3章 鳥インフルウイルス:(1)パンデミックの元凶は「A型」

健康・医療 科学 2024.03.02

石 弘之 【Profile】

 

 

 

 

 

毎年、鳥インフルエンザが猛威を振います。

要因として渡り鳥がウィルスを持ち込んでいますが、

それを、より広く拡散しているのはカラスです。

 

一度、養鶏場内で感染するとすべての鶏を殺処分していますが、

それは事後処理で対策ではありません。

 

養鶏場に防鳥用ネットを張っても対策にはなりません。

唯一の恒久対策は養鶏場周辺にカラスを寄せ付けない事です。

 

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水鳥から派生した鳥インフルエンザウイルスは、変異を繰り返していくうちに

「A型」「B型」「C型」「D型」の4つの異なるタイプに分かれた。

中でも恐ろしいのが「A型」で、スペイン風邪やアジア風邪、

香港風邪や豚インフルなどの世界的大流行(パンデミック)を引き起こしてきた。

 

全ては水鳥を宿主とするウイルスから派生

第2章で紹介したスペイン風邪、毎年私たちを苦しめる季節性インフル、

これから触れる鳥インフル、豚ブタインフル(新型インフル)など、

全てのインフルエンザは鳥類の持つ1種類のウイルスから始まっている。

 

元をたどると、カモなどの水鳥に寄生するRNAウイルスだ。

シベリア、アラスカ、カナダなど北極圏の凍りついた湖や沼の中に

じっと潜み、春になって水鳥が繁殖のため戻ってくると、その体内に

入り込んで腸管内で複製・増殖を繰り返してきた。

 

鳥インフルエンザウイルスが感染する経路

渡り鳥は繁殖地と越冬地の間を移動する途中で、通過地点に

フンといっしょにウイルスをばらまいていく。

 

鶏舎の近くに落下したり、ウイルスに感染したカラスやネズミが鶏舎に

出入りしたりすれば、ニワトリなど家禽(かきん)に感染が広がることになる。

だから渡りの季節になると、養鶏関係者は気が気ではない。

 

これだけ広範囲に移動できる動物は、他にはコウモリぐらいしか見当たらない。

コウモリも新型コロナやエボラ出血熱など多くの病原性ウイルスを

保有することで悪名が高い。

 

鳥とコウモリは、ともに進化の途上で飛行能力を身につけ、森林、草地、

砂漠、水辺などさまざまな環境に適応して、多様な種に分化することで

勢力圏を拡大してきた。

 

両者はウイルスにとって最適の「乗り物」でもある。

鳥インフルウイルスは鳥類に特化していて、通常はヒトに感染することはない。

まれに感染することがあるが、乾燥した鶏フンを大量に吸い込むような

濃厚接触者などがほとんどだ。

 

水鳥はインフルウイルスとの長年の関係で共存関係ができているので

感染することはない。

ところが、後述するように、ニワトリなどの家禽やブタに感染すると

さまざまな変異を起こし、毒性を身につけてヒトにも感染するものが現れる。

 

特に高病原性(強毒性)のものは、地球上に存在するウイルスの中で

最も感染力が強いものの1つだ。

 

パンデミックを引き越す「A型」

水鳥から派生したインフルウイルスは、これまでにめまぐるしく

進化をつづけてきた。

そして変異を繰り返していくうちに、「A型」「B型」「C型」「D型」

の4つの異なるタイプに分かれた。

 

特に変異しやすい「A型」は、多くの亜型をつくりだしてきた。

ウイルスは、表面に2種類のとげ状の蛋白質(たんぱくしつ)である

「HA(ヘマグルチニン)」と「NA(ノイラミニダーゼ)」を持っている。

 

HAは宿主の細胞にウイルスが付着するときに使われ、NAはウイルスが

別の細胞に乗り移るときに必要だ。

HA、NAにはさまざまな亜型があって、それぞれ番号が付けられている。

 

HAは18種類(H1〜H18)、NAは11種類(N1〜N11)あり、

宿主となる動物の種類ごとにHA、NAのさまざまな亜型の組み合わせを持ち、

理論的には198通りの組み合わせが考えられる。

これまで主に野鳥から 130 を超えるA型インフルウイルスの亜型の

組み合わせが確認されている。

 

亜型によって感染しやすい動物の種類も異なる。

インフルウイルスは、陸上、水上、森林、空中とあらゆる生態系に

勢力を伸ばす。

 

野生動物だけでなく、その勢力範囲は家畜やペットにまで及ぶ。

鳥の持つウイルスが種間の壁をやすやすと越えて、これだけ宿主を

広げることができた理由はナゾだ。

 

野生生物・家畜・ペットに広がったインフルウイルス

インフルウイルスがややこしいのは、宿主によって「ヒトインフルウイルス」

「鳥インフルウイルス」「豚インフル(新型インフル)ウイルス」

と名前が変わり、同じ亜型でも毒性の違いによって「高病原性(強毒性)」と

「低病原性(低毒性)」に分けられることだ。

 

鳥インフルウイルスのほとんどは低病原性だが、A型の中にはパンデミックを

引き起こす「高病原性」を秘めるものもある。

 

20世紀以降、スペイン風邪を含めて5回起きたインフルのパンデミックは、

全てA型によるものだ。スペイン風邪(1914年)とソ連風邪(1977年)と

豚インフル(2009年)は「H1N1」。

 

アジア風邪(1957年)は「H2N2」。香港風邪(1968年)は「H3N2」だ。

いずれも、何の前触れもなく30~40年おきにわれわれを襲ってきた。

 

「A型」インフルウイルスの出現と流行の変遷

軽い症状ですむ「C型」「D型」

「A型」インフルウイルス以外も触れておこう。「B型」インフルウイルスは

ナゾが多い亜型だ。

 

HA、NAはそれぞれ1種類で、両者の組み合せによる亜型は自然界に

存在せず、宿主はヒト、ブタ、アザラシのみに限られる。

過去に採取されたアザラシのサンプルを調べると、1995年以前の

ものからは見つかっておらず、ヒトから感染した可能性が指摘されている。

 

「B型」インフルウイルスは、「A型」インフルウイルスの後を追うように

2月ごろから春先にかけて流行を引き起こすことが多い。

「A型」に比べて症状は軽いとされてきた。

 

しかし、成人を対象とした2015年の米国の研究では、双方の発病率と

死亡率はほとんど変わりがなかった。

 

さらに、16歳以下の子どもを対象としたカナダの研究では、「B型」に

よる感染は、「A型」よりも死亡リスクが高いという結果も出ている。

2024年2月頃から「B型」が台頭し始めている。

 

「A型」にかかった人でも「B型」に対する免疫がないので、

再びインフルエンザに苦しむ可能性もある。

 

ただし、「A型」に比べて「B型」の研究は大幅に遅れている。

「C型」インフルウイルスは、ブタやイヌへの感染例はあるものの、

感染するのはほぼヒトに限られる。「C型」も1つの亜型しか存在しない。

子ども、高齢者、基礎疾患患者など感染リスクの高い人びとに対しても

軽度の症状しか起こさない。

 

一度感染すると免疫ができ、ほとんどの子どもは、10歳までに

「C型」インフルウイルスに対する抗体ができて、ほぼ一生

かからないとされる。

 

「D型」インフルウイルスは2011 年に米国でブタやウシから分離された。

「ウシ呼吸器病症候群」(BRDC)の原因ともみられる。

 

しかし、英国の調査では、ウシと接触する職業のヒトの97.2%が「D型」

インフルウイルスの抗体に陰性を示し、感染しても症状がほとんどの

現れない「不顕(ふけん)性感染」だった。

 

侮れない季節性インフル

インフルエンザの中で私たちが最も耳にすることの多いのは、

「季節性インフル」だろう。

今シーズンは、過去3年間のマスク着用、手洗いなど新型コロナへの

予防措置の恩恵を被って、呼吸器系ウイルスの循環が減少したと考えられる。

 

この結果、呼吸器系ウイルス全般に対する免疫の低下・喪失によって

免疫の空白が生まれたことで、「季節性インフル」にかかる人が増えた。

季節性インフルには、A型インフルウイルスにB型の2系統を加えた

4種類のいずれかが関わっている。

 

中でもA型の「H1N1」はスペイン風邪やソ連風邪、豚インフルを

引き起こした過去があり、常に恐怖の対象だった。

しかし、現在では弱毒化して「低病原性」に変わり、2011年4月頃からは

「季節性インフル」の“一族”と見なされている。

 

日本では毎年約1000万人、約10人に1人が感染している。

季節性インフルは、過去に似たウイルスに感染していれば弱い

ながらも免疫が働くため、比較的軽い症状ですむ場合も多い。

 

といっても、侮れない存在だ。世界保健機関(WHO)によると、

世界の季節性インフルの患者数は新型コロナ以前には、年間 10 億人と推定され、

300~500万人が重症となり、死亡者数は世界で 65 万人に上るという。

死者の8~9割は75歳以上の高齢者だ。

 

日本では厚労省人口動態統計によると、近年の死者は年1~3万人程度で、

新型コロナ流行後は1000人以下に急減している。

 

毎年季節性インフルが発生するのは、A型インフルウイルスの亜型

「H3N2」が3~5年ごとに変異しワクチンの効果が薄れるためだ。

 

過去の感染やワクチン接種によってできた免疫を回避するために、

このウイルスは絶え間なく変異する。

季節性インフルの流行を防ぐには、ウイルスの変異に合わせて

ワクチンを更新する必要がある。

 

現在でもウイルスとワクチンは「トムとジェリー」さながらの

追い駆けっこが続いている。

 

新しい変異株がいつ出現するのかを予測することは、現代医学を

もってしても困難を極める。

 

北半球では、毎年2月に各国の専門家が9月〜1月における世界各地の

流行株のデータを持ち寄り、次のシーズンにどんなインフルウイルスが

流行するかを検討してワクチン株を選定する。

 

それでも、流行型とワクチンの型が一致しない「空振り」がよく起きる。

例えば、2014年から15年の冬にかけてのシーズンでは、米国製のワクチン株が

予想した流行株と異なっていたため、ワクチンの有効性は

23%しかなかった。

 

だが、効果が全くないわけではない。米国疾病対策センター(CDC)が

集計しているワクチンの効果分析によると、ワクチン接種によって

医師がインフルにかかるリスクが40%から60%も減ることが証明されている。

 

日本の国立療養所三重病院の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に

入所している高齢者について34〜55%の発病と、82%の死亡を阻止する

効果があったことが解明されている。