与野党とも、マスコミに迎合して、
政界における「政治とカネ」が総選挙の課題と言っているので、
政界における「人情とカネ」の話をする
そこで、
けちくさい現在の政党幹部の連中の顔を忘れて、
明治生まれのオッサン達が、健在だった頃の話をしよう。
この西村は、
平成五年七月の総選挙で
民社党の最後の公認候補として議席を得て国会の世界に入った。
そして、先輩・同僚から、
民社党の明治生まれの長老達の逸話を聞いた。
その中で、
春日一幸のオヤジの話が、一番面白いので記しておく。
大臣経験者の小生より十歳くらい年長の先輩議員にNさんがいた。
そのNさんが駆け出しの頃、
ある総選挙の最中、選挙資金が全くなくなった。
その時、Nさんは、
春日一幸のオヤジが、
今夜は名古屋の自宅に帰っているとの情報を得る。
そこで、夜中、車を飛ばして春日のオヤジの自宅に行き、
「先生、カネが無くなりました」と云った。
すると、春日一幸は、言った。
「オー、ソーか、
お前、カネと子供は自分で作れ！」と。
Nさんは、返す言葉もなく、
「ハ！」と云ったまま絶句した。
Nさんは、ここまでしか語らなかったが、
春日一幸は、
帯のついた札を、数個、Nさんに握らした。
泣きついてきた子分を、
見捨てないから親分なのだ。
つまり、春日一幸は
人情をカネにしてNさんに渡した。
その人情を受け取ったNさんは、
先年、亡くなったが、
生涯、春日一幸の人情･恩を忘れなかった。
このNさんとは、よく飲みにいった。
ある日の夜、Nさんは、
小生を銀座の、
座るだけで何万円、という高級バーに連れて行ってくれた。
酔ったNさんは、ママと女の子相手にしゃべりまくり、
小生のことを次のように云った。
「あのなあ、こいつは、尻の大きい女が好きやねん。
尻の大きい女の子を、
こいつの横に座らせたってくれや～。」
すると、ママが呼んだ娘さんが横に座った。
Nさんは、上機嫌で、
どやシンゴ、ええ子やないか、とか言っていた。
小生は、尻が大きいかどうか、検分することなく
注がれる度に、
ありがとうございますと言ってウイスキーを飲み続けた。
そして、Nさんは、店を出る前にママに言った。
「このシンゴがなあ、
飲みに来たら俺の付けで飲ましたってくれ」
そして、続けて小生に言った。
「シンゴ、ここへ飲みに来いよ」
そこで、小生、頷いた。
そして、声に出さず、
天下の西村眞悟の親分面のええ格好したんやから
喜んで、お言葉通りに飲みに来よう、と思った。
そして、友達を誘って、数人で度々この店で呑んだ。
すると、一ヶ月後、
Nさんが議員会館の小生の部屋に入ってきた。
そして、言った。
「シンゴなあ、もうあの店に行かんといてくれや」
飲み屋から五・六十万の請求書がきたらしい。
Nさんが帰って一人になった小生は、
グワッハッハと笑い、思った、
飲み屋で、
この俺の親分面をするからこうなるんじゃ、と。
また、春日一幸先生は、
ほんとうの親分やったなあと思った。
次ぎに、もう一つだけ、
この春日の親分のことを記しておく。
明治維新以来、政界の親分は、常人の尺度を超えている。
そして、こういう親分がいた時に、
日本は世界の五大国に一挙に飛躍していった。
これに対し、
連中がモットモラシイ顔をして
「カネと政治」で騒いでいる現在、
日本は縮（ちじ）んでいっているが、
誰も責任をとらない。
春日一幸は、常人の尺度を超えていた。
春日一幸に、何人の奥さんがいるのか、
政界で知っている人はいなかった。
その春日の秘書だった男が、
小生と当選同期の衆議院議員で親しかった。
その名を○○としておく。
次は、○○が小生に言った話だ。
秘書の時のある日、春日に呼ばれたので、春日の前にいった。
すると、春日が、
「○○、俺の娘の亭主が、交通事故で亡くなったんじゃ」
と言った。
○○は、そうですか、と答え、
次ぎに春日が何をしゃべるか待った。
すると、春日が言った。
「○○、お前、その俺の娘と結婚しろ」
ビックリした○○は、
「僕には、妻と子供がおります」
と、言うと、春日が言った。
「そんなことは、どうでもええ！」
○○は、仰天した。
話を聞いていた小生が、○○に言った。
「それで、お前、どうしたんや、言われた通り結婚したのか」
○○は答えた。
「恐くなって、春日事務所を辞めたがな」
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