旧来の国防思想から脱却せよ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

 

平成28年6月1日(水)

 
 先に、今為すべきは国防力の強化であると訴え、
 また、伊勢志摩サミットにおいては、主催者である日本政府側に、
 開催地のこの東アジアが、
 如何に動乱(第三次世界大戦)の危機を孕んだ地域であるかという認識が薄いと書いた。
 そこで、
 今為すべき国防思想の転換について訴えたい。
 従来の日本政府の専守防衛方針は、
 即ち思考停止のことであり、
 思考を停止したままでは、我が国は存続できない。

(1)防衛ラインは何処か
 海洋国家である我が国の自衛権発動のラインは何処か。
 我が国の海岸線か、
     海の上か、
     大陸側か、

 我が国の海岸線だというのが、専守防衛である。
 つまり、敵が我が国に上陸してきて初めて防衛出動に入り
 かつての沖縄戦のように、
 国民の住居地を戦場にして我が国を防衛するというのである。
 しかし、敵が我が国土に上陸すると言うことは、
 我が国は既に制空権と制海権を失っているということであり、
 燃料や食料は途絶して戦車や車両は動かず、
 自衛隊は敵の上陸前に防衛能力を失っている。
 つまり自衛隊を含む国民は、竹槍で戦うしかない。
 この専守防衛など、有害な思考停止、有害な空論なのだ。

 一五八八年、アルマダの海戦でスペインの無敵艦隊を打ち破った
 イギリスの海賊にして海軍提督のキャプテンドレイクは、
 既にこの時代に、
 イギリスの防御ラインは、
 イギリスの海岸線ではなく、海の上でもなく、
 大陸側敵基地の背後であると述べている。

 では現在、大陸および半島は艦隊よりも
 ミサイルを飛ばしてくるのである。
 従って、ドレイクの時代より遙かに切実に我が国の防衛ラインは、
 大陸側敵基地の背後だと認識しなければならない。

 しかしながら、我が国では、例えば北朝鮮のミサイルに対して、
 発射された後に我が国の上空において打ち落とすという破壊命令を出して済ませ、
 ミサイルを確実に破壊できるのか、
 破壊した後の落下物による被害を食い止められるのか、
 これに関してはフタをしたように沈黙して思考を停止している。
 しかし、実は、
 発射された核弾頭ミサイルを確実に打ち落とせるかどうか分からないのだ。
 従って、発射地における破壊こそ真の防御である。
 これを実施する実力の獲得こそ、
 国家と国民の命を救う現在の急務なのだ。

 同様のことは、一昨年の二百隻を超える船団が小笠原沖の海底を荒らした時にも見られた。
 我が国の政府は、船団が小笠原沖からいなくなれば、
 それらが何処に行ったのか、何処を「出撃基地」にしているのか、
 全く関心を示さない。
 これが、専守防衛の思考停止というものである。

 また現在、中共は大陸側の基地を、東の海洋のなかに前進せしめてきている。
 即ち、南シナ海の南沙諸島の埋め立てと海空軍基地建設である。
 そして、既にそこにミサイルが配備されている。
 これは、
 かつてイスラエルがイラクの核開発施設を空爆したように、
 我が国が空爆によって中共の基地建設を阻止してもよい事態である。
 この中共による南シナ海軍事基地建設の危険性を一番強調すべき我が国が、
 南シナ海の状況などなかったかのようにサミットを終えたことは
 一種の思考停止と言わざるを得ない。

(2)大東亜戦争の敗因を自覚せよ
 我が国は、悪い国だから敗北したのではない。
 我が国は、シーレーンを切断され、原材料と食料の供給を断たれたから敗北した。
 アメリカの戦略爆撃報告には、
 爆撃した我が国の工場は、
 爆撃するまでもなく原材料が断たれて既に稼働していなかったと書かれている。

 我が国の生命線は、昔も今もシーレーンである。

 この観点から中共の東シナ海と南シナ海における近年の軍事行動を観れば、
 それはまさに我が国の存立の基盤を切断しようとするものであることが明確ではないか。

 よって、現在の我が国の急務は、
 ペルシャ湾からインド洋そしてアジア太平洋に伸びて我が国に至る
 長大なシーレーンを守るための海空軍機動展開戦力の獲得である。

 

 

西村眞悟の時事通信より。