【新日本ファクトチェックセンター】
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今回は前回に引き続き、米国・トランプ関連の政治の動向について考察したい。



■米国大統領選関連の動向について

今回は以下の記事をチェックしたい。

バイデン大統領の訴追見送り 「記憶力の乏しい高齢者」 トランプ氏 出馬容認可能性高まる

 

>“バイデン氏はいつ副大統領だったか覚えておらず、2015年に亡くなった子どもの命日を覚えていなかった”などとして、「記憶力に著しい限界があるように思われた」と指摘し、訴追を見送ったことを明らかにした。

>トランプ氏に大統領選の立候補資格があるのかを問う裁判が8日、連邦最高裁判所で開かれた。

>判事からは、資格をはく奪する動きに対し懐疑的な発言が相次いだことから、出馬を容認する可能性が高まっている。


翔子「これはどういう話なのでしょうか?」

ざっくり言えば以下の2点について述べたニュースである。

①バイデン大統領の機密文書持ち出しに関する問題で、本件の特別検察官が「バイデンの記憶力欠如」を理由に?訴追を見送った

②トランプの大統領選(予備選)出馬資格についての口頭弁論で、資格剥奪に懐疑的な意見が相次いだ


具体的に見ていこう。



■①バイデン大統領の機密文書持ち出し問題

上記記事の通り、結論としては「バイデンは本件で訴追見送り」となった。この件ではバイデンは起訴されないということ。

その点自体は当然ながら「バイデン陣営にとって歓迎すべきニュース」のはずで。

しかしその「訴追見送りの理由」として言及された「(バイデン氏は)記憶力に著しい限界があるように思われた」との指摘が、全米で大きな波紋を呼んでいる。

真琴「サンライトイエローオーバードライブ」

で、その波紋の広がりに対してバイデン陣営が猛烈に反発して噛み付いた、という流れになっている。

バイデン氏衰えを指摘した報告書にハリス米副大統領が反発「政治的動機に基づく」

 

>ハリス副大統領(59)は9日、バイデン氏の記憶力の衰えを指摘したハー特別検察官の報告書について「明らかに政治的動機に基づいている」と反発した。ワシントンで記者団に述べた。訴追は見送られたが、バイデン政権は波紋の広がりに神経をとがらせている。

>報告書を「根拠がなく、不正確だ」と批判。

翔子「ハリス副大統領は『明らかに政治的動機に基づいている』とまで断言しちゃったのですね。それは実際どうなのでしょうか?」

このハリスの表現からすれば、「ハー特別検察官は実質的にトランプ陣営とグルであり、バイデンを陥れる政治的意図によって根拠のないデマを撒き散らしている!」的なニュアンスで非難している、と考えて良さそうである。

わりと「展開次第では今後の戦局を大きく左右しかねない」重要な話っぽいので、きちんと考察してみよう。



■「バイデン氏の記憶力の衰え」は果たして「根拠のないデマ」なのか?

まずはこの点だが。

バイデン大統領の最近の「失言」「言い間違い」「痴呆老人的な言動」の多さは、改めて指摘するまでもない「客観的事実」ではないだろうか?

「バイデン 失言」「バイデン 記憶力低下」とか日本語で検索しただけでも該当する事例は山程ヒットする訳で。

公式の場での失言や痴呆老人的な言動も多く、動画などで証拠も多数残っており必要なら証人も大勢いるだろう。

真琴「観衆の前での失言も多いですしね」

そうした類の指摘を「明らかに政治的動機に基づいている!」などと言って陰謀論的なレッテルを貼って否定しようとするハリスらの主張は「かなり無理筋」のやり方に見える。



■ハー特別検察官に不純な政治的動機があった、という話は果たして本当なのか?

続いてこの点について。

本件でバイデンの記憶力の衰えを指摘した特別検察官は、「ロバート・ハー特別検察官」である。

で、本件でこのロバート・ハー特別検察官を任命したのは誰か? という点が、以下のニュースで示されている。


米司法長官、特別検察官を任命 バイデン氏の機密文書問題巡り
ロイター通信 2023年1月13日

 

>ガーランド米司法長官は12日、バイデン米大統領の自宅や事務所から副大統領時代の機密文書が見つかった問題を調査するため、メリーランド州のロバート・ハー元連邦検事を特別検察官に任命すると発表した。


翔子「約1年前に任命されていますね」


米国の司法長官というのは、連邦最高裁などの「司法」の人間ではなく、あくまでバイデン大統領に任命された閣僚の一人である。日本で言えば「法務大臣」に該当する存在、と考えていい。

つまりバイデン大統領が任命したガーランド司法長官(バイデン政権の閣僚)、が本件で任命した特別検察官がこのロバート・ハー特別検察官である。

常識で考えれば、そんな人間が「トランプ陣営とグル」だったり、「バイデンを陥れる政治的意図によって根拠のないデマを撒き散らす」可能性が高いとは到底思えない訳で。

もしどうしてもそんな主張をしたいならば、ハリスらバイデン陣営こそがそれこそ「確たる根拠」を示す必要があるだろう。たとえば「ハー特別検察官がトランプ陣営から巨額の賄賂を受け取っていた証拠」みたいな類の。

しかし現時点までにバイデン陣営側からそうした根拠は何一つ提示されていない。

少なくともこれまでに出ている情報から客観的に判断する限り、むしろハリスらバイデン陣営こそが「図星を突かれて逆ギレし、根拠もなくハー特別検察官を誹謗中傷している」というのが本件の実態ではないだろうか。



■結論:本件に関するバイデン陣営の対応は酷く大人げない

「裸の王様」という話をご存知だろうか?

アンデルセンの寓話の中でもかなり有名な、代表作の一つである。

あらすじについてはググればわかるので割愛するが、そのクライマックスのシーンで、一人の子供が「王様は裸だ!何にも着てないよ!」と叫ぶ。

これは別にその子供に「王様を貶めよう」みたいな悪意・政治的イデオロギーがあった訳ではなく、ただ自分の見た通りの事実を素直に口に出しただけである。

しかし大臣や家来・大人達は子供の叫びを無視して、王様のパレードはそのまま続けられた…

ラストの展開は数パターンあるようだが、仮に大臣や家来達が「王様は裸だと叫んだ子供」を厳しく叱責し、「嘘つきの子供!」「デマを撒き散らした!」などと決めつけて口を封じようとしたり厳しく罰しようとしたのであれば。「正しいのはどちらか?」は傍から見れば自明であろう。


ワイはこの「ハー特別検察官」を巡る本件で、この寓話を連想したのである。

バイデン政権の司法長官に任命されたハー特別検察官も、別に本件で「バイデンを貶めよう」みたいな悪意があった訳ではないだろう。ただ捜査の過程で知り得た事実を素直に口に出しただけではないだろうか。

それに対し、ロクな根拠も示さず「明らかに政治的動機に基づいている!」「根拠がなく、不正確だ!」と逆ギレし猛反発するハリスらバイデン陣営。

本件で「バイデン陣営の対応は酷く大人げない」と考えるのは果たしてワイだけだろうか?

バイデン陣営はあまりにも余裕がなさ過ぎるというか、子供じみた反応だろう。率直に言って「むしろ逆効果」としか思えない。


ま、トランプ陣営も、「反トランプ」の姿勢鮮明でトランプを追及しているジャック・スミス特別検察官を「明らかに政治的動機に基づいている」的に猛批判したりはしているのだが、それと比べても今回のバイデン陣営の対応は「トランプと同レベル以下」の酷くお粗末な反応に見える。

米国民主党のこんな子供じみた反応を、見たくはなかった。


他の民主党支持者がほぼ誰も言わないから敢えてワイが言うが、さすがにもうバイデンは限界じゃね?

米国民主党はいいかげん「指名候補の再考」を真面目に検討すべきだろう。

翔子「センター長は米国民主党を見限って共和党支持になったりはしないのですか?」

うーん。最近の共和党支持者の「プーチン&ロシアをやたら美化絶賛」する連中の多さにも正直辟易しているので、今のところはそれもないかなぁ。無論、個別のテーマ単位では支持したりはあるが。


尚、「急進左派」の候補(オカシオ=コルテス等)は駄目やぞ。ワイは彼らを全く支持しないし、移民・治安政策の民意の変化等を見る限り、この手の「極左」はもう中道有権者の支持も得られないだろう。

あくまで「中道左派」寄りの民主党主流派的なスタンスの候補でないとトランプに勝つのは困難と見る。

メンバーチェンジは「今ならまだ間に合う」と考えるが、様子見している時間的余裕は既にほとんどないぞ。



■②トランプの大統領選(予備選)出馬資格についての口頭弁論

真琴「こっちの話についてはどうなのでしょうか?」

うむ。この出馬資格の件については「その113」でガッツリ考察済である。未読の方は参照されたい。

 

>今後の連邦最高裁の判断がどうなるかはまだ不明だが、常識的には十中八九「原告の訴えを退ける(トランプは予備選参加資格アリ)」の判決になるだろう、と考えられる。


本件の連邦最高裁の裁判はまだ途中であるが、途中経過についてはどのメディア記事でも「資格剥奪に懐疑的な意見が相次いだ」「トランプ氏に有利な判断か」「出馬資格維持か」みたいな内容ばかりであって。

「その113」でワイが予想した通り、本件は「原告の訴えを退ける(トランプは予備選参加資格アリ)」方向に大きく傾いているような情勢と考えられる。

翔子「ま、コレは最初から明らかに無理筋の訴訟でしたから、そりゃそうなりますよね」