「断固たる対応」とは何か | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

平成28年1月7日(木)

 六日に北朝鮮が行った核実験に対し、安倍総理および官房長官は、
「日本の安全に対する重大な脅威で、断じて容認できない」として
 「断固たる対応」をとると明言した。
 その「断固たる対応」の内容についての報道を視ると、
 国連そしてアメリカと共同した、また、独自の、
 「対北朝鮮制裁強化」である。

 従って、やはり、我が国の「戦後政治」にある「発想の欠落」について指摘しておきたい。

(一)まず、数年前、アメリカの情報機関の幹部OBが私に言った言葉を紹介する。
 彼は言った、
 「核は既に通常兵器なんだ」
 そして彼は、アメリカとソビエトは、五十年以上も、核を保有し開発しながらせめぎ合いをしてきた、と説明した。
 
 その会話の数ヶ月前だと思うが、アメリカのライス国務長官の意を受けて国務省の幹部が来日し、拉致被害者救出議連幹部に面会を求め、
「北朝鮮が核開発を中止すると言っているので、日本は制裁を止めてやってくれ」と言ってきた。
 私は、日本は拉致被害者が解放されるまで制裁を止めない、と答えた。
 すると相手は、
「核の恐怖から日本は解放されるんですよ、
 核が如何なる被害をもたらすかレクチャーしましょうか」と言う。
 私は、言った。
 「核の被害を君たちに説明してもらう必要はない。
 日本人は身にしみて知っているんだ。なんなら、こちらから説明しようか。
 核は抑止できる。
 しかし、日本が拉致被害者救出を諦めたら取り返しがつかない。
 日本の第一の優先事項は、国民である拉致被害者救出だ。」

 前述の
 「核は既に通常兵器だ」
 という情報機関OBの言葉は、私が、
 日本の第一の優先事項は核よりも拉致被害者救出だと国務省に答えておいたとの発言に対して、
 彼が、「それは実に正しい」と賛同し、
「拉致被害者救出こそ日本のもっと切実な国民の命がかかった課題だ」と言った次ぎに発したものだ。

(二)北朝鮮の核と中共の核を「如何に抑止する」かの決断がない「断固たる対応」はありえない。
 即ち、「断固たる対応」とは「抑止力を保有する」ということである。

 北朝鮮は「最強の核抑止力を備えた」と誇示したと報道されている。
 しかし、ならず者にこれを言わせておいては平和を確保できない。
 これを言うべきは日本でなければならないのだ!
 
 そもそも、「抑止力」を持っている国が「制裁」をするから効果がある。
 「抑止力」を持たない国が「制裁を強化」したら危険である。
 抑止力を持たずに「制裁を強化」するのは、為政者として無責任ではないか。

 では、その抑止力を如何にして確保するのか。
 それは、既にアメリカとソビエトが、二十世紀の半分を使ってやってきた歴史を振り返れば分かる。
 特に、昨年亡くなった西ドイツ首相のヘルムート・シュミットが、
 一九七七年九月に実行した「バランスの回復」つまり、
 ソビエトの中距離核弾頭ミサイルSS20に対抗して、
 同じく中距離核弾頭ミサイルパーシングⅡを導入して
 「相互確証破壊」の体制を構築したうえで
 強烈な軍縮圧力をかけてソビエトにSS20をヨーロッパ方面から撤去させ
 以って、NATOを核の脅威から解放した決断に学ぶべきである。

 シュミットは、パーシングⅡ導入の前にロンドンで次のように演説した。
「政治的、軍事的バランスの回復は、死活的に重要である」

 我が国も、此のシュミットの決断に学ぶべきである。

 なお、此のNATOへのパーシングⅡ導入の時、ヨーロッパに「反核・導入反対」の大規模な市民運動が巻き起こった。
 ソビエト崩壊後にモスクワのクレムリン文書から判明したことは、
 此の「反核運動」はクレムリンが仕組んだことだった。
 クレムリンを北京また平壌と読み替えていただきたい。

(三)アメリカの核の傘について
 「戦後政治」とは、「アメリカの核の傘」という言葉で、思考停止する政治である。
 つまり、幻を現実と信じて疑わない政治である。
 これで、国民の暮らしと命を守れるのか。
 無責任ではないか。
 
 あのオバマ大統領が、サンフランシスコやロサンジェルスが核攻撃を受ける危険を冒して、
 日本に核の傘をかけて守ろうとするか、誰でもいいから検討したら分かることだ。
 
 オバマに限らず、ワシントンやニューヨークそしてサンフランシスコ
 が核攻撃を受けても日本を守るという考えを持つ者は、
 そもそも大統領選で当選できない。

 フランスが核を保有する時、
 止めてくれというケネディー大統領に、ド・ゴールが言った。
 「アメリカの核の傘がヨーロッパにかかっているというのか。
 では貴方は、ニューヨークが核攻撃を受けてもフランスを守るのか」
 若きケネディーの顔面は蒼白になったといわれている。

(四)日朝平壌宣言について
 平成十四年九月十七日、平壌で日朝両国の小泉首相と金正日は、平壌宣言を発して日本は北朝鮮に巨額の金を支払って国交を樹立すると宣言した。
 その中で北朝鮮は、核開発を控えると約束し、ミサイルは打ち上げないと約束した。
 しかし、北朝鮮は、その後、ミサイルは打ち上げるは核実験は繰り返して本日に至っている。
 つまり、日本は騙されたのだ。

 然るに、日本の外務省は、一昨年の五月にストックホルムで行われた「平壌宣言」の精神に則って拉致被害者を再調査するとの北朝鮮の約束に対して、北朝鮮への送金額の緩和や人員の往来自由化という制裁解除を行った。しかし、再調査などなかった。
 つまり、また騙されたのだ。

 我が国内閣は、此の緩和された送金や人員往来の自由化が、
 この度の核実験にどれだけ貢献したのか点検すべきである。
 また外務省は、何回北朝鮮に騙されれば気が済むのか。懺悔しろ。

 以上、昨夜と本日の報道から、「欠落している」と思われる箇所を指摘した。


西村眞悟の時事通信より