• 凄まじい屁理屈と矛盾ー【東京社説】国葬 予備費から 財政民主主義に反する

 下掲東京新聞のタイトルを見たとき、「あ、屁理屈だな。」とは思った。

 だが、社説の中身を読んで、その余りに凄まじい屁理屈ぶりに、しばし言葉を失った。

 アレかな。以前の弊ブログ記事で纏めた、下掲する「アカ新聞社説に見る、安倍元首相国葬反対論の流れ」に対して、「新たなアプローチを試みた」ってこと、なのかな。

 


<1> 「安倍元首相国葬には法的根拠が無いから、中止しろ。」
⇒ 結果:粛々と国葬準備が進む。なお、法的根拠については、「吉田茂国葬の前例」でほぼQED

<2> 「安倍元首相国葬について、国会で説明しろ。」
⇒ 結果:臨時国会開催されず。

<3> 「弔意を強制するなー!」

<4> 「国民が納得していないー!」

<4-1> 「安倍元首相と統一教会の関係が怪しい-!」

<4-2> 「国の重要事項を閣議だけで決定して良いのか-!」

<5> 「疑惑は更に深まったー!」


 では、その「東京新聞の新たなアプローチ」を、篤と御照覧あれ


(1)【東京社説】国葬 予備費から 財政民主主義に反する

  • 【東京社説】国葬 予備費から 財政民主主義に反する

 

2022年8月30日 08時10分

 

【1】 政府が閣議で、安倍晋三元首相の国葬に予備費から二億四千九百万円を支出することを決めた。

 

【2】 災害などを想定した予備費は国会審議を経ずに使途を決められるが、国葬は法的根拠や緊急性に乏しく、予備費の使用は財政民主主義に反するのではないか。

 

【3】 国葬に支出される予備費の内訳は、会場となる日本武道館の借り上げ料や設営費、参列者の送迎バス代など。警察による警備費や海外要人の接遇経費は含まれていない。政府は警備費などを「通常発生する業務の延長」(鈴木俊一財務相)としており、全体の予算規模は明らかにしない方針だ。

 

【4】 財政法は自然災害など不測の事態に備えるため、毎年度の予算編成であらかじめ使途を定めない予備費の計上を認めており、その使途は国会審議を経ず、閣議決定のみで決めることができる。二〇二二年度当初予算では一般予備費五千億円が計上されている。

 

【5】 しかし、安倍氏の国葬は亡くなってから二カ月半後に行われる予定で、災害などと比べると緊急性が高いとは言えない。

 

【6】 憲法は「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」とする。この規定が財政民主主義の根拠であり財政の基本原則だ。

 

【7】 国葬に法的根拠はなく、国民の賛否も割れている。こうした状況下で国会審議を経ず、予備費を使って国葬を強行すれば、財政民主主義を破壊する行為と言わざるを得ない。

 

【8】 さらに看過できないのは、国葬にかかる費用の全体像を明示していないことだ。国葬費用は国民から徴収した税でまかなわれるにもかかわらず、規模や詳しい使途を国民に伝えないのは到底納得できない。国葬への逆風が強まる中、意図的に予算規模を小さく見せようとしているのではないか。

 

【9】 各省庁は近年、予算要求を野放図に膨らませている。その上、国会の監視を逃れる形で予備費が乱用されれば、財政規律は失われ、財政破綻に向かうのは必定だ。

 

【10】 岸田文雄首相は、野党が求める国会召集に直ちに応じ、国葬の是非を含む全体像について徹底的に審議すべきだ。特に費用については補正予算案を編成し、使途を細かく点検する必要がある。

 

【11】 法的根拠や予備費支出に国民の理解が得られなければ、国葬を強行すべきではない。

 

  • (2) 屁理屈なること、「統帥権の干犯」以上。

 一読後の感想。有り体に言って、”統帥権の干犯”以上の屁理屈だ。

 「統帥権の干犯」ったって、今時の若いモンは知らないだろうから、チョイとネット検索をかけると、

> 統帥権干犯問題
> とうすいけんかんぱんもんだい
> 1930(昭和5)年、ロンドン海軍軍縮条約調印に関しておきた政府と軍部・右翼との対立事件
> 1930年4月に調印されたロンドン海軍軍縮条約に対して、海軍軍令部は、軍令部の承認なき調印は天皇の統帥権を犯すと非難、野党立憲政友会(*1)もこれに同調し立憲民政党の浜口雄幸内閣を攻撃した。
> 内閣はこれを押し切って同年10月批准したが、右翼青年による浜口首相狙撃事件に発展。軍国主義化の材料となった。
> 出典 旺文社日本史事典 三訂版


等が出て来る。が・・・「判りやすい」とは言い難い、と思う。
 
 チョイと私(ZERO)流に解説すると・・・戦前戦中の大日本帝国憲法下では「陸海軍(当時、空軍は無い(*2)。)は天皇陛下が統帥する」事になっていた。これが「(天皇陛下の)統帥権」である。逆に言えば、「政府や国会如きが、陸海軍を統帥する権限は無い。」と言うことだ。
 だが、政府には外交権がある。その外交権で海軍軍縮条約を結んだ。「戦艦の新造を原則禁じる」などして「海軍休日 Naval Holiday」を招来した海軍軍縮条約は、別の一面「条約により、艦艇が制限される」と言うことであり、我が国で言えば戦艦として建造中の加賀や巡洋戦艦として建造中の赤城が空母に改設計(*3)されたり、進水までした(即ち、艦体は大凡完成し、艦名も付けられた)戦艦・土佐(*4)を標的艦として廃艦にさせられた。
 斯様に「艦艇を制限するような条約」を、「軍令部の承諾無く政府が結んだ」事は、「天皇陛下の陸海軍統帥権を、犯した(干犯した)モノである!として「政府を批判・追及・糾弾した」のが「統帥権干犯問題」。シビリアンコントロールなんてモノがなく、軍縮条約も黎明期の頃、と言う時代背景を考えても、「矢っ張り屁理屈」だよなぁ。特に、「軍令部の承認があれば、”統帥権の干犯”とはならない」って所が(*5)。

 だが、今回の東京新聞社説の屁理屈には、「統帥権の干犯」も裸足で逃げ出しそうだ。
 


  • 注記><
  • (*1) なーんか、何処かで聞いたことのあるような野党名だな。 
  •  
  • (*2) 当時、「空軍が無い」のは珍しいことでは無かった。今では世界一の空軍である米空軍も、当時は未だ「米陸軍航空隊」だった。米空軍として独立した軍になるのは、第2次大戦後である。 
  •  
  • (*3) された上に、空母として完成するまでに未だ未だ色々紆余曲折がある、のだが。
  •  
  •  「最後まで、空母としては完成しなかった。」って見方も出来てしまいそうだな。「完成した空母」と言い得るのは、戦後の超大型米空母フォレスタル級まで待たねばならない、のではなかろうか。 
  •  
  • (*4) 加賀級戦艦の二番艦だから、「ビッグ7」筆頭・長門以上の大艦だった。合掌。 
  •  
  • (*5) 「軍備を制限する条約を、政府が勝手に結んだのは、統帥権の干犯だ!」とするならば、その条約に必要な承認は、軍や軍令部のモノでは無く、統帥権を有する天皇陛下の「勅許」の筈だ。
  •  まあ、「政府批判・攻撃のための屁理屈」は、今も昔も「イチャモンである」ってこと、らしいな。 


 

  • (3) 「国会の議決が必要な予備費」では、予備費として活用出来まい。

 さて、気を取り直して、上掲東京新聞社説を見ていくとしよう。原則毎日2本掲載される社説の片方で、大凡千字なのは、「いつものフォーマット」なのだが、その千字余りの一文を、良くもまあこれだけ矛盾させられるモノだと、逆に感心してしまうな。

 大体、上掲東京社説【パラグラフ4】に、

1>  財政法は自然災害など不測の事態に備えるため、
2> 毎年度の予算編成であらかじめ使途を定めない予備費の計上を認めており、
3> その使途は国会審議を経ず、閣議決定のみで決めることができる。
4> 二〇二二年度当初予算では一般予備費五千億円が計上されている。


と、ハッキリクッキリ明記されている。尚且つ冒頭の【パラグラフ1】にて、

5> 政府が閣議で、安倍晋三元首相の国葬に予備費から二億四千九百万円を支出することを決めた。

ともあるのだから、「政府が発表した国葬費用約2.5億円」であり、「一般予備費五千億円」の「千分の一の半分」0.05%、と言うことである。
 上記1>~4>の前段である【パラグラフ3】において、「政府が発表した国葬費用約2.5億円」に対して上掲東京新聞社説は疑義を呈し、曰く、

6>  警察による警備費や海外要人の接遇経費は含まれていない。
7> 政府は警備費などを「通常発生する業務の延長」(鈴木俊一財務相)としており、
8> 全体の予算規模は明らかにしない方針だ。


と記載した上、後段でこれを非難している。の・だ・が・・・頭冷やせよ、バカ。「警察による警備」だぞ。アルバイトの警備員を臨時雇いして増やす、訳じゃぁない。公務員試験に合格して警官として既に勤務している人を、今回国葬警備に充てる、と言うだけの話。その人が国葬警備に当たろうが当たるまいが、その人は警官としての給与を受けとっていようが。
 「通常発生する業務の延長」と言う鈴木俊一財務相の発言は「正にその通り」であり、警備に当たる警官の給与は今回の警備に当たるからと言って、原則上がるモノでも増えるモノでも無い。精々が、残業と出張(*1)の経費分、増えるだけだ。


 「海外要人の接遇経費」の方が「警備費の増額(出張・残業手当)」よりは多そうだが、「日本の国葬に参列する海外VIPの接遇」だぞ。しみったれたこと、出来る訳が無いし、すべきでもない。それは「弔問外交の経費」でもあるし、今回は「安倍元首相国葬」という機会ではあるが、別の機会で来日してもやはり相応にかかる費用ではないか。
 寧ろ、「接遇費を払ってでも、来日して頂きたいのが、海外要人」というモノでは無いのかね。

 でまあ、仮に「警備の警官の出張・残業手当」や「海外要人の接遇費」が嵩んで、政府発表の「約2.5億円」が二倍になって「5億円」になったとしても、「一般予備費五千億円」の「一千分の一」0.1%。税金と言えば税金だが、国民1人当たりにすると、「5円」だ。
 
 「予備費の0.1%で、国民1人当たり5円(それも、倍に膨らんだとしての)の国葬費用に、なぁに目くじら立ててやぁがるンだぁ?」と思いつつ、次のパラグラフに移ると・・・

9>  しかし、安倍氏の国葬は亡くなってから二カ月半後に行われる予定で、災害などと比べると緊急性が高いとは言えない。

って、何重にも「理解しがたい」極めて難解な一文(且つ1パラグラフ)にぶつかった。

 先ず、国葬というのは一面、葬儀だ。葬儀というのは、「御遺体の保管が大変」な事もあり、普通は「亡くなった直後」に行う。事実、安倍晋三元首相の御遺体も既に荼毘にふされている。即ち、「普通、葬儀には、相応の緊急性がある。」。で、左様な「緊急性のある葬儀」を「国葬として実施したならば(*2)、東京新聞社説はその国葬に同意した。」とは、全く想像できない。故に「国葬の緊急性の高低を問題視している」上記9>の一文は、理解し難かった。
 
 次いで、今次安倍元首相国葬は「亡くなってから二カ月半後」なので「災害などと比べて緊急性が高いとは言えない」というのは一応のロジックではある。が、「現職の有力国会議員が、凶弾に倒れた」という、前代未聞とも言えそうな「不測の事態」ではある。「亡くなってから二カ月半後の国葬」を「時間的緊急性は、低い」とは言い得ても「不測の事態」という「状況的緊急性は、高い」と評すべきであろう。
 どうやら、安倍元首相国葬は、亡くなってから2カ月半もたっての実施だから、(時間的)緊急性は無い。(時間的)緊急性は無いことに予備費を使うのは、ケシカラン。と、言いたいらしい、と、ここまで書いて漸く「理解した」。「理解はした」、が・・・繰り返しになるが、今次の安倍元首相国葬は、安倍元首相が凶弾に倒れるという不測の事態を受けたものであり、「状況的緊急性」ならば「高い」。正に、「予備費の出番」であろうが。
 
 更に続く【パラグラフ6】で、上掲東京新聞社説タイトルにも登場するキーワードであり、「東京新聞の安倍元首相国葬反対論への新たなアプローチ」たる「財政民主主義」が登場する。の・だ・が・・・

10>  憲法は「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」とする。
11> この規定が財政民主主義の根拠であり、財政の基本原則だ。


 いや、基本原則はその通りで、その権限で「国会が議決した」のが財政法。その財政法に基づいて、「国会の議決に基づく予算の行使』の例外規定としたのが、予備費である、って、上述【パラグラフ4】、特に上記3>に、その(予備費の)使途は国会審議を経ず、閣議決定のみで決めることができる。と、ハッキリ明確明白に、東京新聞自身が、書いているじゃぁ無いか。

 流石に「矛盾している」と気付いたのか、続く【パラグラフ7】では更なる屁理屈をこねている。

12>  国葬に法的根拠はなく、国民の賛否も割れている。 
13> こうした状況下で国会審議を経ず、予備費を使って国葬を強行すれば、
14> 財政民主主義を破壊する行為と言わざるを得ない。


とまあ、ココでもキーワード「財政民主主義」を振り回している、訳だが・・・

 先ず国葬には法的根拠が無く」って断定断言からして、おかしい。今次安倍元首相国葬の根拠は、国葬を決めた際に岸田首相自ら大筋を説明しているし、「閣議決定を以て吉田茂国葬は実施された」という史実・事実・実績がある。

 さらには、その「法的根拠の無い国葬」と主張する東京新聞自身が、「法的根拠の無い国葬に対する国会審議をしろ。」というのが、おかしい。幾ら「国会審議」したって「法的根拠が発生する」訳ではあるまい。「法的根拠を、国会で発生させる」ためには「国会で新法を成立させる」必要があり、今回で言えば「国会で国葬令を審議する」以外に無い筈である。が、東京新聞が「国会で国葬令を審議しろ。」と主張している/主張する、とはとても思えない。
 
 もっと言えば、「国葬費用の予備費からの支出を、国会で審議すれば、”財政民主主義は破綻しない”」とは言えそうではあるし、その過程で「国葬に賛同する国民が増える」であろうから、辛うじて「国民の賛否が分かれている」ことと「国会審議」は結びつくが、やはり「国葬に法的根拠が無い」と断定断言する東京新聞の主張と、当該国会審議とは、全く関係ない。

 国会審議を通じて、国葬の法的根拠を説明しろ。ならば、漸く「国葬に法的根拠無く」って主張と当該国会審議に関連が付く。だが、国葬に法的根拠は無く」と主張する東京新聞が、「国会審議を通じて法的根拠を説明しろ」と主張するのは、「矛盾」とは断定しかねるが、相当な齟齬/違和感がある。第一、大筋ながら「岸田首相自身が、国葬の法的根拠を説明している」現状で、「国葬に法的根拠無く」と断定断言出来てしまう東京新聞や立憲民主党相手には、「説明するだけ、無駄」であろう。
 
 なんやかんや言って、国会審議さえ始めてしまえば、予算執行は阻止できる」とでも、考えて居るのだろうぜ。

 更に続く【パラグラフ8】は、国葬にかかる費用の全体像が示されていない」って批判、【パラグラフ9】予備費の乱用が財政破綻を招くって、矢っ張り批判。再度繰り返すが、今次安倍元首相国葬の費用は、予備費の「千分の1の半分」である。「予備費の乱用」ねぇ。
 「予備費の乱用が財政破綻を招く」ってロジックは、相応に普遍性がありそうだが、「予備費の千分の1の半分の”乱用"」を阻止したところで、財政破綻とは何の関係も無さそうだぞ。

 終盤の【パラグラフ10】は、臨時国会を召集し、補正予算を組んで、国葬の費用を出せ。と来た。倍に膨らんでも5億円の国葬のために、臨時国会で補正予算、だそうな。国葬は既に9月27日と決定し、諸外国にも通達済みである、現状で、だ。


 まあ、本音は最後の【パラグラフ11】なのだろう。

15>  法的根拠や予備費支出に国民の理解が得られなければ、国葬を強行すべきではない。

 で、ココでもまた(小さいながら)矛盾を生じている。一つ前の【パラグラフ10】最後の文で、

16> 特に(国葬の)費用については補正予算案を編成し、使途を細かく点検する必要がある。

国葬のために補正予算を組め書いていたのに、次の文上記15>では「予備費支出」になっている。無論前記の通り、上記3>「その使途は国会審議を経ず、閣議決定のみで決めることができる。」と明記した「予備費」のことである。「閣議決定のみで使途を決められ、国会審議も不要な予備費支出」に、「国民の理解は必要だ!」って主張、としか思えないんだが、それこそ「法的根拠」は、ナンなのだろうね。
 「閣議決定のみで使途を決められる予備費」に対し、「国民の理解を得ろ」と主張するのも、一つの「矛盾」なのだが、気が付いてさえ居ない、様だ。

 この僅か千字ばかりの一文=東京新聞社説に、一体幾つの矛盾を抱え込んでいるのやら。一寸数える気すら起きないぞ。

 「安倍元首相国葬を、ナントカ阻止したい」って、東京新聞の悪意だけは、充分伝わる社説だ。だが、伝わるのは悪意ばかりで、矛盾と齟齬に満ちたその主張は、全く論理性も説得力も持たない。

 「説明を必要とする」のは、「東京新聞の安倍元首相国葬反対社説」の方だと思うぞ。

  • <注記>
  • (*1) 「全国の道府県警に、国葬警備のための”動員令”がかかっている。」とも聞く。そりゃ警視庁だけでは、諸外国VIPも参列する国葬の警備は、無理だろう。 
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  • (*2) 因みに、吉田茂の国葬は、吉田茂元首相の死後11日だった、そうだ。