別海町のウシの脅威は、ヒグマだけだと思っていたから、4カ所で計11頭が野犬に襲われたと聞いておどろいた。うち6頭が死んだ。都市部ならいざ知らず、道東の荒野に野犬が群れで暮らしているとは‥。

 

 環境省の「狩猟制度の概要」をみると、狩猟による捕獲が認められている鳥獣46種類のなかに「ノイヌ」がある。これが野犬のことだろうか。“やけん”でもなく“野良犬”でもなく「ノイヌ」。

 

 「ノイヌ」‥強そうに聞こえないが、体の一部を食われた牛もいたというから、別海町の野犬はクマレベルに凶暴で貪欲らしい。ちなみに「ノネコ」も狩猟鳥獣になっている。

 

 牛の被害は、酪農家にとって死活問題。いまのところ、地域の農協は酪農家に自衛策を促し、町は牧場周辺にわなを設置し、見回りを行っているとあるが、はたして「ノイヌ」はわなに掛かるんだろうか。

 

 そして、人の安全は大丈夫だろうか。町教委は地区内の小中学校2校に注意を呼びかけた、とあるが、群れで牛を襲うような野犬に対し、どんな注意をするよう呼びかけたのか、学校が生徒や保護者にどう伝えているのか気になる。

 

 日本では犬の飼い主に年1回の狂犬病予防接種が義務付けられているが、「ノイヌ」が打っているはずもなし。それに、ほぼ100%だった日本の接種率は近年、7割程度に低迷しているという道新記事が5月にあったが、人も動物も60年以上、国内発生がないことが油断につながっているそうだ。

 

 発症するとほぼ100%死に至るという狂犬病。ウイルスに感染した犬や猫などにかまれると人にもうつり、犠牲者は世界で年間約6万人と聞くと、深刻な話でおそろしい。専門家は「狂犬病の怖さが伝わっていない」と懸念しているという。

 

 今日の記事を見るかぎり、人の安全対策がどこまで考えられているかあまり見えてこない。道東の野生の脅威を感じるから、みな気をつけられたい。