
自衛隊の過度な自己規制いつまで
毎年8月15日に制服で靖国神社に参拝している自衛官有志がいる。「国防に任ずるわれわれが国難に殉じた先人たちに感謝の誠をささげ、御(ご)遺志を継承しようとするのは当然」として堂々と制服での参拝を呼びかけてきたのは、陸上自衛官の原口正雄曹長だ。
きっかけは、昭和61(1986)年、時の中曽根康弘首相が中国の干渉で参拝を中止したことに始まる。義憤にかられた有志4人が、ならば自分たちがと制服での参拝を開始した。爾来(じらい)、隊内に参拝を快く思わない風潮がある中、参加者は増減を繰り返し、時にはたったひとりきりの参拝に拳(こぶし)を床に打ちつけ、悔し涙を流したこともあった。
終戦70年を迎えた今年、原口曹長の熱誠に応えた自衛官は、過去最高の約50人。順調に数を伸ばしたかに見えて、その実、「制服を着て靖国には行かないように」「15日には私服でも行かないように」と上官から「指導」されたり、仁王立ちで阻まれたりした隊員もいた。私は陸自の公募予備自衛官でもあるが、自衛隊に働く過度な自己規制を感じることがある。軍手を「手袋」、行軍を「行進」と呼ぶと聞けば、一般人には、むしろ滑稽に響くであろう。
世界を見渡しても、戦没者の慰霊に軍人が制服を着用せよとはいわれても、するなといわれる国などそうそうあるまい。憲法9条に起因するのだろうが、いつまでもこんないびつな国のままでは、先人たちに顔向けできないばかりか、次世代にも不健全な精神的負担を負わせ続けることになる。そうしたくなければ、勇気を持って自ら新しい時代を切り開いていくしかない。
もはや自衛官が税金泥棒呼ばわりされる時代ではない。被災地等での献身的な活動は国民意識を変え、私が宮城県で取材した女性は「あの緑色を見るだけで安心する」と語った。自衛隊はいつまで過度な自己規制に縛られるのか。
原口曹長は、境内が陸海空の制服自衛官であふれる日を切望しているという。圧力に屈せず信念を貫いた自衛官に敬意を抱きつつ、彼らが誰はばかることなく靖国に詣でられる世をつくるべくわれわれ国民も尽力せねばなるまい。
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【プロフィル】葛城奈海
かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、キャスター、俳優。昭和45年東京都出身。東京大農学部卒。TVドラマなどに出演。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会広報部会長、林政審議会委員。著書(共著)に『国防女子が行く』(ビジネス社)。
産経ニュース
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