モーシェ・フェルデンクライスは、1904年生まれのユダヤ人で、パリのソルボンヌ大学で物理学を学び、第二次世界大戦中は英国でソナー(海中で使う探知装置)の研究をしました。ヨーロッパで初めて柔道の黒帯を取得したひとりですが、膝を痛めてしまいました。その後、ヨガや生理学などを広範囲に研究して、独自の身体訓練法(フェルデンクライス・メソッド)を開発しました。

「鉄の棒を持ち上げているときには、ハエがその棒にとまっていても飛び去っても、そのちがいは感じとれないだろう。ところが一枚の羽を手にしているときには、ハエがとまっているかいないかのちがいは、はっきり感じとれる」

大きな力を出しているときは感覚が鈍くなる、ということです。
力を抜くということは、単に筋力の強弱を問題にしているのではなく、筋肉のセンサーを活用しなさいという意味です。

人間は生まれながらにもっている能力が、動物よりもはるかに少ないです。動物は生まれてすぐに歩けるようになりますが、生まれてすぐの人間は二足歩行できませんし、立てもしません。それどころか、誰もが生まれ落ちた瞬間に呼吸し始めるとは限りません。「ときには、赤ん坊が最初の息を吸いこむ前に、手荒な処置を講じなくてはならない」ことさえあります。

しかし、動物のような誕生前にできあがっている能力は変更がききません。人間は生まれた環境に適応することができます。
フェルデンクライスは、動物のもつ強い本能に代わるものが、人間の学習能力の大きさだと考えました。

↓本の紹介です。
フェルデンクライス身体訓練法

もうひとつ、お気に入りの言葉を。

「どんなことでもうまくやれた場合には、むずかしくは見えない。むずかしく見える動きは、正しく行われていないからだと言ってもさしつかえないだろう」