• 「冷静さを欠いている」のは、誰かね?ー【毎日社説】防衛予算の増額 冷静さ欠く議論は危うい

 先行記事、「防衛費、2%で、この騒ぎ防衛費、2%で、この騒ぎ。-「骨太の方針として、防衛費倍増示唆」に対する、アカ新聞社説の右往左往 | 日出づる処の御国を護り、外国までも率いん心 (ameblo.jp)」に於いては、毎日新聞社説を含むアカ新聞社説を取り上げて、その「防衛予算増額反対理由」を「尽く」撃破粉砕、した心算だが、そこで取り上げた毎日社説以外にも、こんな社説を毎日新聞は掲げていた。

 では、「残敵掃討」と、参ろうか。

 「叩いたら、叩いて潰せち、教わった。
  親父殿(おやっど)も、叔父上殿も、もう一人の叔父上も、もう一人の叔父上も、
 おじい様も、ひいじい様も、言うておった。」
ー島津豊久@ドリフターズー


 

  • 【毎日社説】防衛予算の増額 冷静さ欠く議論は危うい

  • 防衛予算の増額 冷静さ欠く議論は危うい

 

 

https://mainichi.jp/articles/20220603/ddm/005/070/122000c

 

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朝刊政治面

毎日新聞 2022/6/3 東京朝刊 English version 846文字

 

【1】 防衛予算の増額を求める声が、自民党を中心に強まっている。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、東アジアでも軍事的緊張が高まるのではないかとの懸念が背景にある。

 

【2】 自民は、軍拡路線を取る中国や北朝鮮などへの対抗策として、防衛費の抜本的な増額を提言した。国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に置き、5年以内に引き上げることを求めている。

 

【3】 岸田文雄首相は米国のバイデン大統領に対し、「相当な増額を確保する決意」を伝えた。

 

【4】 確かに、安全保障環境の変化に応じた防衛力の整備は必要だ。ただし、専守防衛との整合性や、さまざまな政策の中での優先順位などを考慮した、冷静な議論が求められる。

 

【5】 とりわけ問題なのは、増額の数値目標が先行していることだ。

 

【6】 自民の提言は、装備品などの具体的な項目を積み上げないまま、北大西洋条約機構(NATO)並みの予算水準を求めている。

 

【7】 そもそも日本の防衛力は、憲法9条に基づく「必要最小限度」という制約がある。その枠内で国民の安全をどう守るか、丁寧な議論が必要だ。

 

【8】 財源の問題も避けて通れない。

 

【9】 2022年度当初予算の防衛費は8年連続で過去最大を更新し、21年度補正予算との合計で初めて6兆円を超えた。それでも、これまでは「GDP比1%」の目安が歯止めとして機能してきた。

 

【10】 2%への倍増を求める自民の安倍晋三元首相は「財源は国債で賄えばいい」とさえ主張している。だが先の大戦では、戦時国債が乱発されて歯止めなき軍拡を招き、戦後の教訓となった。

 

【11】 しかも、政府の長期債務残高が21年度末で1000兆円を突破した中、将来世代の借金を一層膨張させることにもなりかねない。

 

【12】 安全保障には防衛力だけでなく外交や経済面など、重層的な取り組みが必要だ。多くの課題を置き去りにしたまま、防衛費の増額が独り歩きする風潮は危うい。

 

【13】 来月の参院選では、ウクライナ情勢を受けた安全保障問題が争点の一つになる。東アジアの現状をどう認識し、どのような防衛力整備を構想しているのか。首相は、国民に明確に示すべきだ。

 

  • 先行記事「防衛費、2%で、この騒ぎ」に於いて、アカ新聞各紙社説から抽出した「防衛費増額反対理由」リストを、上掲毎日社説に当てはめてみよう。


 以下の<理由1>~<理由12>が、先行記事でアカ新聞各紙社説が掲げた「防衛費増額に反対する理由」。これらについては先行記事で「殆ど議論するに値しない」と、結論づけている。(【】内は、上掲毎日社説のパラグラフ番号)

<理由1> 「倍増ありき」だから。 【5】【6】 


<理由2> 歳出の拡大に歯止めが利かなくなるから。


<理由3> 歳出拡大には財源論が必要だから。/赤字国債を財源とする案があるから。【8】【10】【11】


<理由4> 1947年発行の財政法は、赤字国債を禁じているから。


<理由5> 際限のない軍拡競争を招きかねないから。


<理由6> 「専守防衛」との整合性を議論すべきだから。【4】


<理由7> 財政規律が骨抜きになりかねないから。


<理由8> 岸田首相の強い指導力が見られないから。/安倍元首相の強い影響が見られるから。


<理由9> 過剰・不要な装備を買う恐れがあるから。


<理由10> NATOは相互防衛義務があるが、日本は専守防衛だから。


<理由11> 軍事費を特別扱いした戦時中を想起させるから。【10】


<理由12> 防衛費増額分の予算は、他のことに使えるから。【4】



 予想されたことだが、上掲毎日社説が掲げる「防衛費増額反対理由」の大半は、先行記事で抽出したアカ新聞(毎日含む)各紙の「防衛費増額反対理由」に包含されており、既に「撃破済み」である。
 
 今回、上掲毎日社説から「新たに抽出される防衛費増額反対理由」としては、以下のモノがある。

<理由13> 日本の防衛費は、憲法9条に基づいて「必要最小限」という制約があるから。【7】

<理由14> 安全保障には防衛力だけでなく、外交や経済も重要だから。【12】

  • <理由14> 安全保障には防衛力だけでなく、外交や経済も重要だから。

 一見尤もらしいし、ある意味「正論」でもあるのだが、この<理由14>は、先述の<理由12>「防衛費よりも優先すべき予算がある。」の一変形である。先行記事にした通り、この<理由12>を「防衛費増額反対理由」に挙げた琉球新報は、「防衛費より優先すべき予算」として、「授業料・給食費の無料化」「年金増額」「消費税減税」と、俗耳に入りやすそうな「大衆迎合政策」を挙げてのに対し、上掲毎日社説は、「流石は全国紙」と言うべきか、「防衛費と同様に安全保障上重要な、外交と経済」を挙げて、「安全保障重視」の姿勢を見せている。

 その「安全保障重視の姿勢」故に、先行記事で私(ZERO)が上記<理由12>撃破に用いた論拠「安全保障政策に失敗すれば、国家の危急存亡にも関わる。」を「封じた」事は認めざるを得ず、今回改めて<理由14>を取り上げねばなるまい。
 
 先ず、安全保障に於いて、防衛力以外の「外交や経済」も重要である、と言う点に同意しよう。以前にも書いたが、外交と軍事は少なくとも一面相補的関係にあり、「戦争は、弾丸を使う外交。」「外交は、弾丸を使わない戦争。」とも言い得るのだから。

 一方で、安全保障とは一義的には「防衛力」の問題である。外交も、そりゃ大事だが、それは主として「同盟国を増やし、同盟関係を強固にする」意味で大事なのであり、「開戦回避」とか「緊張緩和」とかで「外交が安全保障に資する」頻度も重要度も、軍事・防衛力程ではない。これは、冷厳たる事実・史実であり、「安全保障とは、先ず第一に軍事力・防衛力の問題」なのである。従って、「安全保障の議論として、先ず防衛費を論じるべき」であり、防衛費を優先して論じることを「軍事偏重」などと非難される筋合いは、ないのである。

 更に、我が国の防衛費という意味では、上掲毎日社説にも「1%枠」として登場する様に、「防衛費増額は殆どタブー視され、ろくな防衛費を予算化して来なかった。」のである。お陰で我が自衛隊は、正面装備の数はそこそこ揃うモノの(それでも、戦車の数とか、なぁ・・・・)、弾薬備蓄なんてのは実に心許ない惨状を呈している。その惨状の理由の少なくとも一端は、NATO基準の半分でしかない、「1%枠」というしょうもない「防衛費抑制策」のため、である。

 外交や経済以上に安全保障上重大な防衛費が、左様な惨状を呈していたのであるから、安全保障の観点から、今こそ、「外交や経済」ならぬ防衛力・軍事力が、「議論されて当然」なのである。 
 

  • <理由13> 日本の防衛費は、憲法9条に基づいて「必要最小限」という制約があるから。


 Negative!「必要最小限」も何も、日本国憲法には前文にも9条にも、我が国の安全を保障する武力や軍隊や自衛艇に関する記載が、一切ない。そんな自殺憲法自滅憲法と、厳然として存在し我が国にとって必要不可欠な自衛隊との、「憲法と現実の乖離」を埋める「埋め草」が「憲法9条に基づく”必要最小限”と言う制約」である。有り体に言って、「言葉遊び」だ。実体は、無い。実害は、あるべきではない。

 更に言うならば、我が国の安全保障上必要な防衛費増額は、「我が国の安全保障上必要」なのだから、それだけで「必要最小限」と主張するに十分な理由であろう。
 
 その「我が国の安全保障上必要な防衛費増額」が、「GDP比2%に、達するか、否か?」には、議論の余地が在るだろう。それを審議するのが、「防衛予算の国会審議」というモノであろう。

 言い替えれば、我が国の防衛予算は国会で審議されるのだから、可決成立した防衛予算は、「必要最小限」の筈だ。少なくとも、左様に主張出来よう。
 

  • .「冷静さを欠いている」のは、毎日新聞社説の「防衛費増額反対論」では、ないのかね?


 特に、琉球新報と同じ防衛予算増額反対理由(の一つ)である<理由11>「軍事費を特別扱いした戦時中を想起させるから。」は、ヒドいぞ。先行記事にも書いたが、総力戦中の交戦国が「軍事費を特別扱いする」のは当たり前だ。そうしないと忽ち戦争に負けて、国が滅んでしまう可能性は大きいのだから。更には、「GDP比2%の防衛費」は「特別扱い」ではなく、むしろ常識の線である。

 それどころか、従来従前の「防衛費1%枠」こそ、逆に「少な過ぎる」という意味で「特別扱い」と言われるべきだろう。

 そんなヒドい「防衛費増額反対理由」を持ち出すとは、「冷静さを欠いている」のは、一体どちらかね?