オプティマス | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

早朝、納屋に入ると、五十年前に購入し三十八年前まで使っていたスエーデン製のキャンプストーブ(オプティマス)が思い出して訴えているような感じで目に入った。昭和58年10月、尾山(3003メートル)から真砂岳を経て剣澤小屋に泊まり翌朝、剱岳に登るとき、真砂岳から剱岳を眺めながら、このオプティマスで湯を沸かしてチキンラーメンを食べた。靴は、この時履いていたもの。

この靴は、僕の最後の雪山となった昭和63年4月の前穂高北尾根の時も頑張ってくれた。この時、頂上直下のコルで雪洞を掘って二日間吹雪を避けて沈殿した。気圧計では高度三千メートルを遥かに超えていた。凄い低気圧だった。三日目の晴れ目に、同僚と撤退しかないと一致して、横尾避難小屋までラッセルして降りた。途中、疲労が限界にきたと感じ、雪の中から空を見上げたとき、このまま眠ったら、永遠の安らぎのなかに入られるよという誘惑が襲ってきた。この靴は、こういう時も頑張ってくれた。

それで、今も玄関に置いてある。

この靴も、このキャンプストーブも、

既に世界で作っているところはない。



西村眞悟FBより


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