【新日本ファクトチェックセンター】
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今回は前々回に引き続き、米国・トランプ関連の政治の動向について考察したい。



■米国の政局の動向について

内容的に「その110」「その112」「その113」に関連する話である。

 



まずは以下の記事を見てもらいたい。

米上院、緊急予算案を否決 ウクライナ支援再開できず
共同通信 2024/2/8(木)

 


真琴「これは、どういう話なんでしょうか?」

日本でも「補正予算を巡る与野党の攻防」というのは「いつものこと」だが、米国もその点は似たようなもので。

今回、米議会で与党民主党の提出した緊急予算案が否決され、成立の見通しが不透明になった。これはそういうニュース。


翔子「それが日本にどのような影響が?」

日本にというか、世界にとって結構大きな影響があり得る。


まず、この補正予算の主な内容は

①ウクライナ支援614億ドル
②イスラエル支援142億ドル、
③移民対策のための国境警備強化費136億ドル

みたいな感じ。他にもインド太平洋の対中抑止とか複数の項目があるが、メインは上記3つだろう。

特に「世界への影響が大きい」のは①のウクライナ支援で、もしこれが滞れば今のウクライナにとっては文字通り「死活問題」になりかねない。戦局に直結しかねない。

それはEU諸国にとっても「他人事ではいられない」、影響度MAXの問題だと言える。

真琴「では、この予算案は通すことこそが正義?」

ま、そのへんはなかなか微妙なところで。

イスラエル支援もウクライナ支援も「米国は一体いつまで巨額の支援を続けるのか?」という点を疑問視する声は米国民からもかなり挙がっている。

 

 

バイデン氏の演説、10回以上中断 ガザ情勢対応に抗議の叫びで

 


少なくとも「無条件の一方的な正義」と言えるような話ではないだろう。

なので①②についても国内に反対意見はかなりあるのが実情と言える。



■国境警備強化費について

そして最も共和党の反発を受けているのが③の国境警備強化費についてであって。

翔子「トランプも共和党も、国境警備強化をずっと訴えてきたはずなのに、今はその予算化に反対してるんですか?」

ま、問題は「中身」ということなのだろうな。

そもそもバイデン政権の移民政策・国境警備政策は傍から見ても明らかに迷走している。


たとえばメキシコ国境の壁について。
2020年の米大統領選時には「もう1フィートたりとも壁は作らない!」とドヤ顔で豪語し誓っていたバイデンは、しかし2023年になって一転豹変、新区間のメキシコ国境の壁を承認し進め始めている。


メキシコ国境の壁、バイデン氏が新区間の建設を承認 与野党から批判

>国境の壁の建設はトランプ前大統領(共和党)の看板政策で、民主党は猛反対していた。

>バイデン氏は2020年の米大統領選で、自分が大統領に当選した場合は、もう1フィートたりとも壁は作らないと誓っていた。


真琴「選挙前と言ってることが全然違う? まるで日本の民主党政権が消費税増税について180度豹変したみたいな?」


ま、一般論としては、結果的に政策が途中で変わる事自体は必ずしも「絶対悪」とは言えない。
意固地になって「誤った政策」に固執し続けるよりはなんぼかマシ、というケースは当然あり得るだろう。

翔子「【私の考えが間違っていた】と素直に非を認めて謝罪する、みたいな?」

トランプはバイデンに対して以前からそれ(謝罪)を強く求めている模様。

ま、別にバイデンが「トランプに対して」謝罪する必要があるとはワイはあまり思わんが、少なくとも有権者に対しては誠意を見せる必要はあるのではないか。

いずれにせよこれほどの「国民に誓った主要公約」を途中で大幅方針変更するなら、有権者に対して「変更の理由・変更後のビジョン・中長期的な修正計画」をきちんと描いて見せる・詳しく説明する必要は最低限あるだろう、と。

しかしバイデン政権はその努力を拒否して逃げ、ただ誤魔化し続けているような形になっている。
たとえばメキシコ国境の壁についても「バイデンはこの後最後までガッツリ壁を作るつもりなのか否か?」すらまだ曖昧でよくわからない感じであって。


今回の緊急予算案でも、枝葉末節の話ばかりで「バイデン政権は結局今後、どのような国境・移民対策のスタンスを取るのか?」は曖昧にボカされたまま。ビジョンがまるで見えない(誤魔化された?)五里霧中状態。


なので、この件は与野党双方から批判されているし、有権者からもバイデン政権への批判の度合いが特に大きいテーマになってしまっている。


トランプ氏の介入でウクライナ支援など否決 混迷の米議会

>米NBCの最新世論調査では、バイデン大統領とトランプ氏のどちらが国境・移民対策で優れているかとの問いにバイデン氏としたのは22%。57%がトランプ氏に軍配を上げた。


上記記事でも「民主党寄り」のメディアである米NBCの世論調査ですら「国境・移民対策」のテーマではトランプに軍配を上げる有権者の方が圧倒的に多いのが現状で。

真琴「有権者の民意は【このテーマについてはバイデンに非がある】という判断が圧倒的なのですね」

うむ。なので、謝罪要求?はともかく、「小手先の話で誤魔化すな!バイデン政権は今後の国境・移民対策をどうするのかの『全体ビジョン』をまず明示せよ!話はそれからだ!」みたいな共和党側の言い分については「正しい」側面も多分にあるような気はする。

翔子「バイデン陣営は己の非を認めたくないから誤魔化して逃げている?」



■本件でトランプを非難するバイデン陣営だが

で、バイデン陣営としては本件で緊急予算案に反対するトランプらに対し非難の声を強めている。
「責任をトランプに押し付けようとしている」という見方もあるだろう。

バイデン大統領がトランプ氏批判 ウクライナ支援含む予算案の審議進まず

 

>アメリカのバイデン大統領は、ウクライナ支援を盛り込んだ予算案の審議が進まないのはトランプ氏のせいだと批判しました。

真琴「共和党と民主党が、互いに『悪いのはお前らの側だ!』と批判し合っているような状況ですね」

翔子「結局、どっちが悪いんですか?」

まあ、そのへんは双方に言い分があるだろうし、なんとも言えん。「政局に利用している!」という批判については「それはお互い様」のようにも見える。

ただ、本件で「予算案の審議が進まないのはトランプ氏のせいだ!」というバイデン陣営の主張にはそもそも疑問符がつきそうな点があり。


この予算案だが、一番上の共同通信の記事を見ても。

「議会上院で緊急予算案を否決」とある。この「上院で」というところがミソで。

真琴「何故でしょうか?」

今の米国議会の議席状況は、下院は共和党側が過半数、上院は民主党側が過半数を握っている、いわゆる「捻じれ」状態にある。

ま、厳密に言えば「民主党系無所属」みたいな議員もいたりして若干わかりにくいが、基本は上記認識で今も合ってるはず。

翔子「ふむふむ」

なので、下院で否決されて「トランプのせいだ!」というのならまだわかるのだが、今回はまず上院の時点ですら否決されてしまっている訳で。

確か今の米国上院では2議席は「民主党系」の議席が上回っていたはず。

つまり、もし仮に「共和党の上院議員が全員反対」したとしても、民主党側がきちんと一致して当該予算案に賛成していれば、少なくとも上院は通せたはず?の予算ではないかと。

本件の具体的な採決結果についてはまだワイは確認できていないが、状況証拠から見る限り、上院の民主党側議員の中から、少なくとも2名以上は造反(予算案に反対)した議員がいた、ということではないか?


この仮説が正しい場合は、つまり「トランプがどうこう」以前に、そもそも「民主党側の議員からすら反対(造反)された(内ゲバ?)」のが今回の予算案否決の根本原因なのでは? とワイは考える訳だ。

真琴「あらら。確かにそう言われればそうですね。トランプ関係ないじゃん?」

予備選などでは「圧倒的な支持率?」を見せつけ一見、「党内を完全掌握」している?ようにも見えなくもないバイデンではあるが、あるいは意外と内実は「それとは全く違う状況」だったりするのかもしれん。

翔子「いずれにしても、状況は混迷さを増すばかりですねぇ」