「オレンジジュース・テスト」は、『コンサルタントの秘密』という本に出てくるエピソードです。
できる限り簡単に紹介します。

あなたは「出席者700名の営業部員年次大会」のために会場を選ぶという仕事を任されました。
あなたは、会場候補のホテルの宴会主任にこのように言います。「うちの社の創始者は、営業部のミーティングに関して一つの神聖な伝統を打ち立てた。それは毎朝営業部朝会の最初に、成功を祈ってオレンジジュースで乾杯をするというものだ。この朝食会は午前7時ジャストに、この乾杯で始まらなければならない」
あなたは続けます。「700人全員にしぼりたてのオレンジジュースを大きなグラスで出さなければならない」「少なくとも普通の水飲み用のコップと同じ大きさで」「オレンジをしぼってから出すまでに2時間以内で」

今風に言えば「ムチャぶり」もいいところですが。
ホテルの宴会主任がこのように言ってきたら落第です。「そんなことはできません」
ホテルの宴会主任がこのように言ってきても落第です。「お安いご用です」
落第しない答え方はこうなります。「それはできますよ。で、それにはこれだけかかります」

「できません」という答えが落第であることは、よいとして、「できます(お安いご用です)」はなぜ落第になるのでしょうか。
そのように答えた宴会主任(単数でも複数でも)は、大口の客がほしいばかりにウソをついているかもしれません。または、この仕事の難しさを理解しないで、できもしないのに安請け合いしてるかもしれません。いずれにしても、契約後にあなたは後悔することになるでしょう。

午前7時までに700人分のオレンジジュースを用意するために、午前5時から人を集めてしぼり始めるとすれば、それなりの費用(人件費、材料費、調理器具)がかかります。宴会主任はそれを示せばいいのです。
その費用を出すか出さないかは「あなた」が判断することです。宴会主任が「あなた」に代わって決めることではありません。その費用(見積り)が妥当か否かはまた別の問題です。

あなたにしてみれば、いくら安い値段を提示されても、宴会主任(ホテル)が実際にオレンジジュースを用意できないのであれば、意味がありません。宴会主任(ホテル)があなたをだまして缶詰のジュースを出そうとしている場合も同じです。

これが「オレンジジュース・テスト」です。
いかがですか。役にたちそうなテストでしょ?
人に仕事を依頼するときにも、逆に、人から仕事を頼まれたときにも使えます。私の場合は、仕事を頼まれたときに思い出すことが多いです。

「私はこのテストを毎日利用している。何らかのサービスをしてもらいたいと思ったときには、私は相手に何をしてほしいかを告げる。相手はそれをするためにはいくらかかるかを告げる。そしてそれが私にとって値打ちがあるかどうかは私が決める」

『コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学』 共立出版 (1990/12)
著:G.M.ワインバーグ、訳:木村 泉

コンサルタントの秘密