《zak女の雄叫び お題は「卒業」》
チュニジアのテロ取材をめぐる朝日の“怒声”騒動は、
同じ新聞記者として恥ずかしい。
チュニジアの首都チュニスで発生した、国立バルドー博物館襲撃事件。日本人にも犠牲者が出るなどテロの脅威をより身近に感じることになった痛ましい事件だったが、さらに同じ新聞記者として恥ずかしい出来事もあった。
報道でご存じの方も多いと思うが、負傷し、チュニスのシャルル・ニコル病院に入院中の陸上自衛隊3等陸佐の結城法子さん(35)の手記の件だ。結城さんは手記の中で、朝日新聞記者と日本大使館員の取材をめぐるやりとりについて触れているが、「『取材をさせてください。あなたに断る権利はない』と日本語で怒鳴っている声が聞こえ、ショックでした」と記している。
これについて朝日新聞は、朝日新聞デジタルのホームページ(HP)に「取材の経緯、説明します」と題した見解を掲載し、「記者には大声を出したつもりはありませんでしたが、手記で記されていることを重く受け止め、結城さんにおわびします」と謝罪している。手記の内容は概ね事実だったのだろうと分かる。
しかし自戒の念を込めて言うが、残念ながらこのように報道の「自由」を「権利」と勘違いする記者は、決して少なくないように感じている。実は私自身も記者として駆け出しのころ、一冊の「卒業アルバム」を巡ってこの大きな“勘違い”をした記者を間近に見ることがあった。それによって、私はこの手の“勘違い”がいかに恥ずかしいか気付くことができたが、それはそれはひどい勘違いだった。
いまから数年前、東北地方のとある都市で早朝に大きな火災が起きた。ストーブから引火した火はあっという間に大きくなり、木造住宅が全焼した。この火災で住宅内で寝ていた親子4人が死亡し、被害者の中には高校生の男子も含まれていた。
こうした事件(この場合は事故だが)が起きたとき、報道機関はこの被害者の名前や年齢とともに、顔写真も報道する。これは事件や事故を風化させないために、そしていかに身近で発生したことなのか知ってもらいたいなど理由はいくつかある。しかし、名前や年齢と違って顔写真は特別な場合を除いて警察からは発表されないので、各社の記者が関係者に取材して生前の顔写真を探す。実はこれは、駆け出しの事件記者にとって重要で、難しい仕事の一つだ。
この火災のときも、私は被害者の高校生の顔写真を探して関係者に聞き込みを行っていた。しかし引っ越して来たばかりの一家だったため、周辺との付き合いが浅く、取材は難航。取材を進めるうちに、高校生の通っていた中学校が分かったので、卒業アルバムを見せてもらえないか交渉するためにその中学校に向かった。
学校に着くと、同じことを考えていた各社の記者がすでに到着しており、ちょうど校長先生と面会をする段階だった。慌ててその輪に交ざり、校長室で校長先生に卒業アルバムを見せてもらえないか交渉したが、回答は「個人情報は出せない」という理由でNGだった。ただ、これについては予想通りの結果だった。近年、どこも学校は個人情報保護には敏感になっており、卒業アルバムはもちろん、被害者生徒の生前の様子などについても簡単に話してくれない場合が多い。
「ああ、やっぱり…」と思って帰ろうと思った瞬間、隣にいた大手新聞社の40代ぐらいの記者が、校長先生に向かって大声で「なんでだめなんですか! あんたに取材を邪魔する権利はない!」と怒鳴った。かなり興奮していた。
それによって校長先生も態度をさらに硬化させ、少しきつい口調で「ダメなものはダメです、もうお引き取りください」と言った。それに対し、なんとその記者は直前に受け取った校長先生の名刺を本人の目の前でビリビリと破り、床に投げ捨て、「あんたは報道の権利を邪魔するのか! あんたは何も分かってない! あんたみたいな地方の木っ端役人が日本をダメにするんだ!」と怒鳴り、そのまま校長室を出て行ってしまった。
校長先生にはもちろん卒業アルバムを提示する義務はないし、それどころか教え子を火災で亡くしている。
数社の記者が残されたが、その場で校長先生に「先生には貴重な時間をいただいて取材に対応いただいていると分かっています。あのような記者がいて本当に申し訳ない」と謝り、気まずいまま部屋を後にした。私は同じ記者、それも10歳以上年上の先輩記者の行動が信じられず、本当に恥ずかしかった。典型的な、報道の「自由」を「権利」と勘違いしている例であったと思う。
若手の時にこれだけ衝撃的な出来事に遭遇したので、私は勘違いをせずに済んだが、やはり長年記者をやっていると傲慢になってしまうこともあると思う。今回のチュニスでの記者の行動を他山の石として、新聞記者としてのモラルを自分自身に問いたいと思った。(ゆんぼ)
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日本のジャーナリズムを変えようと産経に入社したが、すぐに諦めて好き放題やってきた35歳。ここ最近の業務は東京・新豊洲「MAGIC BEACH」の管理人。
ZAKZAK 夕刊フジ
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>報道の「自由」を「権利」と勘違いしている、「ジャーナリズム宣言」の朝日新聞(笑)
画像・yohkan様のブログ・愛国画報fromLAより。