【防衛最前線】
産経ニュースC130H輸送機 非常事態で役に立つ「怪力の神」
南スーダン・ジュバ空港に着陸する航空自衛隊のC130H輸送機に、手を振る自衛隊員=平成24年2月19日(早坂洋祐撮影)
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に邦人2人が殺害されたとみられる事件を受け、自衛隊による邦人保護のあり方が改めて注目を集めている。こうした中、航空自衛隊のC130H輸送機が邦人保護訓練を行うため、タイに派遣される。
C130が参加するのは、米軍とタイ軍が主催し、日韓など計9カ国が参加して9日から始まった東南アジア最大級の多国間軍事演習「コブラゴールド」だ。15日の訓練では、ある国で震度7の大地震が発生したと想定。陸上自衛隊誘導輸送隊がバンコク近郊のパタヤスタジアムに集まった在外邦人を約30キロ離れたウタパオ海軍航空基地まで陸上輸送し、同基地で待ち構えるC130が邦人を乗せて飛び立つ。
C130の愛称は「ハーキュリーズ」。怪力を誇るギリシャ神話の英雄・ヘラクレスを英語で発音するとハーキュリーズとなる。その名の通り、C130の最大積載量は約20トンで、約8トンしか運べない国産輸送機C1の倍を上回る“力持ち”である。航続距離も約4000キロ(5.0トン搭載時)で、約1700キロ(2.6トン搭載時)のC1を大きく引き離す。
自衛隊が平成20年12月まで参加したイラクの人道復興支援では、クウェートを拠点にイラク首都のバグダッドなどに国連や多国籍軍の人員・物資を輸送する活動に従事した。ロケット弾が飛び交う過酷な状況下で、輸送実績は821回、輸送物資は約670トンに上った。
「自衛隊の活動がイラクの治安安定に貢献した」
自衛隊のC130が中東の地を離れる際、米中央軍のペトレイアス司令官(当時)はこう称賛した。
大量の空気を吸い込むジェット機とは異なり、プロペラ機のC130は砂ぼこりが舞い上がる不整地でも離着陸できる。空自が導入を計画している純国産の次期輸送機C2と比べれば積載量、航続距離、巡航速度いずれでも劣るが、C2はアスファルトで舗装された滑走路でしか離着陸できないとされている。
空自関係者は「素早く大量に輸送が必要なときはC2や政府専用機の出番となるが、空港が使えないような状況ではC130が役割を果たす」と解説する。海外での大規模災害時や、武装勢力に現地空港が占拠されるような非常事態では、C130が邦人輸送の主力を担うことになる。
政府が今国会に提出を目指す安全保障法制で焦点となっているのは、何者かに捕らわれた邦人を自衛隊が救出するための法整備だ。しかし、その邦人をいかに運び出すかという機能が不可欠であることに変わりはない。
政府内では、自衛隊がソマリア沖アデン湾での海賊対処活動のため拠点を置くジブチにC130を常駐させる構想もある。これが実現すれば、アフリカや中東地域で邦人輸送が必要になった際、即座に対応できることになる。
(政治部 杉本康士)
C130H輸送機。イラクに派遣される際、機体は水色に塗装された(航空自衛隊提供)
消息不明となったマレーシア航空機の捜索協力のため、航空自衛隊那覇基地を離陸したC130輸送機=平成26年3月12日