■秘密証書遺言とは
遺言書の種類の一つで、その名の通り、遺言の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を公的に証明してもらう方式の遺言です。
公正証書遺言と自筆証書遺言の中間的な性質を持つと言えます。
■メリット
▼内容を秘密にできる
遺言者が亡くなるまで、遺言の内容を誰にも知られることなく、その存在を公証人に証明してもらえる点が最大のメリットです。
▼偽造・変造のリスクが低い
封印された状態で公証人の証明を受けるため、後日の偽造や変造のリスクを抑えることができます。
▼全文自筆の必要がない
パソコンや代筆でも作成できるため、手書きが苦手な方や、病気などで手が不自由な方でも作成しやすいです。
▼公正証書遺言より費用が安い
公正証書遺言に比べて、公証役場の手数料が定額(一般的に11,000円)で済むため、費用を抑えられます。
■デメリット
▼方式不備で無効となる可能性
公証人は遺言書の内容を確認しないため、遺言内容に法律的な不備があったり、要件を満たしていなかったりすると、
無効になる可能性があります。
▼家庭裁判所の検認が必要
相続発生後、家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。
これは、遺言書の存在や内容を確認し、偽造・変造を防ぐための手続きです。
▼紛失・隠匿・破棄のリスク
遺言書は遺言者自身が保管するため、紛失したり、相続人などに隠匿・破棄されたりするリスクがあります。
▼証人2名が必要
公正証書遺言と同様に、2名以上の証人を手配する必要があります。
▼後からの訂正が難しい
封印されているため、内容の訂正が容易ではありません。
■作成の流れ(一般的な例)
①遺言内容の作成
遺言者自身で遺言書を作成します(手書き、パソコン、代筆いずれでも可)。この際、遺言書に遺言者の署名と押印をします。
②封筒への封入・封印
作成した遺言書を封筒に入れ、遺言書に用いた印章と同じ印章で封印します。
③公証役場への提出
遺言者と証人2名以上が公証役場に出向き、封印された遺言書を公証人に提出します。
④申述
遺言者が、提出した封書が自分の遺言書である旨、および筆者の氏名と住所を公証人と証人の前で申述します。
⑤公証人の記載と署名・押印
公証人が、提出された日付と遺言者の申述内容を封筒(封紙)に記載し、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印します。
⑥遺言書の保管:
作成が完了した秘密証書遺言は、遺言者が持ち帰り、自身で保管します。
■注意点
自筆証書遺言の保管制度(法務局での保管)が始まり、
自筆証書遺言でも紛失や偽造のリスクが軽減され、かつ家庭裁判所の検認が不要になるなど、
秘密証書遺言のメリットが薄れてきているとの見方もあります。