台湾を思う。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

台湾を思う。
台湾を守ることは
我が国の自衛権行使そのものである。

四月二十五日、
産経新聞の「話の肖像画」欄で連載していた
台湾元総統の陳水扁さんのインタビューが
三十三回目で終了した。

陳水扁さんの総統の任期を終了した後の
二〇〇八年十一月に逮捕され
二〇一五年一月に保釈されるまでの獄中の日々、
また、
起訴された罪状の内容について、改めて知ることができた。
政府の「機密費」に領収書が必要とされれば、
「機密費」なのであるから、
本当に手渡した相手は領収書など書けるはずがない。
我が国でも、民主党政権下の際、
官房機密費に領収書を必要とするとなりかけたと記憶する。
もし、領収書が必要となったとしたら、
民主党時代に出たあの三人の総理も
陳水扁さんと同じことをしただろう。
陳水扁さんの次の総統になり、陳水扁逮捕を実施して、
過酷な獄中生活を強いた
馬英久総統も陳水扁さんと同じことをしている。

ただ、陳水扁総統のスキャンダルが、
まるで支那の歴代王朝の典型的な腐敗と同じように執拗に報じられていたので、
僕は、かなり、その捏造に影響され、
陳水扁さんに失望していたことがあり、
この度の産経の連載を読んで
「誤解して悪かった、申し訳ない」と思った。

陳水扁さんが、獄中にいるとき、
高雄で蒋介石時代の「白色テロ」を体験した人々と会食をしている時、
私は、「陳水扁に面会したいが、可能か?」と彼等に訊いた。
その時の彼等の反応は、
「とんでもない!」という雰囲気だった。
この度のインタビューを読んでその訳が分かった。
彼等には、国民党の馬英久政権の陳水扁への処遇を見て、
蒋介石時代の白色テロの恐怖が甦っていたのではないか。

陳水扁さんの次の総統を選ぶ選挙の前、
国民党候補の馬英久氏と
民進党候補の謝長廷氏が、相次いで日本に来た。
馬英久氏と同行の国民党幹部に会ったとき、
僕は、
「貴公等は尖閣に行ったことがないだろう。
私は、行ってきた。
何故なら、日本の領土だからだ。
よって、尖閣は日本の領土だと、
改めてここで貴公等に言っておく。」
と言った。
馬英久は、ハーバード大学で、
「尖閣は中国の領土」という論文を書いて
学位をもらったと聞いていたからだ。
しかし、馬氏は、何も言わ反論しなかった。

次に謝長廷氏とは京都大学の構内であった。
彼は京都大学大学院で法哲学を学んでいたから、
日本に来て京都大学の学園ホールで集会を開いたのだ。
いろいろ話をして、意気投合した。
丁度、謝長廷氏と大学院で共に法哲学を学んだ先輩が、
謝長廷は、中華料理店でバイトをしながら、講義の時には、
必ず原書を総て読んでから出席する頑張り屋だった
と教えてくれた。

総統選挙の時、台北へ謝長廷応援に行った。
朝、台北の路地を散歩していると、
謝長廷と馬英久のポスターが仲良く貼ってある塀の側に
ステテコ姿の、おっちゃんが座っていた。
彼に誰を応援すると聞いたら、
謝長廷と答えポスターを指さした。
僕は、馬英久のポスターを指さし、これはどうか?と尋ねた。
すると、おっちゃんは、手を横に二往復振って言った。
ダメ、ダメ、コレ、チャンコロ、コレ、チャンコロ!
僕は、なるほど、チャンコロは国際語だと知り、
それから、チャンコロと言うようになった。

夕方、台北の公園で、謝長廷の演説会が開かれた。
大勢の人が集まってきた。
薄暗い木々の向こうを候補者の謝長廷が数人に囲まれて
明るい演壇に向かって歩いていた。
僕は、日本語で大声で叫んだ。
「京都大学、頑張れー!」
明らかに謝長廷は、反応した。
演壇に登った謝長廷の第一声は、
「私は、明治維新の地、京都大学に学んだ!」
だった。
そして、オカリナを取り出し、
ジュディーオングの「竹田の子守歌」を演奏し始めた。
謝長廷の後ろには
十名ほどの中共の強権的な惨い弾圧によって
家族と同胞が苦しんでいる
ウイグルとチベットの綺麗な娘さんが
民族衣装を着て立っていた。
謝長廷のオカリナの「竹田の子守歌」がながれるなかで、
彼女たちは、涙を拭いていた。

台北から高雄に行き、旧知の人々と会った。
もちろん、全員、チャンコロを支持していない。
話は、尖閣とその周辺の漁業の話になった。
僕は言った。
尖閣と周辺の漁場を開拓したのは日本人だ。
その日本人のなかには台湾の日本人が入っているんだ。
高雄の人は、一瞬、話を止めてシーンとなった。
彼等の目頭に熱いものがにじんでいた。

以上、
産経新聞の陳水扁氏の話を読みながら浮かんだ
台湾の思い出を記した。
その上で、
我が日本が、国家の安泰を確保する為に
認識し実践しなければならないのは何かを記したい。

それは、先ず第一に、
尖閣諸島を
中共から断固として守らねばならないということだ。
何故なら、中共が尖閣を奪おうとする戦略は、
奪った尖閣を橋頭堡として
南西の台湾と北東の沖縄本島を奪うためである。
先にも書いたが、
台湾と沖縄本島を中共が奪えば、
これは即ち、中共が我が国の生命線であるシーレーンを扼したということである。これは、つまり日本の滅亡だ!

従って、次の第二は、
尖閣や沖縄本島はもちろん、
台湾防衛も、
我が国の自衛権の領域内にあるということだ。
即ち、台湾防衛は我が国の個別的自衛権の行使なのだ!
国際法には、明確に台湾防衛は
我が国の自衛権の行使であるとする前例がある。
それは、
デンマーク艦隊引渡請求事件、
(当時国、イギリス×デンマーク、1804年)
これは、
イギリスにとってナポレオンがデンマークを占領し、
そのデンマークの艦隊を強奪すれば、
その艦隊は、イギリスの最大の脅威となるとき、
ナポレオンに先駆けて、
イギリスがコペンハーゲンを砲撃してデンマーク艦隊を強奪することはイギリスの自衛権の行使だという
自衛権のリーディングケースだ。
よって、
中共が、台湾を占領し、台湾を基地として
台湾の最新鋭戦闘機や海軍を日本攻略に使えば、
我が日本が存亡の危機に立つならば、
中共の台湾占領を阻止するために
我が国が台湾を中共から守ることは
我が国の当然の自衛権の行使である。
デンマーク艦隊引渡請求事件のように、
イギリスが、
デンマークのコペンハーゲンを砲撃して
その艦隊を強奪する海賊行為が自衛権の行使なら、
我が国が、台湾を攻撃せずに、
台湾そのものを守ることは
イギリスよりも真っ当な自衛権の行使ではないか。
台湾と沖縄こそは
不可分一対の日本防衛の死活的な要なのだ!