一昨日そして昨日に続き、
本日も「日本」について記すことにする。
一昨日、紹介したフランスの社会人類学者
クロード・レブィ=ストロース(1908年~2009年)が
日本に関し、次のように言った。
我々西洋人にとっては、
神話と歴史の間にぽっかりと深淵が開いている。
日本の最大の魅力の一つは、
これとは反対に、
誰もが歴史とも神話とも
密接な絆を結んでいられるという点にあるのだ。
このことを、我々日本人こそ、
自ら振り返って、
深く再確認しなければならない。
即ち、西洋人から見て日本は、
「神話との連続性を維持している唯一の文明国」
つまり近代国家なのだ。
このことは、神話の神々の世界は、
そのまま、
現在の日本に生きているということだ。
我が國の街角や鎮守の森そして山々には
神々が祀られている祠があり神社がある。
樹齢千年の古木には神を敬うしめ縄が巻かれている。
昭和四十三年夏、
一人北海道の礼文島最北端のスコトン岬に立って
「おのれ、露スケめ、樺太を帰せ」と
海の彼方の樺太を眺めた時、
そこの岩の上に、日本の象徴の如く鳥居が建てられていた。
この最北端の海上の鳥居、忘れ得ない。
しかし、日本のこのような情景は、現在の西洋にはない。
キリスト教という一神教によって
ギリシャ・ローマの神々
そして
ゲルマン・ケルトの神々の世界は否定され
その証(あかし)が抹消されたからだ。
西暦三九三年、ローマ帝国がテオドシウス帝の時、
ローマの元老院は、
長年、ローマ人から最高神として敬われてきたユヒテルを否定し、キリスト教をローマ帝國の国教とした。
従って、この時、
ローマ人が長年にわたって神々の祭典として行ってきた
オリンピア競技会が全廃された。
同時に、
神々のギリシャ・ローマ文明を伝える
公共図書館の閉鎖が始まった。
よって、西洋の歴史家は、この時を以て
「ギリシャ・ローマ文明の終焉」とする。
さらに、
このキリスト教がローマ帝国の国教となった時、
キリスト教会のトップが、ローマ帝国皇帝よりも上位に立った。
その上で、キリスト教会は
ローマ皇帝テオドシウスに「大帝」の称号を与えた。
そして、キリスト教会は、
ローマ帝国版図内のゲルマンやケルトといわれる諸民族への布教を開始する。
その布教の仕方は、
まず、彼ら諸民族が神聖視しているものを破壊することだった。
キリスト教宣教師は、彼らの神殿を破壊した。
また、彼らは日本人と同様に、
巨木を神聖なものとしていたので、
宣教師は彼らの前で、その巨木を切り倒した。
現在、ゲルマン・ケルトの巨木への信仰は、
「クリスマス・ツリー」にその痕跡を残しているに過ぎない。
つまり、
クロード・レブィ=ストロースが指摘した通り、
西洋では
神話と歴史の間にはぽっかりと深淵が開いたのだ。
このローマ帝国のキリスト教国教化から
一千二百年後の一五八七年(天正十五年)、
日本の覇者となった豊臣秀吉は九州平定の後、
博多の筥崎に立ち寄った。
この時、
イエズス会宣教師フランシスコ・ザビエル来航(一五四九年)から三十八年が経っていて、
既に十万人以上の日本人がキリスト教徒になっていた。
また、この時、我が國は戦国時代であった。
戦国大名たちは、多くの鉄砲を持っていたが、
その鉄砲から弾を撃ち出す火薬が欠乏していた。
ここに、宣教師と共に来日していた
武器商人と奴隷商人が取り入った。
即ち、彼ら三者は、戦国大名に、
キリシタン大名になれば、
領内の五十人の娘と引き換えに
火薬一樽を進呈すると申し出たのだ。
そこで、天正十五年、筥崎に来た秀吉は、
キリシタン大名の領地で、
神社仏閣が破壊されてキリスト教会が建てられている様と、
領内の乙女たちが奴隷として奴隷商人に引き渡されているのを観た。
その瞬間、秀吉は、
キリスト教は我が國體を破壊するものと直感し、
筥崎で
「切支丹伴天連追放令」を発した。
その冒頭は、
二百年前に北畠親房が「神皇正統記」の冒頭に記した
「大日本者神國也」と同じである。
秀吉は、
「日本は神國たる處、
キリシタン国より邪法を授け候儀、太以不可然候事」
即ち、
「日本は神國であるのに、キリスト教という邪法を広めること、まことに以てけしからん」
と宣言したのだ。
我が國の戦国期に、
奴隷としてヨーロッパの奴隷市場に運ばれた
日本の少女たちの総数は五十万人と言われている。
同時期、遣欧少年使節としてローマに派遣され
ローマ教皇に拝謁した四人の戦国大名の息子たちは、
欧州の奴隷市場で家畜のように裸にされて売られている
同胞の少女たちの姿を見ている。
我が國の歴史において、
一五四九年のキリスト教宣教師ザビエル来航から
一六三八年の島原の乱終結までの約九十年間が
「隠れた大きな危機」であったといえる。
そして、昭和二十一年から現在に至る七十余年間も
第二の「隠れた大きな危機」である。
敗戦後に我が國を軍事占領したGHQが、
我が國に主権が無い時に書いた「日本国憲法と題する文書」を
「日本の憲法」として、
義務教育で子供達に教えているからである。
一刻も早く、
我が國の真の「不文の憲法」を取り戻さねばならない。