「ハイリスク、ノーリターン」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

「イスラム国」一番悪いのはテロリスト、そこで思考停止するな。

連載:不肖・宮嶋 コラコラ記
ZAKZAK 夕刊フジ


「イスラム国」空爆のため、シリアに向けて基地を飛び立つヨルダン空軍機=5日(ロイター)


 ヨルダンが過激組織「イスラム国」への空爆を本格化させた。生きたまま檻(おり)に押し込み、火を付けるという、人として思いもつかぬ残忍な方法で、国王や国民のために戦った空軍軍人が殺されたのである。そりゃあ国が総力を挙げて報復せんことには軍や国民の士気に関わる。

 国の命令で空爆に出たパイロットと違い、2人の日本人は日本政府の退避勧告も振り切り、自らの意思でシリアのイスラム国支配地域に向かったのである。ここがヨルダンとの大きな違いや。

 その1人、湯川遙菜さんは昨年8月、自ら経営する民間軍事会社の実績作りのため、危険を承知でシリア入りし、武器持参でイスラム国戦闘員に捕まったんや。

 もちろん一番悪いのは人の命を為替相場ぐらいにしか見ていないイスラム国であるのはいうまでもない。でも「あいつら獣やから」と、思考停止してもうたら、「亡くなった」2人の日本人も浮かばれんやないか。ここは「自らの意思」で「危険を承知」で行った人たちの「功罪」もしっかり検討すべきやろう。

 「常に弱者の視点で、いつも戦争で犠牲になる女性、子供の立場で取材していた…」。まさに弱きを助け、強きをくじく、正義のジャーナリストの遺志を引き継ごうと、多くの若者も思考停止したままや。

 後藤健二さんの母親までが「健二は、湯川さんを助けに、シリアの人を助けるために行った」という趣旨の発言をされていた。母として息子を失った悲しみは理解できるが、よう考えてみい。いくら戦場経験豊富なジャーナリストでも、たった数日でイスラム国支配地域で湯川さんを見つけ出し、ましてや救出するなんて、ホンマにできる、と考えとったら楽観過ぎるというより、オメデタイ。

 ここはジャーナリストとして、スクープを狙っとったと考えるのが常識やろ。

 われらプロは五体満足で帰ってくるまでが仕事である。リスクをかけるときは、それに見合う利益が得られるかどうか、綿密に検討する。

 その意味でシリア取材は「ハイリスク、ローリターン」、もしくは「ノーリターン」や。

 2人の軽率な行動は自身の「殺害」だけでなく、ヨルダンの政情不安まで招いた。さらに日本中の国民に不安と心配をかけ続けたのである。

 繰り返すが一番悪いのはテロリストどもや。安倍晋三首相も「罪を償わせる」と発言したのは当然やが、それを「実行」してもらわな、ますます日本人は地球上でテロリストから狙われ続けるのである。

 ■宮嶋茂樹(みやじま・しげき) 報道カメラマン。1961年、兵庫県明石市生まれ。日本大学芸術学部卒業後、「フライデー」専属カメラマンをへて、フリーになり、数々のスクープ写真を撮影。世界の戦場でも取材を行う。