道新3/30(土)の道央版札幌圏紙面に、「さらば「ひょうたん横丁」」というのがあった。狸小路10丁目にある「ひょうたん横丁」が31日、約70年の歴史に幕を下ろすということで、連日、別れを惜しむ人たちでにぎわっている様子が書かれていた。
居酒屋、スナックなど6、7店が並ぶ懐かしい雰囲気の長屋横丁として親しまれてきたという場所は、再開発のため、4月以降取り壊される。少し前に連載された「ディープに歩こう」シリーズとは趣が違っていた。
翌3/31(日)午後10:45からのNHKローカルでは、同じ場所を題材に「ほっかいどうが#15 1000番地」という15分のドキュメンタリーがあった。道新記事の最初にあった居酒屋「くっちゃん」にカメラをおいて、店主と客たちの姿を記録していた。
札幌市中央区南3条西10丁目1000番地は、明治期には札幌の外、はしっこ、そういう場所だったらしい。そこから西側は、だいたい畑だった。その1000番地を開拓した屯田兵は元会津藩士。大正15年に現在の長屋が建てられたが、その後も“場末”と呼ばれ続けたとのこと。あんな中心部に、そんな“場末”があったとは、いっこう知らなかった。
再開発では、屋内広場もガラスで囲われ、通りからは中の様子がうかがえる“パブリック”な商業施設が下にでき、上には30階前後のタワーマンションが建つ計画で、土地建物を合わせると100億プロジェクトという関係事業者の「未来を創るんだから」という打合せ会議の言葉が印象的だった。そして未来はカタカナ語が多くなる。
さらに印象深くしたのが、1年半前からしばしば店に現れる客がいた、という展開。彼は地元不動産業者を動かし、1000番地で事業を進める大手開発業者だった。しかし男性は店主に素性を明かしてこなかった。
そして、入店から2時間ほど経ち、躊躇しながらも「ちょっと訳あって来てたんですよ。」と切り出し、「わたしこういう者なんですよね。」とカウンター越しに名刺を差し出した。
店主「‥そっかそっかぁ‥。そうなんだ‥。」
男性「ご協力いただきましてありがとうございます。」
店主「いやいや、とんでもない、とんでもないっよ。」
男性「っていう一言を、ここを終わる前にですね、どうしてもお伝えした
かった。」
店主「うんうん‥。そうなんだ‥。」
「でも、あれだねー‥しょうがないっていうか、‥あのーまぁ、再開
発って、思うんだけど、色気も素っ気もない街になってきたね、札
幌もね。」)
(と言ってニコッとする店主に、男性苦笑い)
店主「まっ、しょうないけどね。」
「でもね、私も年も歳だから、まあ‥いいかな。‥ただ、寂しいって
いえば寂しいね‥それは、しょうがない‥しょうがない。」
「そんな‥あんたわざわざつらい顔して来なくたっていいんだよ
ー。」
男性「つらい顔してました?」
店主「いやーホントね、いやー、でもうれしい、ありがとうねぇ。ホン
ト、ありがとう。そんな、わざわざ‥」
男性「いや、ホントに、まずママにお伝えしたいなと思って‥。」
店主「そっか、そっかー。」
男性「ありがとうございました。」
店主「がんばれっ、がんばれー。」
男性「がんばります。」
店主「ホント、がんばって!」「もうね、過去は過去、未来は未来。♪現
在過去未来~♪」
店主は「しょうがない」としか言わないが、内心、複雑な思いがあっただろうと想像すると、切ない感じのドキュメンタリーだった。ラスト閉店1時間前の、満席と立ち客でびっしりの店内のライブ映像で、そんな思いは少し和らいだ。が、“未来”というのは、多くのシニアにゃあ苦いことのほうが多いのでは?‥どうだろうか。