天皇の軍隊 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

先に三月十一日に発災した東日本大震災において、
被災者を救助し支援するために
陸海空三自衛隊によって編成された
空前の十万七千の統合任務部隊・JOINT TASK FORCEは、
「天皇の軍隊」
であった。
従って、司令官君塚栄治陸将は、
松山基地に自衛隊機で来航された天皇陛下に、
鉄兜野戦服姿で正対して敬礼した、と書いた。

そして、次に、
発災から六日が経った今日の三月十六日、
まさに、我が日本の「統治者としての天皇」
が、日本国民の前に姿を現された、と書く。
その「統治者」とは、
萬葉集第一巻冒頭にある
「天(あめ)の下知らしめしし天皇(すめらみこと)」
と同じ意味である。
即ち、
権力によって国民を領有し支配するのではなく、
国民と自他の区別なく溶け合って一体となることである。
このこと、古代大和言葉は「しらす」と表現する。
即ち、天皇は、
天照大御神が天壌無窮の神勅によって、
宜(よろ)しく爾(いまし)皇孫(すめみま)
就(ゆ)きてしらせ
と命じられた通りの姿を顕された。
そして、全国民に対して「お言葉」を発せられた。
以下は、その「お言葉」である。

・・・     ・・・     ・・・

・・・一人でも多くの人の無事が確認されることを願っています。
また、原子力発電所の状況が予断を許さぬものであることを深く案じ、
関係者の尽力により事態の更なる悪化が回避されることを切に願っています。
・・・そして、何にも増して、この大災害を生き抜き、
被災者としての自らを励ましつつ、
これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに
深く胸を打たれています。
自衛隊、警察、消防、海上保安庁を始とする国や地方自治体の人々、
諸外国から救援の為に来日した人々、国内の様々な救援組織に属する人々が、
余震の続く中危険な状況の中で、日夜救援活動を進めている努力に感謝し、
その労を深くねぎらいたく思います。
 今回、世界各国の元首から相次いでお見舞いの電報が届き、
その多くに各国国民の気持ちが被災者と共にあるとの言葉が添えられていました。
これを被災地の人々にお伝えします。
・・・これからも皆が相携え、いたわり合って、
この不幸な時期を乗り越えることを喪心より願っています。
 被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、
様々な形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います。
被災した人々が決して希望を捨てることなく、
身体を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、
また、国民一人びとりが、
被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、
被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを
見守り続けていくことを心より願っています。

・・・      ・・・      ・・・

この「お言葉」は、
天皇と国民が一つに溶け合った家族であることを、
あますことなく示している。
未曾有の國難のなかで
「天皇のしらす国」である「我が国の姿」、「我が国の形」
即ち「我が国の國體」を顕している歴史的なお言葉である。
また、
世界の元首が、天皇を日本の元首として
お見舞いの電報を送っていることに注目したい。

天皇陛下が、この「お言葉」で
原子力発電所の状況を深く案じられて、
「関係者の尽力」を切に願われた日、
十六日の23:30(午後十一時三十分)、
折木統合幕僚長と話し終わった
宮島CRF(中央即応集団)司令官は、
第一ヘリコプター団の金子章彦団長に、
「明日、撒け」、「何があっても撒け」と命令した。
その命令を察知したアメリカ軍将官は、金丸団長に、
「人の命を何とも思わないような作戦はするな」
と言った。
しかし翌朝、二機の巨大ヘリCH47チヌークは、
霞目駐屯地を飛び立ち太平洋に出て編隊を組んで福島第一原発に向かった。
そして、09:40から10:00の間に、
計四回、合計30トンの水を原子炉に落とした。
さらに自衛隊首脳は、
旧ソ連のチェルノブイリ事故で
放射能の拡散を防ぐ最終手段のであった
ホウ酸(中性子を吸収して再臨界を防止する)の
原子炉への注入を準備しつつ
煩悶していた。
内部がどうなっているか分からない原子炉の上
20メートルの低空で
ホバリングして合計20トンのホウ酸を
原子炉に直接送り込まねばならないからだ。
人選をしなければならない
火箱芳文陸上幕僚長は、思った。
「あいつらだけを死なせるわけにはいかない。俺が行く」と。
そして、
「定年近いあいつなら、ついてきてくれる。
あいつなら確実に
発上空で見事にボタンを押してくれるはずだ」と。
以上が、三月十六日から十七日にかけての
「天皇の軍隊」
である自衛官たちの思いと行動だった。
彼らは、あの時の思いと行動について、何も言わないので、
ここに明記しておく。
時代が如何に変わろうとも、
日本が日本である限り、
いつでも、特攻機は、
笑顔で飛び立って行く。


西村眞悟FBより