おとといの道新<オリンピック考>、北海道観光振興機構会長は「30年開催」目標を堅持すべきとしている。観光振興の立場からは、当然そう言わなければならないだろう。

 

 ただ、札幌五輪開催には極めて大きな意義があるとしながら、「開催のレガシー(遺産)が長期にわたって道内と札幌の観光を振興し、地域経済を押し上げる」という論拠についてはよくわからない。

 

 確かに、大会がもたらす直接的な経済効果は想像できるが、それは観光とその周辺事業についての一時的なものに過ぎず、かつ、それら事業主体の多数が道外資本により運営されていることを思うと、道民経済にとっては、見かけ上の効果でしかないのでないか。

 

 また、開催を契機に生み出されるという道内と札幌の新たな観光振興がどれほどのものか、どの程度持続的に効果をもたらすか、過去の開催例をみても推し計れない。

 

 現在ハッキリしていることは、50年前に札幌開催した時の“街づくり”のような明確な目的がないこと。そのため、市民の機運、国・自治体・関係団体の一体感が生じないことである。

 加えて、大手広告代理店のノウハウなしには五輪開催できない現状があること。そのうえ、“みなし公務員”の職責を付加すると法に抵触してしまうというビジネスモデルの業界であることなど、五輪開催に対する不透明感、不信感が払しょくされないことである。
 

 ニセコが人気を得たきっかけは、オーストラリア人がSNSを通じて、ニセコの魅力を拡散したためと言われているように、今や多様な方法で広報できる時代だ。

 札幌をPRし続ける、新たな人気観光地が生まれる可能性を求める、そんな抽象論のために巨額の費用をかけて五輪を開催するというのでは、あと50年たっても、賛同は得られないだろうさ。