前回の記事で再保険について説明をしました。
ここで「リスクを世界に分散(再保険)しているなら、仕入れ値(リスクのコスト)はどこも同じようなものだし、保険料も横並びになりそうなのに……」と思いませんか?
実は、損保会社ごとに保険料が変わるのには、「再保険の買い方の違い」と「それ以外のコスト・戦略の違い」という、明確な裏事情があります。
■再保険の「買い方(条件)」が会社ごとに違う
再保険は、一律のパッケージ商品ではなく、損保会社と再保険会社の間で行われる完全なオーダーメイドの交渉(BtoBビジネス)です。
▼免責金額(自己負担額)の設定
「被害額の最初の50億円までは自社で払うので、それ以上の分を再保険でカバーしてください」という条件にするか、
「10億円からカバーしてください」にするかで、損保会社が再保険会社に支払う料金(再保険料)は大きく変わります。
自社の体力(内部留保)がある大手ほど自己負担を大きくできるため、再保険料を安く抑えられます。
▼保有する「元のリスク」の質
損保会社Aが「過去に災害が少ない頑丈なマンションの契約」を多く持っており、損保会社Bが「台風被害を受けやすい地域の木造一戸建ての契約」を多く持っていた場合、再保険会社から提示される料金はA社のほうが安くなります。
■そもそも「再保険に回す割合」が違う
損保会社は、預かった保険料(リスク)のすべてを再保険に出しているわけではありません。
自社で抱える分(保有)と、外に出す分(出再)のバランスを各社が戦略的に決めています。
▼大手損保
体力があるため、リスクの「7割〜8割」は自社の貯金(準備金)で抱え、本当にヤバい残りの2割〜3割だけを再保険に回す、といった調整ができます。
▼中小・新興損保
自社の体力が少ないため、リスクの多くを再保険に逃がさざるを得ず、結果として再保険会社へ支払うコストの割合が高くなることがあります。
この「どれだけ自社でリスクを抱え込めるか(=中抜きの割合)」の違いが、最終的な保険料の差になります。
■保険料の「中身」にある、もう一つの要素
私たちが支払う保険料は、純粋なリスクの代金(純保険料)だけでできているわけではありません。
実は以下のような内訳になっています。
全体の保険料=純保険料(災害時に充てるお金・再保険料含む)+ 付加保険料(会社の経費・利益)
この「付加保険料(会社の経費)」の部分が、損保会社のビジネスモデルによって劇的に異なります。
▼代理店型損保(東京海上、三井住友など)
全国に代理店ネットワークを持ち、手厚い人件費や店舗維持費、代理店への手数料がかかるため、
経費分が保険料に上乗せされます。
▼ダイレクト型(ネット型)損保(ソニー損保、SBI損保など)
ネットで直接契約を完結させるため、人件費や店舗コストを極限まで削っています。
そのため、付加保険料(経費)の枠が圧倒的に小さく、保険料を安く抑えられます。
■まとめ
再保険という共通のインフラをバックに使いつつも、「自社の体力に合わせて再保険をどうカスタマイズして契約しているか」、そして「会社を運営するための経費(ビジネスモデル)がどれくらい違うか」によって、最終的に私たちが目にする保険料には大きな差が生まれるのです。