友人の話。
一人で夏山を縦走していた時のこと。
真夜中、何かの物音に目を覚まされた。
ぽちゃん ぽちゃん
水音のようだ。
深そうな水溜りに、小石が落ちているような、そんな音。
「水場はかなり離れているのに、ここまで音が聞こえるものかな?」
寝惚けながら考えていると、音はいきなりガサッという乾いたものに変わった。
膝まである草を掻き分けているかのような、そんな音。
…何かがガサガサと草を踏みながら、このテントの周りを巡っている…
息を殺して様子を伺っている内、やがて音は遠ざかって行った。
そしてまた、ぽちゃんと水が跳ねる音に変化する。
唐突に音は聞こえなくなった。
夜が明けるまで、それ以上とても眠れなかったという。
明るくなってから、辺りを散策してみた。
テントから少し離れた窪みで、古い石組みの筒が見つかった。
「井戸? こんな山の中に?」