 何を ? 」 と ムズムズ します。  

 

ところで  “ wear ”  ( 着る ) は 他動詞です。

 

安村さんが  「 I’m wearing.」 と、目的語を 尻切れトンボに したので、審査員は 思わず 「 PANTS ! 」 と 応じて しまったようです。

 

 安村さんの芸が 面白かったのは もちろんですが、審査員との この掛け合いが あったことで、会場は 一気に 盛り上がりました。

 

ちょうど コンサートで、歌手が 客席に向かって 呼びかけると、観客たちが それに 応えるという 「 コール & レスポンス 」 の 形を 成していたのです。

 

〔 了 〕