■自筆証書遺言

遺言者が全文を自分で書き、署名し、押印することで作成する遺言書のことです。

民法によって厳格な要件が定められており、これらを満たしていないと無効になる可能性があります。

■自筆証書遺言の主な要件
▼全文の自書

遺言書の内容は、財産目録を除き、すべて遺言者本人が手書きで書く必要があります。

パソコンや代筆は認められません。
▼日付の自書

 作成年月日を正確に記載する必要があります。

「令和〇年〇月吉日」のような書き方では無効となる場合があります。
▼氏名の自書

遺言者本人の氏名を記載する必要があります。
▼押印

遺言者本人が押印する必要があります。

実印である必要はありませんが、指印は認められません。

■メリット
▼費用がかからない

公証役場での手続きが不要なため、作成費用は基本的にかかりません。
▼手軽に作成できる

自分のペースで、いつでもどこでも作成できます。
▼内容の変更が容易

書き直しや修正が比較的簡単に行えます。

■デメリット
▼方式不備のリスク

民法の要件を満たしていないと無効になる可能性があります。
▼紛失・隠匿のリスク

自宅で保管する場合、紛失したり、悪意のある人に隠されたりするリスクがあります。
▼検認が必要

家庭裁判所での検認手続きが必要です。

※検認とは、遺言書の存在と内容を相続人全員に知らせ、遺言書が偽造・変造されていないかをチェックする手続きです。

検認を経ないと、不動産の登記や預貯金の払い戻しなどができません。
▼内容が不明瞭になる可能性

法律の専門知識がないと、曖昧な表現や解釈が分かれる内容になり、相続トラブルの原因となる可能性があります。

■自筆証書遺言の保管制度
2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる自筆証書遺言書保管制度が始まりました。

この制度を利用すると、上記のデメリットの一部を解消できます。
▼保管場所の安心

法務局で保管されるため、紛失や隠匿のリスクが低減します。
▼検認が不要

法務局で保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要になります。
▼方式不備のリスク軽減

法務局に遺言書を提出する際に形式的なチェックが行われるため、方式不備による無効のリスクが軽減されます

(ただし、内容に関するアドバイスは受けられません)。

 

参照先:自筆証書遺言書保管制度 (法務局HPより)