成長なくして安保なし。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 
成長なくして安保なし、硬直財政を憂う。編集委員・田村秀男

 国会では安全保障法制をめぐる論戦がたけなわだが、気掛かりな点がある。安保法制推進派ですら経済成長の重大さについての認識が貧弱なように思えるからだ。

 
 

 グラフは、日中の国内総生産(GDP)と国防費の推移である。日本のGDPと国防費は低迷を続けた揚げ句、2011年以降はともに縮小を重ねている。対照的に、中国は10年に日本のGDPを抜き去り、その勢いを駆る形で国防費を伸ばしている。14年、中国の国防費は日本の4・7倍と圧倒的だ。膨張する一途の中国脅威を前に、集団的自衛権によって日米同盟強化の形をつくるにしても、問われるのは中身だ。いくら意気込んでも経済力の裏付けがない軍事力は画餅(がべい)に過ぎない。

 現下の経済情勢はどうか。株高に先導される形で民間設備投資は回復気配が出ているが、GDPの6割を占める家計消費は消費税率8%への引き上げに伴う後遺症を引きずり、依然低調だ。円安の急速な進行は全雇用の7割を占める中小企業にとってはコスト・アップになる。

 14年度マイナスに落ち込んだ実質経済成長率を大きく反転させるためには、日銀による異次元金融緩和に偏重気味のアベノミクスを巻き直す必要がある。中長期的な効果を狙う第3の矢「成長戦略」はともかくとして、成長に結びつく第2の矢「機動的な財政出動」がそこで鍵になる。

 安倍晋三首相が議長を務める政府の経済財政諮問会議がこのほど打ち出した経済財政運営の「骨太方針」素案は曖昧さが目立った。「経済成長なくして財政再建なし」とする安倍首相に対して、増税・歳出削減を優先する稲田朋美政調会長ら自民党内勢力が巻き返した結果である。

 稲田氏は財務省寄りで知られる学者のアドバイスを受けていると聞く。氏は財政再建のためには経済成長による税収増をあてにできないと断じ、18年度の歳出額に上限額を設定するよう首相に提言した。諮問会議は結局、18年度までの3年間の歳出増を1・6兆円に抑えることで折り合ったが、そのうち1・5兆円は社会保障費である。つまり、財政の機動性が大きく制約される。

 稲田氏らの考え方は従来のデフレ容認路線の踏襲だ。政府は1997年度以来、社会保障費の増加を公共投資の削減と消費税増税で相殺する緊縮策を続けてきた。14年度のGDPを97年度と比較すると、公共投資主体の「公的固定資本形成」は15・8兆円減ったが、名目GDPはその倍近い30・7兆円も縮小した。緊縮財政が経済規模萎縮(いしゅく)の大きな要因になったのだ。しかも、消費税収を除く一般会計税収は約6兆円減り、財政収支の悪化を招いてきた。

 この恐るべき現実を直視しようとしない財務官僚に対し、首相を中心とする官邸が不信感を抱くのは当然だ。効果に限界が見える異次元緩和の金融に加えて、財政のエンジンを臨機応変に稼働させ成長率を引き上げないと、アベノミクスへの市場評価は地に落ちるだろう。

 柔軟な財政に回帰すべき理由は他にもある。安全保障である。中国の軍事攻勢は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺、さらに南シナ海にとどまらない。例を挙げよう。

 米軍筋によると、中国はこの3月下旬、台湾とフィリピン間の海域で動画誘導型巡航ミサイルを空中発射し、日本列島沖合2カ所を標的にした実験に成功した。巡航ミサイルは日本で配置済みのレーダーによる捕捉、追跡が困難で、高度な探知網の構築が必要になる。米軍自体、対応が遅れ、4月初めに情報収集に躍起となったが、本来は日本自ら対応する必要がある。

 先週はワシントンで米中経済・戦略対話が開かれた。主要議題の一つが、中国人民解放軍によるサイバー攻撃だ。米情報専門家は、最近の米連邦職員数100万人、さらに日本年金機構からの125万人分もの個人情報流出事件にも中国軍が関与していると疑っている。中国側の標的は官公庁、防衛産業、研究機関などと多岐にわたり、相手の情報システムに潜入、潜伏する。日本の防御体制は弱く、今年1月に設置された内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の人員は約80人で、数百人単位といわれる最低必要規模にはほど遠い。

 安保を念頭に置けば、政府が投資すべき分野は幅広い。月面無人探査、超音速旅客機開発など航空宇宙分野は軍事用技術につながると同時に、成長産業を創造し、人材を育成する。成長なければ財政は楽にならず、安保上の需要に対応できない。成長なくして安保なし、である。


産経ニュース

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稲田朋美のような経済音痴が日本を貶めるのだ!(`・ω・´)