札幌市立校の教職員への「訓戒処分」について書かれた道新の記事が気になった。

 

 過去10年で多い年は76件、少ない年でも38件あり、交通違反や不適切指導などが理由だが、事案の概要や処分内容は原則公表されていない。そのため処分の妥当性が不透明で、保護者からは疑問の声が上がっており、専門家は処分の妥当性検証のためにも「概要などを明らかにする必要がある」と指摘している、というものだ。

 

 

 残念ながら、道新は問題提起の仕方を間違っているように思う。「訓戒処分」と「懲戒処分」を同列に扱っているからだ。

 

 「処分」と聞くと、日頃我々は「規則・規約を破った者を罰すること」と捉えがちだが、行政機関がおこなう法的行為も行政処分であり、罰することとは切り離して考えないと進む方向を間違えてしまう。

 

 地方公務員法の「懲戒」をみると、「戒告、減給、停職、免職」の4種類がある。「懲戒」は文字どおり、非違行為をした職員を、戒め懲らしめるためにおこなう処分だろう。不利益処分だ。

 

 これに対し「訓戒」は地方公務員法にない。各自治体が定めるのだろう。札幌市には重い順に文書訓告、口頭訓告、厳重注意の3種類を課す(市教委教職員課)とあるが、これは懲罰とは別ものの、職員への「指導、教育」行為と理解して、キッチリ分けて考える必要があるだろう。

 

 つまり、日常の「指導、教育」が妥当に行われたかどうかを一々世間に知らせるとか、外部の第三者が事案や訓戒処分の内容を検証するといった発想自体が成立し得ないだろう、ということになる。それに、基準があるとも思えない。

 

 訓戒処分について「公表しないことで教諭をかばっていると思われても仕方がない。概要を公表し、市民の評価を受けるべきだ」という北海学園大元教授の話も載せているが、記事の展開に合う意見をくっつけたようにしかみえない。

 

 ならば、問題ありと思った場合どうすればいいのか?家族等の当事者が説明を求めることになるのではないか?懲戒処分の基準は各自治体が公表しているから、どんな行為がどの懲戒処分に該当するかははっきり示されている。

chokaisyobunshishin.pdf (city.sapporo.jp)

 

 記事には、自分の子どもが不適切な指導を受けたと訴えたが、市教委からの説明はなく、厳重注意処分だけ伝えられたという例があった。これは、懲戒処分の基準に照らしてみれば、該当の有無がわかるだろう。

 

 そして該当する可能性がないとしても、「訓戒」のうち最も軽い「厳重注意」としたのはなぜか?と、当事者が市教委に説明を求めればすむことではないか。何でもかんでも「透明性」の風潮に踊らされて外部の第三者が検証することではないと思う。えらくハンパな記事だった。